「小さな村から全国へ」と原点回帰 地域との絆強めて“トライデント”を強靭に

VC長野の「トライデント」(三叉の槍)を構成する要素の一つに、「地域」がある。地域とバレーボールなどを通じて交流することで、互いにエネルギーを吹き込み合って絆が強まる。今回はオフシーズンに行われたバレーボール教室、ママさんバレーボール交流会、一日警察署長委嘱式などの各種イベントに密着。コート外での奮戦ぶりをまとめながら、選手たちの声を拾った。

取材:大枝 史 、大枝 令

古藤「交流一つからしっかりと」
松本「まずは運動に興味を」

2025年9月14日午前、「大同生命presents ママさんバレーボール交流会」が諏訪郡下諏訪町で行われた。

県内のママさんバレーボールクラブ所属者を対象に、VC長野トライデンツの全選手と交流しながら練習をするイベント。見学者も含めておよそ60人が下諏訪体育館に集まった。

スパイク練習やサーブ練習に加えて、最後は選手を加えて9人制バレーで総当たり戦を行った。

自身もママさんバレーについていったことがバレーを始めるきっかけになったという古藤宏規は「懐かしい。自分も(将来は)おじさんクラブでやっているんだろうとは思うけど、元気の良さは見習いたい」

普段はリベロでボールを繋ぐ役割を果たす古藤。「僕らは小さい村のチームなので、一つの交流でもしっかり繋がっていきたい」と熱を込めた。

参加した女性は「いつも2階席で見ている時よりも近くだと迫力があるし、プレーが上手で勉強になった」と充実感をのぞかせた。

午後には下諏訪町主催の小中高生対象バレーボール教室が続けて行われた。

下諏訪町の小学生15人、中学生7人、高校生6人が選手から指導を受けながら練習に励んだ。

自身も高校時代まで長野県で過ごした松本慶彦は「長野県は小〜中学校は男子も女子も強いので認知度はあると思う。そこも維持しつつ、やる人が増えればいい」と期待を込める。

とはいえ、競技人口以前の問題として生徒の絶対数が少なくなっているのも現実。その中でも松本は、特にバレーボールにこだわらずにスポーツを楽しんでほしい――という考えを持つ。

「僕も元々はスキーをやっていた。今トップでやっている人たちも意外と違う競技をやっていた人もいる。まずは身体を動かして、運動することに興味を持ってもらいたい」と呼びかけた。

飯田「地域の応援を力に戦う」
難波「地域とVC長野を繋ぐ」

9月15日には南箕輪村役場で一日警察署長委嘱式が執り行われた。

会場には長野県警察のマスコットキャラクター・ライポくんとライピィちゃんに加えてVC長野からグロッテも参戦。イベントに華を添えた。

一日警察署長に飯田孝雅、一日生活安全課長には難波宏治、一日交通課長に工藤有史がそれぞれ任命され、引き締まった表情で特殊詐欺被害への注意を訴えかけた。

「敬礼でパトロールに行くのを見送るのは緊張感がすごかった」

飯田は今季、副キャプテンとしてチームをまとめるほかにも、こうした地域交流でもチームを引っ張る。

「地域と密接に繋がって、地域の応援を力にして戦っていくチームができていると思う。小さな村から始まっているチームなので、それはこの先チームが大きくなっても絶対に大切にしていきたい」

昨シーズンを通じて、ホームゲームにおける一体感を強く感じたという飯田。地域から始まったチームだからこそ、より繋がりを強くしてともにSVリーグを戦っていく。

「人生で一回経験できるかできないか。警察官の制服を着られて、とても良い体験ができた」

そう振り返るのは南箕輪村役場で勤務する難波。

「自分の仕事柄、地域の方とVC長野を繋ぐ役割が自分のミッション。こういうイベントに参加して、地域密着型の成功例ができたらいい」

選手たちはこの後すぐに2024年の8月にホームタウンパートナーとして協定を締結した下諏訪町へと移動。午後から下諏訪体育館でVリーグ・富士通カワサキレッドスピリッツとの公開トレーニングマッチを行い、熱心なファンらが体育館を埋めた。

中学生年代トップ級の選手も指導
高度な質問に答えて「言語化」も

巻き戻して7月には、「強化」の側面が強いバレーボール教室に参加していた。

飯島中学校など2会場で中学生にバレーボールを指導。県外からも全国的な強豪で川村慎二監督の母校・菟田野中(奈良)などそうそうたるチームが集まった南信州強化練習会だ。

飯島町と中川村の合同クラブ「RISSI(立志)」の主催。三石雅幸代表は日本中学校体育連盟バレーボール競技部の強化委員長も務めており、VC長野の選手全員を呼ぶのは昨年に続き2度目となった。

「SVリーグという雲の上の世界としてしか見ていない存在が、こういう形でサポートに入ってくれる。喜びの何物でもない。 自分もそういう世界を目指すきっかけになったらいい」と三石代表は力を込める。

練習試合の前後で、選手たちが中学生にアドバイスを送ったり質問に答えたり。

安原大はサイドライン際に入ってくるストレートのスパイクに対するレシーブについて質問を受け、「クロスと比べて距離が短いから、手でコントロールするレシーブよりも、身体を置いて上がる形を作って当てる」と自らの感覚を言語化していた。

ハイブリッドサーブなども使い分ける中学生のプレーには「本当にレベルが高くてびっくりした」と感嘆しきり。高度な質問に応じる経験を通じ、「感覚でプレーしていた部分が多かったけど、言語化して自分でも確認できた」と話していた。

佐藤隆哉も同様に「自分の頃はリバウンドなんて概念もなかった」と目を丸くする。子どもたちからはジャンプサーブの打ち方やレシーブのやり方などを矢継ぎ早に問われ、その積極性にも感銘を受けたようだった。

「やっぱりアグレッシブで積極的な姿勢があってこそ、新しいものを取り入れようとして身に付くようになるんだと思う」と自らの学びにも変えていた。

地域により強く、より深く根差していくVC長野。交流したり刺激を得たりしながら「三叉の槍」を強靭にし、新シーズンへの準備を続ける。


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