サトタクNavigates バスケット・ラビリンス(12) 「新チームが示した攻守の“進化”」

バスケットボールは豪快で派手なプレーが目を引く一方、コート上の戦術面に目を向けると非常に繊細で難解でもある。信州ブレイブウォリアーズはどんなバスケットを目指していて、現在地はどこなのか――。2018年から3シーズン、勝久マイケルHCの元でプレーした佐藤託矢がナビゲートする。第12回は2025-26シーズンが始まって見えてきたチームの進化などについて聞いた。

構成:芋川 史貴、大枝 令

戻ってきた“ディフェンスの信州”
スティール数の増加が如実に示す

待ちに待った2025-26シーズンが開幕した。

今季の信州は小栗(瑛哉)、土家(大輝)、東海林(奨)ら25歳になる世代が加入し、外国籍ではマイク・ダウム、アンジェロ・チョルを加えて、バランス良く若返りに成功した。

これまで既に5試合を消化し、何よりも大きな変化を感じたのはディフェンスだ。

スティール数を見ると、昨季のレギュラーシーズンの1試合平均「5.5」よりも多い「8.8」を記録。若さあふれるエネルギーで40分間オールコートディフェンスを仕掛け、1-3-1ゾーンなども折り交ぜながら、積極的に相手のボールを奪いにいく。

若手選手の躍動はもちろんだが、アキ・チェンバースの泥くさいルーズボールやウェイン・マーシャルの思い切りのあるディフェンスなど、ベテラン勢もそれにフィットしようとする姿が見受けられる。

ディフェンスからリズムを作って得点を重ねるバスケットこそ、勝久マイケル・ヘッドコーチ(HC)が志向するスタイル。今季のチームはそれを体現できる選手たちがそろったと僕は思う。

これまでも触れてきたが、勝久HCのバスケットボールは緻密であり、奥が深い。オフェンスでもディフェンスでも細かなルールが設定されており、選手たちはそれらを遂行できるかが試される。

立ち位置やタイミング、スクリーンの角度一つ取っても、わずかなズレは許されず、それらを試合で遂行するために何度も何度も練習で反復する。

ディフェンスであれば、チーム全員でいかに相手が苦手とするシュートを打たせられるか。オフェンスではいかに確率の高いシュートを作れるか。

豪快なブロックショットも華麗な3ポイントシュートも、それが生まれるまでには細部にわたる努力が詰まっている。

チームを牽引するニューフェイス
頼もしさ際立つ小栗&土家コンビ

オフェンスにも変化が見られた。

昨季は特定の選手が攻撃を仕掛けようとすると、周りの選手たちの動きが止まってしまうシーンが何度もあった。しかし今季は改善する意識が見られ、ボールを持っていない選手のカッティングや細かなパスワークなどを駆使し、スムーズなオフェンスを生み出そうとしている。

次から次へと流れるように攻撃に入る動きをチームでは「ドミノ」と呼ぶ。例え最初のオプションが止められたとしても、次の攻撃策が練られているのも今季の特徴だ。

これは決して簡単なことではない。個々の選手がパターン別に動きをインプットし、それを状況に合わせて引き出さなければならない。

誰か一人でも動きにミスが起こると、チーム全体のエラーに繋がる。だが新加入が多い中でもこの戦術に取り組み、現時点で体現できている。今後も楽しみな部分だ。

それを実現するに当たって、とりわけ小栗と土家の存在は大きい。ゲームの流れを読みながら最適解を探す状況判断力に長けており、チームを救うプレーが既に何度も飛び出している。

さらにその2人を中心に激しくディフェンスを仕掛けることで、連続ポイントやイージーバスケットも多く見られるようになった。

もちろんクオリティとしては成長途上の面もある。それでも新加入が多い中で勝久HCが求めるバスケットを遂行できていることは、評価すべきポイントだ。

「日々成長できるチーム」と勝久HCが言うように、とても期待ができるチームだと強く感じる。

福井戦は相手の分析にハマり黒星
横浜EX戦でバウンスバックを

信州は開幕戦をホームのホワイトリングで迎え、山形ワイヴァンズを相手に2連勝をつかんだ。第2節の熊本ヴォルターズ戦も、アウェイの雰囲気を押しのけて2連勝。

一方で福井ブローウィンズとの試合は相手のスカウティングにはまり、信州がやりたいバスケットを逆にやられてしまった。ただ敗れはしたものの第3クォーター(Q)には立て直す時間帯もあり、若手やチーム全体にとっても糧となる試合だったと思う。

信州はアウェイでの連戦だった――。というのは言い訳にしかならないが、小栗と土家など昨季よりも大幅にプレータイムが増えている選手がいることも事実。体力面へのアジャストもシーズン中に必要となってくる。

そして今週末の18-19日は、ホームで横浜エクセレンスと対戦する。2019-22シーズンの間に信州に所属していた西山達哉や、かつて信州を率いた河合竜児HCとの再会を心待ちにしているブースターも多いことだろう。

体力的にもスカウティング的にも厳しい連戦。だからこそ会場で選手を応援し、ホームでの連勝を後押ししたい。

PROFILE
佐藤 託矢(さとう・たくや) 1983年8月25日生まれ、大阪府出身。東住吉工高(現・東住吉総合高)時代はウインターカップ、インターハイともに4強を経験し、青山学院大ではインカレ準優勝。卒業後は当時JBLの三菱電機からスタートし、千葉ジェッツ、京都ハンナリーズなどを経て2018〜21年に信州でプレーした。引退後はクラブの「信州ふるさと大使」となり、今季からはアカデミースーパーバイザーも兼任。「ど素人バスケ」と出張型パーソナルトレーナーを自主事業とするほか、養護学校などでのボランティア活動も実施している。好きなおつまみは梅水晶。


クラブ公式サイト
https://www.b-warriors.net/

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