3年ぶり3度目の日本一 諏訪に根ざす大和電機BlueLakersが紡ぐもの

延長九回裏、1死二、三塁。諏訪に優勝旗を持ち帰る一打が生まれた。2026年7月に徳島市で開催されたソフトボールの全日本実業団女子選手権。諏訪郡下諏訪町に活動拠点を置く大和電機BlueLakersが、決勝で靜甲ソルフェジオ(静岡市)に2-1でサヨナラ勝ちを収め、3年ぶり3回目の優勝を果たした。1972年の創部以来、地域とともに歩んできたチーム。「走りの大和」として築いたスタイルと、会社が整えてきた環境、そして地域貢献への思い――。日本一の裏側にある文化を追った。

文:大枝 史

強豪・靜甲を延長で撃破
優勝の勢いをリーグ戦へ

決勝の相手は2025年の日本リーグ(日本女子ソフトボールリーグ)で優勝した強豪、靜甲ソルフェジオ。今年7月3日に行われた日本リーグ交流節でも1-3と苦杯をなめた相手だ。

決勝は互いに得点を許さず、八回からは無死二塁から攻撃を始める延長タイブレークへ突入した。

八回は両チーム1点ずつを取り合い、九回は先攻の靜甲を無得点に抑えた。その裏の大和電機の攻撃。故意四球と犠打で1死二、三塁のチャンスをつくると、打席には茅野市出身のキャプテン、堀川美瑠瑠。ヒットエンドランの積極策に見事に応えて三走を迎え入れ、激戦に終止符を打って3年ぶりに頂点に立った。

チームを率いる杉野公英監督は「今回の試合に関しては、選手たちが私を引っ張って優勝まで連れていってくれたとつくづく思う」と目を細める。

決勝打を放った堀川は「自分で決めなきゃ…と背負うよりは、後ろにつなげようというリラックスした状態で(打席に)入れた」と振り返る。

長野市出身で4番を務める新海雪奈は、「『大和はチャンスに強い』という自信がどこかにあったので、タイブレークになったら負ける気がしなかった」と強調。「4年前に日本リーグで優勝した時も決勝の相手が靜甲さんだったことを思い出して、リーグ優勝もチーム全員で目指したいと感じた」と決意を新たにした。

今季の日本リーグは前半戦8試合を終えて4勝4敗。思うように勝ち星を伸ばせなかったが、この優勝を起爆剤にして9月5日から始まる後半戦での巻き返しを期している。

「強打」から「走り」へ
環境整備が支えるスタイル変化

今年で就任8年目を迎える杉野監督が徹底してきたのは“走り”。ピッチャー中心の守りでリズムを作り、走って相手を崩しながら点を取っていくスタイルを貫いてきた。実際に「8年間のうち、5〜6年はリーグでNo.1の盗塁数」だという。

その走力を支えるため、日頃の練習ではウエイトトレーニングに重きを置く。松本市の相澤健康スポーツ医科学センター(JAMS)と提携し、ウエイトトレーニングだけではなくアジリティもチェック。2週に1度は相澤病院の理学療法士に選手のコンディショニングを確認してもらうなど、サポート体制を整えてきた。

かつては「強打の大和」と呼ばれていたが、今は「走りの大和」。

堀川は「入ってきた時と比べて身体の力強さはだいぶ変わった」と実感を込める。

室内練習場やブルペン、ウエイトトレーニング室などインフラ面の整備にも力を入れてきた。

杉野監督は「2022年に誕生したJDリーグ(国内1部相当)の16チームと日本リーグ(国内2部相当)の12チームを合わせた28チームの中でも、1〜2番くらいの会社のバックアップをいただいてやらせていただいている」と感謝する。

大和電気工業の原雅廣代表取締役社長は「私の前、会社としては3代目の社長が創部当時の部長をやっていたこともあって、かなり思い入れがあった。その時代に施設をどんどん整備していった」と振り返る。

環境を整えて選手を迎え入れる背景には、創部以来の文化があった。

大和電機が女子ソフトボールを創部したのは1972年。日本が高度成長期の時代で、諏訪地域は精密機械工業が盛んで求人に苦労していた。地元だけでは人材をまかないきれず、隣接する山梨県の学校に出向いて採用活動した際、担当職員から「うちの生徒を取りたかったらソフトボールを始めたらいいのではないか」と言われたことがきっかけになった。

部員として入社した選手たちもフルタイムで勤務。仕事の合間に練習に打ち込む日々だ。

原社長は「やはりスポーツをやってきた人たちは仕事も一生懸命にやってくれるし、オフシーズンも土日出勤や夜の出勤に積極的に入ってくれる。会社の他の社員にとっても良い影響を与えてくれている」と話す。

クリニックが育てたキャプテン
スポーツ人口を広げる取り組み

今年度からキャプテンを務める堀川は、小学校時代に大和電機が開催するソフトボールクリニックに参加。それ以来、大和電機に入社することを目標にしてきた。

「地元で(ソフトボールが)できる数少ない貴重な環境。地元でできることが一番だと思ったので入社希望した」

その堀川がキャプテンとしてサヨナラ打を放って日本一に。地域に蒔いた種が、確かに実を結んでいる。

原社長が力を入れるのは地域貢献の取り組みだ。

「周りに我々の会社自体を作ってもらっている。この地域がなければ会社も存在できないので、どうやってお返ししていくか」

少子高齢化が進み、スポーツ人口が減っていく中で少しでも裾野を広げる活動を進める。

地域スポーツで指導者を担う社員には認定証を発行して月々の支援金を出したり、社員の子どもが全国規模の大会に出場すれば応援金を出したり。

今年は6月9日に下諏訪社中学校の授業に参加してソフトボール教室を開催。秋には下諏訪町の全保育園を回って子どもたちと一緒に遊ぶ計画を立てるなど、積極的に地域と交流の場を設ける。

原社長は「会社もそうだけれど、チームの価値をどれだけ上げられるか。地域の中での存在やソフトボールの世界での存在感を少しずつ積み上げていくことが大事」と力を込める。

諏訪に根ざし、地域とともに生きてきた大和電機BlueLakers。

それは連綿と続く大和電機工業の文化であり、誇りだ。


クラブ公式サイト
https://yamato-elec.co.jp/softball/

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