顔ぶれ一新で5年目のWE開幕へ なでしこリーグからの挑戦者が起こす化学反応

上位進出に向けて、新たなスパイスが効いている。5年目のWEリーグ開幕を控えるAC長野パルセイロ・レディース。昨季から大幅にメンバーが入れ替わり、アマチュアのなでしこリーグからも4人を加えた。いずれもプロ初挑戦の面々だが、実力的に大きな差があるわけではない。“即戦力”として2025年8月9日のホームでの開幕戦に向かっている。
文:田中 紘夢
KINGDOM パートナー
プロ初挑戦でもたらすハングリー
「思わぬ好材料」と指揮官も期待
WEリーグに参入して以降、最も慌ただしいオフシーズンだった。
前キャプテンのMF伊藤めぐみ(現サンフレッチェ広島レジーナ)をはじめ11人が退団し、10人の新戦力が入団。同カテゴリーのWEリーグから6人が加わり、4人はアマチュアリーグのなでしこリーグからキャリアアップとなった。
新しい顔ぶれにおいて、誰がスタメンを勝ち取るのか。横一線の競争が繰り広げられる中、廣瀬龍監督はプロ初挑戦の面々に期待を込める。

「なでしこリーグから4人の選手が来て、彼女たちからはハングリーさを感じられる。『プロになれた』というところで意識高く取り組んで、懸命にトライしてくれているので、戦力として十分に計算できる。もちろん計算していなかったわけではないけど、思わぬ好材料でもあった」
19歳のFW松岡優空を除いた3人は、いわゆる中堅世代だ。FW大坪菜とDF筬島彩佳は28歳、GK垣内愛菜は29歳。チームの平均年齢が23.9歳(始動日時点)と若いことを踏まえれば、ベテランの域とも捉えられるかもしれない。

そのぶん経験も豊富にある。筬島と垣内は前所属チームでキャプテンを務め、大坪も副キャプテンの実績の持ち主。新戦力とはいえ周囲の先導が求められており、指揮官が期待するのもうなずける。
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愛媛から長野のオレンジへ
相応の覚悟をもって衣替え
今季は4人が未合流のチーム始動日時点で、キャプテンと副キャプテンが決まっていた。彼女たちは約2週間後の合流となったが、廣瀬監督が「そういう役職を与えてもよかったかもしれない」と評した選手もいる。
なでしこリーグ1部の愛媛FCレディースから加わった筬島だ。

大卒から同クラブに10年間在籍し、キャリア初の移籍。慣れ親しんだオレンジには変わりなくとも、相応の覚悟をもって衣替えした。
「上のリーグでプレーしたいとはずっと思っていたけど、愛媛ではキャプテンもやっていたし、気持ちよくいけるような順位でもなかった。すごく悩んだけど、『まだまだ上を目指したい』という思いが勝った」

ムードメーカーとしての役回りもある。
同僚からは「ずっと笑っている」「口角が下がらない」との声も。陽気な性格からなるものだが、それも含めて筬島は「ポジティブなエネルギーをもたらしたい」。最終ラインが主戦場であることを踏まえても、彼女の振る舞いがチームに与える影響は大きい。

同じ愛媛FCレディースから“新鋭”もやってきた。19歳の松岡優空だ。
スピードを生かしたドリブルやラインブレイクが持ち味。川船暁海や大内梨央のようなパワーはなくとも、初速で相手を置き去りにできる。
昨季まで所属していたFW安倍乃花(現マイナビ仙台レディース)は、柳ヶ浦高(大分)の2学年上の先輩に当たる。スピードとパワーを兼ね備えたストライカーで、「攻守においてアグレッシブだし負けず嫌い。すごく頼りがいのある先輩だった」と思い返す。

長野の印象については、「すごく走るし、戦うチーム」と耳にしたという。偉大な先輩のようにハードワークを欠かさず、目に見える結果でチームに貢献できるか。
「愛媛にも応援してくれている方々がたくさんいる。自分の活躍が届くように頑張りたい」と力を込めた。
憧れの舞台で「ラストチャンス」
上位進出を目指し化学反応起こす
筬島、松岡と同じくなでしこ1部リーグから加わったGK垣内は、29歳にしてプロ初挑戦。同リーグ首位の朝日インテック・ラブリッジ名古屋を離れ、「これがラストチャンス」と腹をくくっている。
高校2年時にフィールドプレーヤーからGKに転身。大会で正守護神が不在の際にコンバートされ、そのまま最後方が持ち場となった。

フィールドプレーヤーの経験を生かした足元の技術が持ち味。過去にもWEリーグクラブに練習参加したが、プロ入りはかなわず。「年齢的に難しい」という見られ方もあったようだ。
それでも「名古屋で優勝して上がりたい」と意を決し、昨季はなでしこ1部のベストイレブンに選出。今季も退団前ラストゲームまで首位を走っていた。その活躍がAC長野の目に留まり、待望のオファーが届く。

「ずっとWEリーグに行きたかったし、これを逃したらもうチャンスはないと思っていた。自分にとっては勝負の年なので、試合に出て結果を残すのはもちろん、チームのためにできることを全力でやりたい」
なでしこリーグ2部からチャンスをつかんだ者もいる。
VONDS市原FCレディースから加わった大坪。AC長野と練習試合で戦った際、ハードワークぶりが廣瀬龍監督の目に留まった。

「うちの中でもハングリーさのある選手に対して、同等以上に戦っていた。見ていてハートの部分を感じる」
昨季まで在籍していた岡本祐花とは、中学から大学までをともに過ごした。AC長野の話も頻繁に耳にして、「あそこでやれたらいいな」と憧れを抱いていたという。
いわゆる“2段階昇格”で、WEリーグ全体を見渡してもそう多い例ではない。大坪の活躍は、同じ志を持つ選手たちに勇気を与えるかもしれない。

「周りの人たちも『どうなのかな…』と心配してくれる部分もあると思う。なでしこ2部の選手でも通用すると思わせたいし、みんながそういう気持ちになってもらえるように活躍したい」
彼女たちの持つハングリーさが、上位進出に向けてどんな化学反応を起こすのか。群雄割拠のWEリーグを勝ち抜くためには、チーム内での競争力が必要不可欠だ。
開幕戦は2025年8月9日、ホームでのアルビレックス新潟レディース戦。昨季4位の強豪を前に、現状のベストをぶつける。
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