出遅れた松本山雅 選手が直言し、指揮官が直視する課題とは

J3松本山雅FCが勝てない。2026年8月8日に開幕したJ3リーグは2試合を終えて1分け1敗。AC長野パルセイロに敗れた8月2日の長野県選手権決勝を含めれば、3戦未勝利とスタートでつまずいた。チャンスを生かし切れない決定力不足は分かりやすい課題だが、この3試合で浮かび上がった深刻な問題は守備面にある。その一つが、ロングボールへの対応力の低さ。3バックが競り勝てずに深い位置で起点をつくられるだけでなく、一発で背後を取られてピンチを招く場面も少なくない。対戦相手からすれば、松本山雅のハイプレスを回避する手段だったロングボールがチャンスにつながるのなら、使わない手はない。ここから立て直し、上昇気流に乗るための鍵は何か――。
文:板倉 就五
KINGDOM パートナー
跳ね返せず拾えず
ロングボールで後手に回る守備
松本市のサンプロ アルウィンで行われた長野県選手権決勝で、AC長野パルセイロは立ち上がりからロングボールを多用した。
松本山雅のハイプレスを無効化すると、風上を利用して攻勢に。松本山雅はロングボールを跳ね返した上で、コンパクトな陣形からセカンドボールを拾うことで押し返す戦い方をするべきだったが、そのどちらも実行に移せないまま守勢を強いられた。

ミス絡みの2失点で敗れた試合後、石﨑信弘監督は「まず長いボールに対してしっかりと跳ね返して、セカンドボールを拾うことをやり直さなければいけない」と話した。
新チームが発足して初めて臨んだ公式戦で露呈した課題。J3リーグ開幕直前に足元を見つめ直す好機になった――。課題を改善するための1敗であれば「高い授業料を払った」と自らに言い聞かせることもできたが、そうはならなかった。

J3リーグ開幕戦で対戦した高知ユナイテッドSCも、8月16日の第2節で当たったレイラック滋賀FCも、事前の分析では「しっかりとボールをつなぐ攻撃的なスタイル」(石﨑監督)と踏んでいた。しかし、蓋を開けてみれば両チームともロングボールを高頻度で織り交ぜてきた。

松本山雅のハイプレスが威力を発揮し、相手が苦し紛れに蹴らざるを得なかった側面もある。ただ、滋賀に関しては明らかに攻略の狙いを持ってロングボールを放り込んできた。
滋賀の角田誠監督は、詳細な言及は避けつつも「松本山雅の分析をして(前半から)狙ったところに攻め込めた。ハーフタイムに『点は取れる』と伝えたし、選手たちも手応えを持っていた」と振り返った。「狙ったところ」は試合内容を見て推測するしかないが、一つは右サイドハーフのMF三宅海斗の突破力を生かすための“地上戦”。そしてもう一つは、身長184cmのFW坂元一渚璃にロングボールを供給する“空中戦”だろう。

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「戦術どうこうではない」
自らに矢印を向ける選手たち
松本山雅の3バックが、全てのロングボールに競り負けたわけではない。しっかりと跳ね返し、味方につながったボールから攻撃に転じる形もあった。ただ、滋賀戦も高知戦も、そして長野戦も、立ち上がりはほぼ競り負けていた。お互いに相手の力量を確かめ合う時間帯での優劣は、その後の展開にも影響する。

滋賀は、ボールホルダーと前線のターゲット双方に圧力がかかっていない場面では、3バックの背後を狙うボールを供給してきた。松本山雅の3バックは数的同数や数的不利の局面を紙一重で食い止めていたが、伸ばした足がボールに届かなければ、一気にGKとの1対1に持ち込まれる状況を何度も作られた。

対戦相手が松本山雅の特徴を分析して戦い方を選択している以上、序盤戦で露呈した課題はチームが抱える問題だ。ただ、ピッチに立った選手たちは個の問題として矢印を自分自身に向ける。
「戦術がどうこうというところではない部分が大きい」と3バックの右に入るDF白井達也。3バックの中央を担うDF蓑田広大は、滋賀戦から一夜明けた17日の取材に「昨日の敗因は僕にある。僕が安定しなかったら勝てない」と奥歯を噛み締めた。

球際の攻防で遅れを取った場面が失点に直結。ロングボールを2人がかりで競りにいってカバーリング不在の状況をつくったり、背後を取られたボールでGKとの連係を欠いて決定的な場面を招いたりと、コミュニケーションや練度も改善の余地は大きい。
「やり続ける」と司令塔
「1-0で勝ちたい」と指揮官
一方、チームを預かる石﨑監督は、組織としての課題に目を向ける。
「(DF)ラインが深い。ラインが深いと、蹴ってくるボールに対して相手は競りやすい。あと、ライン(の高さ)がバラバラで、ギャップをたくさんつくられていた。単純に、球際の戦いのところで気持ちを出せたかどうかというところも、当然ある」

3バックがプレーに関与する場面でロングボールへの対応力の低さが形となって見えているが、そもそも松本山雅の守備は最前線の選手がプレスにいくことでスイッチが入る。
前線で強度と迫力を持ってプレスをかけ、中盤と3バックが連動して陣形を押し上げる。ピッチ上の11人がつながり、全員で一つのボールを奪いにいく形ができて初めて、個々の局面で競り勝ち、セカンドボールを回収し、攻撃に転じることができる。

中盤で攻守の要となるMF安永玲央は「昨日の試合(滋賀戦)に関しては、前が寄せる、限定するということに少なからず問題はあったと思うけれど、後ろの3枚が弱かった」と直言する。その上で「スタートで出遅れたことに危機感はある。でも、(チームが)やっている方向は間違いないと思うので、継続して勝ちを重ねていけるようにやり続けるだけ」と力を込める。

「5-3で勝つようなサッカーをしたいわけじゃない。1-0で勝ちたい」と石﨑監督。チームが目指す一丁目一番地は「失点しないためのディフェンス」であり、そのために必要なことは「後ろの安定感」。その戦い方を「今さら変えても仕方がない」と言って白い歯を見せる。

対戦相手に応じた微調整はあったとしても、ベースとなるスタイルは不変。ただひたすらに強度と練度を高め、成功体験の獲得によって選手の自信を積み上げ、相手の対策を上回る。
その姿勢に揺らぎはない。
松本山雅FCオフィシャルサイト
https://www.yamaga-fc.com/




















