背番号に込められたそれぞれの物語 忽那喬司はレジェンドの系譜を継ぐ

背番号は単なる数字ではない。それぞれの物語を背中に刻み、ピッチで輝くためにある。2026年8月8日にJ3リーグ開幕を控えるAC長野パルセイロは今季、4人の選手が背番号を変更した。忽那喬司、伊藤恵亮、安藤一哉、長谷川雄志。彼らが新たな数字に込めた思いは何なのか――。ホームの長野Uスタジアムで迎えるレノファ山口FCとの開幕戦を前に、それぞれの物語を紐解いていく。
文:田中 紘夢
KINGDOM パートナー
忽那喬司のアシストを受けて
伊藤恵亮は“念願”の17番に
「(伊藤)恵亮が17番を付けたがっていた。冗談まじりに『譲ってよ!』とずっと言ってきたので…」
そう笑って話す“元17番”のMF忽那喬司は、伊藤に背番号を譲る格好となった。
もともと背番号にこだわりはない。大卒で加入した当時J2の愛媛FCでは36番、19番と変遷し、J3降格のタイミングで8番に変更。8番に行き着いたのは、期限付き移籍元のJ1サンフレッチェ広島に復帰するMF川村拓夢から「喬司くん着けたら?」と後継を勧められたことが理由だ。

忽那とは対照的に、MF伊藤恵亮は17番に強いこだわりがある。
矢板中央高(栃木)では2年まで試合に絡めなかったが、3年になって17番を着けてから台頭。チェルシー(イングランド・プレミアリーグ)のエデン・アザールにも憧れて気に入っていた。
プロ入り後もJ3のSC相模原で2年目から17番を背負い、3年目の24年にはリーグ戦25試合で5ゴールと活躍。翌年に長野へ移籍した際も17番を希望したが、すでに埋まっていたため19番となった。

それでも「どこかでもう一度付けられるなら…」という思いはあった。今季は忽那から譲り受ける形で、相性の良い背番号に回帰。こだわりのない忽那は、後輩のお願いを受けて「全然いいよ」と快諾した。
伊藤は今年4月に左膝の大ケガから復帰。加入後初ゴールが待たれる25歳は、「年齢的にも勝負の年になると思う。口で言うよりも結果で示したい」と心機一転を誓っている。
KINGDOM パートナー
レジェンドの系譜を継いだ忽那
「身が引き締まる思いはある」
伊藤に17番を譲った忽那は、新たに14番を背負うこととなった。愛媛時代に川村から8番を受け継いだように、今回も前任から勧められた形。前任とは、25年をもって現役引退した三田尚希さんのことだ。

「軽いノリで付けた」と話す忽那だが、長野の14番にはどっしりとした重みがある。高野耕平、東浩史、三田――。いずれもクラブを長年支えてきた“レジェンド”で、今も長野県に残って活動している点も共通する。
東さんは現役時代に愛媛でも活躍した。当時愛媛のジュニアユースに所属していた忽那は、「マジで好きな選手だった」と回顧する。
三田さんに関しても元同僚として尊敬する存在。開幕前のキックオフパーティーでは「荷が重いだろ?」と言われ、「全然」と強がってみせたが、重圧も少なからず感じている様子だ。

「偉大な選手たちが背負ってきた番号を付けるということで、身が引き締まる思いはある。長野のために戦うという意味では今まで通りだけれど、今までとはちょっと違う気持ちにもなる」
ましてや三田さんの後継となれば、「あの献身性は受け継がないといけない」。三田さんは24年から2年間にわたってキャプテンを務め、豊富な運動量を駆使して背中でチームを率いてきた。
忽那はどちらかと言えば量よりも質で勝負するタイプ。三田の量をこなす姿を思い返し、「自分に足りないところ」と見習っている。背番号だけでなく姿勢も継承し、14番にふさわしいプレーを見せるつもりだ。
憧れの背中を追う安藤一哉と
家族の思いを背負う長谷川雄志
「絶対に信じてもらえないけれど…」
33番から39番に変更したMF安藤一哉は、そう切り出した上で理由を明かした。

「僕は宇佐美貴史選手(J1ガンバ大阪)が好きで。宇佐美選手が33番と39番を着けていたので、真似したいなと。母が関西にいた関係で、昔からガンバの試合を見ていて、ああいう選手になりたいと思っていた」
そもそも安藤は左利きで、右利きの宇佐美とは利き足が異なる。ドリブラーという共通項はあれど、サイドプレーヤーの安藤に対して宇佐美は中央寄り。似ても似つかない存在だ。
それでも好きという感情に偽りはない。アイドルに感化されて39番を選んだわけだが、同僚からは「本当の理由は?」とイジられている。そんな理不尽にも本人は満更でもない様子で、むしろ嬉しそうだ。

MF長谷川雄志は5番から40番に変更。当時J1の大分トリニータやSC相模原でも背負った番号で、原点回帰を図ったかと思いきや、長女から「40番が良い」と言われたのがきっかけだった。
数字に大きな意味はない。プロ入りした大分で40番を選んだ際は、J1鹿島アントラーズの小笠原満男さんの引退会見を偶然テレビで見ていて、「この人と同じにしよう!」とその場のノリで決めたという。

昨季までは家族4人で暮らしていたが、今季は娘の進学に伴って単身赴任となった。一軒家での一人暮らしに寂しさを抱えながらも、「律する」というテーマのもと、日常生活からプロとしての振る舞いを欠かさない。
「ダラダラしようと思えばいくらでもできるけれど、そこでいかに自分を律して行動できるか。それによって変わってくると思う」。長女の思いが込められた40番を背負い、離れた家族にも活躍を届ける覚悟でいる。

その胸に、その背中に秘めた思いを解き放つべく、新たなシーズンへ。リーグ開幕戦は8月8日。ホームの長野Uスタジアムでレノファ山口FCを迎え撃つ。
クラブ公式サイト
https://parceiro.co.jp/




















