フルセットの激戦はもはや“十八番”か 2節連続の上位撃破で8位浮上
フルセットはお手のもの――なのかもしれない。SVリーグ男子第14節。4位の東京グレートベアーズを迎えたVC長野トライデンツは、GAME2でセットカウント3-2の勝利をもぎ取った。2-0から連取されても浮き足立たず、これまでの成功体験を自信に変えて堂々とプレー。前日のGAME1で出た課題を見事に修正しての白星でもあり、確かな進歩を示す一勝となった。
取材:大枝 令、松元 麻希
「負ける気がしない」フルセット
前日の反省も生かして圧巻の勝利
事態は風雲急を告げていた。
東京GBとの第14節GAME2。VC長野は2セットを先取しながらも、第3〜4セットを連続で失う。ただでさえ格上の相手で、今季の戦績は5戦5敗。「流れ」「勢い」というものが存在するのなら、確実にそれは相手に渡っていた。
しかし周囲の不安をよそに、選手たちは堂々としたものだった。
アウトサイドヒッター(OH)工藤有史が「それまでの内容どうこうよりも、5セット目には自信があった。あまり負ける気はしなかった」と言えば、OH樋口裕希も「僕らは今フルセットの(試合の)勝率が100%。2セットを取った時点で『負けることはないな』という感じだった」と振り返る。
実際に今季フルセットの試合は3戦3勝。前節もWD名古屋との3時間弱にわたる死闘を制していた。その成功体験が、若きチームに力を吹き込んだ。
ましてやホームだ。燕脂色の大声援を受けて戦う選手たちに、躍動しない理由など一つもなかった。
迎えた最終第5セット。
前日のGAME1で出た課題をことごとくクリアする、圧巻のパフォーマンスを披露した。
4-2からの局面。相手の元ポーランド代表オポジット(OP)マチェイ・ムザイのフェイントを、セッター(S)早坂心之介が素早く反応して拾う。OH迫田郭志がアンダーで上げると、工藤が難しい体勢からねじ込んだ。
前日はムザイらのふわりと落とすフェイントに苦慮していたものの、「昨日はフェイントで落としていた部分を(今日は)上げられていた」と川村慎二監督。それは第1セットから示していたプレーでもあった。
マッチポイントからのプレーも象徴的だった。
ブロックとフロアのディフェンスが連動し、2枚ブロックに応じてリベロ(L)備一真がバックステップ。難なくディグに成功すると、最後はOPウルリック・ダールの強打でブロックアウトとした。
コートで喜びに沸く選手たち。ベンチから飛び出した背番号7の古藤宏規はその前からすでに、ユニフォームを後ろ前に着ていた。「7勝目」の記念写真に納まる準備は万端だった。
「昨日はサーブで走られて、崩れて何もできなかった。今日はこちらがサーブで攻めて、ブロックとディフェンスの関係を作ってやってきた」。ミドルブロッカー(MB)山田航旗は、POM(プレーヤー・オブ・ザ・マッチ)のインタビューでそう話した。
大砲ウルリックが獅子奮迅の活躍
頼り切らないトスワークも光る
そして鮮烈だったのはウルリック。10-7の局面から、ネットすれすれを攻める左腕のジャンプサーブでレシーブを崩す。早坂と山田がブロックを決めるなどして5連続ブレイク。ボルテージが上がる会場の雰囲気も味方につけ、一気呵成にたたみかけた。
「(国内外の)名前がある選手たちがいるこのSVリーグで、対等に戦って名を知ってもらうのが自分の目標だった。それはできていると思うので、とてもうれしい」
「トライデンツの観客の声援がとても大きくて、そんな環境で戦えるのはすごく楽しい。そういう人たちのために、もっと点を取って勝ちに行きたい」
以前の取材に対し、そう話していたウルリック。15点目のアタックを決めると、コートを駆け回って喜びを表現した。
この日はバックアタック13本を含む31点(アタック決定率58.5%)。その左腕はさしずめ打ち出の小槌。振れば振るだけ点が入り、多少のパスの乱れも力強く巻き取った。
若きデンマーク代表OPが躍動した陰で、周囲の好プレーも光っていた。攻撃を司る早坂が明かす。
「東京GBさんと5試合やってきた中で、僕たちの展開としては終盤にウルリックに集めるのがパターン化していた。今日はそこをなんとか打開したいと考えていた」
もともと中央を通すのは得意で、とりわけMBトレント・オデイとの連係は良好。山田も含めたミドル陣のクイックを効果的に織り交ぜながら、相手のブロックを分散させた。
決して大砲だけに頼らず、全員が役割を果たして勝利に至ったVC長野。早坂は「結果的にハマったので良かった」と納得の表情を浮かべた。
サーブの成否が格上撃破の一里塚
次節は首位大阪ブルテオンに挑戦
白星への一里塚となるのは、やはりサーブだ。
GAME1はウルリックと工藤のストロングサーバー2人が東京GBの好レシーブに遭い、ほとんど1回でサイドアウトを取られる。そうなると苦しく、工藤はGAME1を終えて反省の弁を口にしていた。
「僕とウルリックのサーブが機能してこそだと思う。相手のレセプションが良かったのはあるけれど、もっと戦術的なサーブ、相手の攻撃枚数を減らすようなサーブをもっと打てればよかった」
その日の工藤はサーブに関して、後悔にまみれてもいた。セットカウント1-2で追う18-18の局面。相手のタイムアウト明けに迷いが生じ、狙いを絞ったサーブがネットにかかるミス。「(強く)打ってれば良かった――とずっと思っていたし、4セット目はあれで負けたと思う」。
しかしGAME2では一転して、攻めた。和洋の2枚看板だけでなく、狙いを定めたフローター系のサーブも効果を発揮。トレントは第2セットにサービスエースを含む5連続ブレイクとした。
川村監督も「6人の中で誰が強く打って、誰が戦術的に打つか。選手一人一人がしっかりと役割を認識しながら挑んでくれた」とうなずいた。
前節のWD名古屋戦に続き、上位陣から勝利をもぎ取ることに成功。GAME1での反省を生かしたことも、フルセットでまた勝ち切れたことも、若きチームに大きな自信を吹き込む。
この白星で東レ静岡を抜いて8位に浮上。過去最多勝利数はすでに更新しており、当初は雲上の目標かと思われた「10勝」も少しずつ現実味を帯びてきた。
次節はアウェイで首位・大阪Bに挑む一戦となり、「もちろん強いけれど、なにかしら隙は絶対にあると思う。順位は下ですけど思い切ってプレーして、何かを得て帰ってきたい」と指揮官。歴史を刻む進撃が続く。
GAME1 監督・選手コメント(クラブ公式サイト)
https://vcnagano.jp/match/2024-2025-sv-div14-1
GAME2 監督・選手コメント(クラブ公式サイト)
https://vcnagano.jp/match/2024-2025-sv-div14-2
SVリーグ男子 順位表
https://www.svleague.jp/ja/match/detail/32231