2025新春・年男の邂逅(2)狩野富成(信州BW)×稲葉柊斗(ボアルース長野)
2025年、新たな年を迎えた。信州スポーツキングダムは引き続き、新たなチャレンジを続けていく。その一環として、巳年生まれの年男を引き合わせての対談を企画。競技は違えど、アスリートとして相通じるものがあれば、地域に活力を与えるという存在意義も同じだ。第2弾はボアルース長野の稲葉柊斗が、信州ブレイブウォリアーズの練習を訪問。バスケットボール&フットサルの対決をしつつ、期待の日本人ビッグマン狩野富成と対談した。
取材:大枝 令/編集:芋川 史貴
長野県での生活も互いに1年目
共通点も多い競技特性と背景
――本日はよろしくお願いします。今回は「年男対談」となりますが、そもそも年男というものはご存知でしょうか?
狩野 えっ、わかんないっす(笑)。
稲葉 あー、ちょっと僕も…(笑)。どういうことですかね?
――「干支」ってわかります?(笑)
狩野 わかんないっす(笑)。
稲葉 ああ!ヘビですよ、ヘビ!!ですよね!?
狩野 ああ!それっすか!ヘビです、ヘビです!!
――12年に1回、同じ干支になるのが年男/年女です。だからどうだという話は置いておいて進めましょう(笑)。お互いの競技やチームに対する印象はどうですか?
稲葉 僕は今季から長野県に来たんですけど、ウォリアーズはそれこそ千曲市役所とかに行っても、ポスターがボアルースの隣に掲載されているじゃないですか。
まだ試合は観たことがないですけど、もちろん名前は聞いたことがあります。実は僕、南長野運動公園のジムで働いているので、上からよく練習を見たりしているんですよ。やっぱり迫力がとてもあって、試合もいつか観に行きたいなと思っての今回の対談なのでうれしいです。
PROFILE
稲葉柊斗(いなば・しゅうと)2001年3月14日生まれ、東京都出身。城西大学サッカー部に在籍時、同部のフットサル部門でもプレーした。卒業後はバルドラール浦安に入団し、F1リーグでデビュー。大卒3年目の2024シーズンからボアルース長野に加わった。フットサル歴は3年とまだ浅いが、左利きという希少性を武器にF2優勝・F1昇格に貢献。ピッチ外ではムードメーカーとして振る舞い、先輩との距離も近い。今シーズン途中には金髪に。167cm、60kg。
狩野 フットサルってスピードがものすごく速い印象があります。ちなみにコートの広さはどのぐらいなんですか?
稲葉 縦20m横40mなのでバスケと一緒ぐらいだと思いますけど、どのぐらいの広さなんですか?
狩野 えーっと…縦が94フィート(約28m)ってことは分かります!!
稲葉 そんなに詳しくは分からないですよね(笑)。
PROFILE
狩野富成(かの・とよしげ)2001年10月6日生まれ、東京都出身。小学校4年生の時に家族で渡米し、サンフランシスコで育つ。スカイラインカレッジを卒業後の2023年にB1サンロッカーズ渋谷と契約。信州BWに期限付き移籍した今季は故障から復帰。チーム最年少の日本人ビッグマンとして成長の日々を送る。“ひょうきんな末っ子“のようなキャラクターで、「トヨ」の愛称で親しまれる。公称206cm、105kg。小学生時代にはサッカーチームでGKを務めた経験もある。
狩野 その中でもフットサルはボールを蹴るから、よりスピードがある印象です。僕は長時間走るのが好きじゃないから、向いていないとは思いますけど…(笑)。
稲葉 でもフットサルは足を使うのはサッカーと同じだけど、競技的にはどちらかというとバスケと似ているんですよ。
それこそ交代が自由で5ファウルもあって、戦術でもスクリーンを使ったり。だから「サッカーとバスケの合体」みたいな競技なので、バスケをやっている人だったり、見慣れている人は、観ていても好きな部分はありそうですね。
狩野 へーー!そうなんですね!失礼ながら、「サッカーの小さくて速い版」というイメージしかありませんでした。でも自分が通っていた小学校ではバスケというよりは野球やサッカーをしている人が多くて、僕の学年は僕を含めてサッカーをしている人が多かったですね。
稲葉 僕もフットサルを始めたのは2年前で、それまではサッカーをやっていました。だから最近になって、いろいろな共通点を発見しています!
――長野県での生活もお互い1年目ということで長野県の印象はいかがですか?
狩野 自然が豊かで、山がキレイで、ブドウが美味しくて…。
稲葉 水もキレイで!
狩野 でもどっちかというと山よりは海の方が好きなんですよね…。
稲葉 長野県は海ないですもんね…。
狩野 そうなんですよね…。
稲葉 ちなみに僕は長野県に来て8カ月ぐらい経ちますけど、駅前のご飯屋さんとかは人が温かいですよね。自営業でやっている方も多くて、フットサルは結構まだまだ知名度を上げないといけない競技ですけど、「ご飯食べていきな!」とか、応援してくださる方がたくさんいてありがたいです。
狩野選手はアメリカ育ちなんですよね。いつ頃からどのくらい向こうで暮らしていたんですか?
狩野 自分は小学校4年生の途中から親の都合で大学までアメリカにいて、ちょっと前に久しぶりに帰ってきた感じです。帰ってきてそのまま徳島(ガンバロウズ)に行って、1年も経たないうちに5カ月ぐらいでケガをしてしまって…という感じです。
稲葉 プロフィールも見てきましたけど、サンロッカーズ渋谷から来ているんでしたっけ?
狩野 そうです、レンタル移籍ですね。昨季もレンタルで徳島県の徳島ガンバロウズに行って、今季は信州です。
稲葉 じゃあ徳島ではそんなにプレーができなかったんだ。
狩野 そうですね。12月ぐらいにケガをしたので…おお。今日(取材日の12月26日)でちょうど1年経つわ!
稲葉 復帰できて良かったですね!
――冬の寒さはどうですか?
稲葉 ヤバいです…!
狩野 雪が降らない地域にずっといたので、初めて雪を体験した時は「やった!雪だ!!」ってうれしくなりましたけど、実際に経験すると、とても大変ですね…。言葉は悪いけど「めっちゃダルいやん…」って思いました。
稲葉 とにかく寒いですよね…。雪が降らなくても車の窓が凍るのが大変です。
狩野 それと僕、寒いと膝が痛くなるんですよ。特に手術した足が。でも大変なのはそれぐらいで、普段よりも入念にアップをしたり、しっかり体を温めてたりすることは意識しています。
稲葉 僕は末端冷え性なので、厚着をしたり、ヒーターで温めたりしています。もちろんケガも怖いからアップは入念にやりますよね。
狩野 練習会場や試合会場って結構かぶっている感じなんですかね?南長野、ホワイトリング、ことぶきアリーナ千曲とか。
稲葉 結構かぶってますね!バスケットの練習はお昼ごろなんですか?
狩野 そうですね。もちろん日にもよりますけど、集合が10時半でミーティングをして、1時間半とか2時間チームで練習して、あとは個人練習…みたいな感じです。フットサルの練習は長いですか?
稲葉 フットサルの練習も2時間くらいです!
狩野 練習の長さも共通していますね!
バスケの戦術が気になった稲葉
勝久マイケルHCの精密さを知る
――この対談の前にはお互いの競技も体験しましたが、聞きたいことなどはありますか?
稲葉 僕は戦術の部分で気になることがあるんですよ。例えば試合中の攻撃とかって、決められたプレーが何個かある中から瞬時に判断しているのか、誰かのやりたいプレーにみんなが合わせているのか。それってどっちなんですか?
狩野 戦術の中でそれぞれの選手の強みを生かすって感じですね。ちょっと戦術の話が出たので、我らがボスの勝久マイケル・ヘッドコーチ(HC)について話してもいいですか!?
稲葉 なんですか!?
狩野 マイケルさんは本当に細かいんですよ(小声)。覚えることが多くて、チームに合流したときにみんなから「体力よりもメンタルがキツいよ」って言われるくらいで、本当に覚えるのが大変なんです。
それもただ覚えればいいってわけじゃなくて、いろんなことを覚えて、プレー中に何を使うかを判断しなくちゃいけない。めちゃめちゃ細かいです。めちゃめちゃ…めっちゃめちゃ……。
稲葉 めっちゃ強調しますね(笑)。でもそれはためになるってことですよね?
狩野 それはもう、めちゃめちゃ成長できます!めちゃめちゃ、めっちゃ成長できます!!
稲葉 大変だけど、できようになるとうれしいですよね。
狩野 本当にうれしいし、やりやすいです。
稲葉 そもそも、前から頭を使ってプレーするのが得意なタイプだったんですか?それともパッション系とかタレント系なのか、その辺はどうだったんですか?
狩野 結構パッションというか、大ざっぱな感じです。でもバスケってそれだけだと、すぐに壁にぶち当たるんですよね。そのときにはパッションだけでは乗り越えられないので、頭を使っていかないといけないですよ。だから元々はテキトーというか…(笑)。
稲葉 サイズもありますし、何とかなっちゃう感じもあったんですかね(笑)。ちなみに小学校4年生の時からアメリカに行っていたという話ですが、いつまでいたんですか?
狩野 大学生までアメリカでバスケをしていました。
稲葉 おおー!なぜ日本に帰ってきたの?
狩野 せっかくのタイミングなので日本でやってみたいなと思ったからです。
稲葉 それですぐにBリーグでプレーできるのって、すごい(笑)。
狩野 でも最初は、本当に誰にも知られていなかったと思うんですよ。誰に聞いても「誰…!?」みたいな(笑)。
稲葉 でもそこからしっかり存在感を発揮してますもんね。逆に質問ありますか?
狩野 さっき、ジムで働いていると言っていましたけど、練習と仕事の両立はどうしているんですか?
稲葉 まだまだ成長途上の競技なので基本的には完全なプロじゃなくて、みんな働きながらフットサルをやっています。夜7〜9時の練習で、仕事が終わってから練習に来て…みたいな生活をしているので、キツさはありますね。
でも前にいたチームよりもボアルース長野の方がより地域密着なので、お店にポスターを貼ってくれたり、駅前のバナーにも貼ってもらえたり。
それこそ美容院に行ったときに、「何歳ですか?」「サッカーやっていますか?」って聞かれて、「実はフットサルをやっています」っていう話になったり。そういう経験が結構あるので、ありがたいし、うれしいし、人の温かさを感じます。
――それでは最後に2025年の抱負などありましたらお願いします!
稲葉 昨年はF2優勝して、今年からF1リーグに上がることができました。ボアルース長野は1部で何連敗もして全く勝てないようなチームだったので、チームの目標はまずは残留することです。そこで僕がチームを引っ張っていきたいという思いもあります。
そしてまだまだ知名度が低いフットサルでもこっちの人たちは応援してくださる方がすごくいて、今日のような対談の場も用意していただいて、本当にありがたいです。なのでその人たちに結果で恩返しができたら…と思っているので頑張っていきたいです。
ブレイブウォリアーズのことが気になって結果を調べたりもしています。2026年にはリーグが変わることも知っています。今は2部ですが、代表選手の渡邉飛勇などすごい選手たちもいるとのことで、観にいきたいです。そのときはぜひ狩野選手にも活躍してもらいたいです!
狩野 ウォリアーズは昨季B2に落ちてしまったので、今年はB1に戻るのを一番の目標でやっています。2026年からは新しいリーグも始まりますが、B1にいる状態で新しいリーグを迎えたいです。
またフットサルはあまり関わることがなかったんですけど、これを機にボアルース長野さんの試合も観てみたいと思います。今日はありがとうございました!
稲葉 ありがとうございました!