「殴られたら殴り返せ」 ストレート8連敗の苦境に樋口裕希がゲキ

セット数にすると、実に24連続。それだけの数をVC長野トライデンツは落としてきた。「いい形になっていた」「機能はしていた」という声がチームから出るように、一方的に圧倒されたセットは比較的少ない。アップセットを起こせそうな試合もあった。それでも現実は――8連敗。”惜しい”を”勝てる”に変えるために、いま何が必要か。1月11-12日に控える2025年最初のホームゲーム・東レ静岡戦を前に、樋口裕希の言葉に耳を傾ける。

文:大枝 史/編集:大枝 令

格上との連戦でトンネルの中へ
20点以降の「勝負どころ」に壁

「僕らがいいチームに一矢報いるためには、トゲトゲした荒いチームじゃないと勝てないと思う」

2025年1月5日、愛知県稲沢市のエントリオ。SVリーグ第11節・WD名古屋戦のGAME2でストレート負けした試合後、アウトサイドヒッター(OH)樋口裕希は険しい表情でそう強調した。

第7節にヴォレアス北海道に連勝して4勝目を挙げて以降、8戦連続でのストレート負け。格上相手に中盤まで競っても終盤で離される――。もどかしい展開の試合が続き、この日もまた黒星がついた。

川村慎二監督は「20点以降のミスが自分たちの弱さ」と、終盤についてはこれまでに何度も言及している。

とりわけ第10節、東京GB戦のGAME1は、第1、第2セットともに先にセットポイントに到達しながらも、28-30、31-33と激戦を落とす悔しい敗戦だった。

「いつも中盤までは自分たちも悪くない」。アウトサイドヒッター(OH)工藤有史が話せば、リベロ(L)備一真も「悪いところばかりではなかった」と口にする。選手たちも試合ごとに手応えを感じてはいるのだ。

通用する攻撃はある。
対策がハマった場面もある。
20点台で競る展開にも持ち込む。

しかし――。
セットを取り切れない。
勝ち切れない。

唇を噛み締める日々が続く。

新加入の28歳樋口は、その突破口として「トゲトゲした荒いチーム」への変貌を主張する。日本代表登録メンバーの選出歴もあり、踏んできた場数はチーム屈指だ。

シーズン前にも「『1点を取り切れるかどうか』は勝負の世界では大事。そこを取り切れるチームにしたいし、なりたいと思う」と勝負強さの重要性に言及していた。

では、「トゲトゲしたチーム」とは何か。

樋口は前段として、ヴォレアス戦以降のチームの雰囲気にうっすらと物足りなさを覚えていたようだ。「チームとして4勝したことで、丸くまとまろうとしている感が少しあった」と明かす。

実際、4勝に到達したのは11月末の第7節終了時点。9〜10位が定位置だったVC長野が一瞬だけでも7位まで浮上した。しかし以降は、“最後の詰め”を克服できずに黒星が続く。

「常日頃から最後までどう持っていくか、問いながら練習をしている」。川村慎二監督はそう話すが、実現は簡単ではない。

それなのに、丸くなるのはまだ早い。

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敗戦の中でも発揮された「強み」
山田、糸山、樋口らが示す存在感

積み上げられた勝ち点もセット数もゼロ。
ただし、収穫までゼロだったわけではない。
ここに、「トゲ」がある。

ミドルブロッカー(MB)山田航旗は第9節・日鉄堺BZ戦のGAME2以降は5戦連続でスタメン出場となっている。持ち前のアジリティを生かしたクイックが冴え、63.8%と高いアタック決定率。攻撃に大きく貢献している。

とりわけ、WD名古屋戦GAME1の第3セットに見せたBクイック2本は圧巻だった。

セッター(S)糸山大賀とは福岡大時代からコンビを合わせ、今はチームのみならず職場も同じ間柄。「自分たちの持ち味。もっと長所を伸ばしていければ」と糸山もホットラインに手応えを感じている。

GAME2の第2セットからコートに立った樋口も、リーグ最強クラスの相手オポジット(OP)ニミル・アブデルアジズを1枚ブロックでシャットアウト。その直後にはノータッチエースを決め、ひときわ大きな存在感を示した。

層が厚くなることは、強いチームになるために必要不可欠。出てきた選手が活躍することは、そのステップを着実に踏めている証左でもあるだろう。

丸くなるにはまだ早すぎる時期
まずは個々が“トゲトゲしさ”を

こうした個々の活躍こそが「トゲ」。コートで発揮できたそれらを持ち寄る。点を線にして面へと昇華させる。長所が発揮された時に見せる破壊力、そして若さがプラスに転じた際の勢いもそうだ。

チームを球体になぞらえる。

至るところから、個々の武器が「トゲ」として伸びる。しかるのちに球体へと安定すれば、その体積は以前よりも大きくなる。これを樋口はチームの成長であり、難局を打開する勝ち筋である――とみているのではないだろうか。

「丸くまとまるのではなくて少しトゲトゲした荒いチームになって、そこから丸みを目指していく」。実際、樋口も会見のコメントでそう口にしている。

緊迫感の強い、20点台の競り合い。

「終盤にミスを出さない」
「ミスをしても切り替える」

言葉で表現すれば簡単だが、コートでの体現は難しい。それでもミスを恐れ、プレーが縮こまってはいないか。丸くなろうとしてはいないか。

ただでさえ負けが混むと、負のスパイラルに陥りやすい。格上に囲まれたリーグで一体感を失うのは、命綱を自ら引きちぎるに等しい。

「自分たちが勝つためには安定したサイドアウトもそうだけど、殴られた分は殴り返さないと絶対に勝つことはできない。そこはチームとして修正が必要だと思う」

そう語る樋口の眼差しは、貪欲に勝利を追求する。

2025年最初のホーム・第12節は1月11-12日、スワンドームに東レ静岡を迎える。GAME2は折り返しの22戦目に当たり、クラブが掲げた「10勝」の目標まではあと6勝だ。

トゲトゲしく、殴り返す。
むしろ先に仕掛けてもいい。

それこそが迷宮の出口に至るカギとなり、後半戦の道筋を照らす光明になるのかもしれない。


SVリーグ第12節 東レアローズ静岡戦(1月11-12日)試合情報
https://vcnagano.jp/information/16777
クラブ公式サイト
https://vcnagano.jp/
SVリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/sv_men/team/detail/461

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