【Farewell-column】背中で見せた 薩摩隼人の心意気 VC長野・迫田郭志

バレーボールの季節は、映える新緑とともに遠い記憶となっていく。長野県内のSVリーグ男子/Vリーグ男女の計3チームからも、今季限りでの退団者が発表された。本企画はチームを去る選手・スタッフに敬意を表し、その働きぶりやチームに遺した財産などを改めて記録するもの。第2回は、VC長野トライデンツのアウトサイドヒッター(OH)迫田郭志にスポットを当てる。
文:大枝 史/編集:大枝 令
重要な局面で光った存在感
レセプションがもたらす安定
2025年3月30日、このはなアリーナ。
第21節東レ静岡戦のGAME2、第2セット23-23からブラジル代表オポジット(OP)アラン・ソウザのスパイクを2連続でブロックに成功した。

身長183cm。
SVリーグ全体ではOHとしては小柄だが、その身体をしならせて高く跳ぶ。VC長野は逆転でこのセットを取り切ったことが、フルセットでの勝利に繋がった。
第12節GAME1での東レ静岡戦でも、アタック決定率61.9%と気を吐いた。

しなやかなフォームから繰り出されるサーブも武器の一つだ。
この日のサーブ効果率は14.6%。サービスエース2本を含め、第3セットの28-27の局面で迫田のサーブから相手を崩す。最後はOH樋口裕希のブロックで勝利を収めた。

しかし、真骨頂はまた別の部分にあった。
「一番はディフェンス面で期待されている」
迫田本人が口にしていたように、一番の武器はレセプションだった。

サーブレシーブ成功率は46.7%でリーグ5位と、リベロがひしめくランキングでアウトサイドヒッター(OH)ながら上位に食い込む活躍。課題としているサイドアウト率の向上に大きく貢献した。

プロフェッショナルの流儀
コート内外で見せ続けたものは
「迫田は寡黙だけどプレーで引っ張る」
樋口が口にしていたように、その背中で見せてきた。プッシュやフェイント。ブロックを利用した攻撃を駆使して得点を積み上げた。

「このサイズでは強いキャラクターにはなれない。でも、嫌な選手にはなれる」
自らの指針としてきた言葉を体現するプレーの数々。183cmの身体に詰まったノウハウ。「ただ打つだけではない」と全身で表現した。若い選手はその姿から学ぶことも多くあったはずだ。

背中を見せてきたのはコートの中だけではない。練習前のストレッチや柔軟。身体の柔らかさに常に気を付けてコンディションを維持していた。
「バレーに対する向き合い方。ケアも含めてストレッチ、練習前と試合前のルーティンはプロ選手としてすごいと思うところは何個もあった」
同じプロ契約の備一真もそう振り返る。

ポジションが同じOH工藤有史も「ディフェンスの面ですごくアドバイスをくれた」と感謝の念を口にする。
樋口とともに日鉄堺BZから移籍してきた2人がVC長野に残したものは決して少なくない。この経験を無上の糧とし、さらなる飛躍への足掛かりとする。

PROFILE
迫田 郭志(さこだ・ひろし) 1996年5月1日生まれ、鹿児島県出身。鹿児島商高2年時に全日本高校選手権(春高バレー)準優勝。福山平成大ではキャプテンを務め、4年時の2018年に全日本バレーボール大学男女選手権で準優勝した。FC東京(当時)から日鉄堺BZ移籍し、2021-22から3シーズン在籍。副キャプテンも務めた。攻守とも高水準なプレーを繰り出すアウトサイドヒッター(OH)で、サーブレシーブ成功率はリーグ5位の46.7%。巧打も光った。183cm、73kg。最高到達点330cm。
迫田郭志 2024-25 SVリーグ男子 個人成績
https://www.svleague.jp/ja/sv_men/player/detail/3646