ラーナー新監督が合流 トライデンツに求めるチーム像とは

ドイツ出身の新指揮官がチームに合流した。10日間のオフを挟み、全体練習を再開した2026年8月4日。SVリーグ男子の信州松本トライデンツを今季から率いるトーマス・ボブ・ラーナー新監督が岡谷市の練習会場に姿を見せた。2025-26シーズンのレギュラーシーズンは5勝39敗で最下位に沈むなど、国内最高峰リーグで厳しい戦いを強いられているチームをどう立て直していくのか。合流初日から熱のこもった全体練習に取り組んだ後、初めて異国の地で指導に当たるラーナー新監督に展望や意気込みを聞いた。
文:大枝 史
KINGDOM パートナー
クラブの熱量に動かされ就任
目指すは「自分のチーム」
――信州松本トラインデンツから監督オファーを受けた時はどのような気持ちでしたか?
まず何よりも、大変光栄に思うと同時に、どこか現実味がないような不思議な感覚も覚えています。文化的な隔たりは非常に大きいわけですが、それはあくまで「距離」の問題に過ぎません。
日本はバレーボールが盛んな国ですし、VNL(バレーボールネーションズリーグ)の活動で訪れたこともあるため、私にとって全く未知の場所というわけではありません。それでも、自分の仕事がこれほど遠く離れた地で目に留めていただけたというのは非常に大きなことだと感じています。

――ドイツを離れて監督を務めることは今回が初めてだと思いますが、日本に対する思いや覚悟を聞かせてください。
まず、私はこれまで様々な文化に触れてきました。代表チームの活動で年間160日ほど遠征することもあるので、ドイツ国外で過ごすこと自体は初めてではありません。
とはいえ、日本の文化は初めてです。まずは日本の文化を尊重して受け入れて、その上で自分自身にも取り入れたいです。それを基にして改善していきたいと思うし、自分のスキルを変えたいという人の手伝いもしていきたいです。意味のある変化を求めていきたいと思ってきました。
――日本のSVリーグ、信州松本トライデンツで指揮を執るにあたって決め手となったものはなんですか?
一つは「挑戦したい」ということです。
もう一つは「人」です。このチームをまとめている小川さん(小川貴史ゼネラルマネージャー)や藤森さん(藤森淳平取締役)と何回か会うにあたって、彼らの熱量や可能性に惹かれました。家族も連れてくるという色々な条件も加味してこの仕事を受けると決めました。
SVリーグは世界の中でもトップにあるリーグなので、それ以外にも指揮を執る動機づけはありましたが、それでも一番となるのは、小川さんや藤森さんという人に会って、熱量に動かされた感じです。

――ラーナー監督が具体的に目指すチーム像、理想とするチームはどのようなチームですか?
私の理想とするチームは「自分のチーム」です。
監督が選手、スタッフを選ぶと同時に選手から選ばれる側でもありますが、外側に目を向ける必要はなく、内側に目を向けることが重要です。「他のチームのこの選手が欲しい」とは思いません。ここにいる選手が必要です。「他のスタッフが欲しい」とも思いません。ここのスタッフが必要です。他に良い街もたくさんありますが、ここが一番良いです。だからこそ、「自分のチーム」と言いました。
――今日の練習では集中力やエナジーの話をされていましたが、初めて合流してどう感じましたか?
練習はすごく良かったと思います。熱量も練習のレベルの高さも良かったと思いますが、バレーボールは激しいだけではダメで、正確性も必要です。激しい中にもしっかりと正確性を求めていくことはやっていかなければいけないと思いました。
そのために細かいところを一つずつ変えていきたいと思っていますが、私が来日する前の練習や昨シーズンは古田(博幸)コーチや安田(瑛亮)コーチが指揮を執ってくれていたので、スタッフと協力しながらその方法を見つけていきたいと考えています。

KINGDOM パートナー
自分で決めてトライを
熱量持って取り組む姿勢見せる
――新戦力の加入も多くありました。昨シーズンは苦しいシーズンでしたが、何をプラスしていけば勝てるチームになっていくと考えていますか?
新加入選手が多いという話なのでそれに乗ると、一つはデービッド・スミス選手。彼はリーダーシップがすごくある選手です。もちろん日本にもそういう選手はいますが、アメリカのリーダーシップの取り方は日本とは全然違うものだと思っています。経験のある選手が来てくれることはこのチームにとってすごくプラスになると思います。
オポジットは点取り屋というイメージが強いですが、フィリップ・ジョンはどちらかというとテクニシャンでボールを巧みに操るところもまた面白いと思います。
若いアメリカ人の2人、ディアリス(・平・マックレビン)とザック(ザカリー・ラマ)は強い野心を持っています。昨シーズン苦戦したチームにやってきて、「今シーズンの目標は?」と聞かれて「全て勝つ」と言い切ります。「大きな夢を追う」というアメリカ人選手らしい文化や姿勢を持ち込んでくれるとうれしいです。

――チームにはどのような印象を受けましたか?
「すごくバレーボールが好きな集団だな」と思いました。今日も練習に来たら開始の1時間前から来てボールを触っている選手もいました。本当にバレーボールが好きなんだな、という印象です。そういう文化がチームに根付いていることもすごく素敵だと思いました。
ただ練習と実際に試合でプレーすることは違います。総じて必要なことは、モチベーションとその人自身の役割です。今日の練習でも細かなことですが、少し足りていないと感じたので修正していかなければいけません。
全体の構造、練習の量や質、ジャンプの回数などもありますが、選手たちが本当に努力しようとしていることや向上心を持っていることは本当に素晴らしいことだと感じています。
――日本人の若い選手が育つことがSVリーグで勝つために大事になってくると思いますが、どのような考えで選手たちを育てていきたいですか?
一番大事なことは自分で物事を決定することです。チームの中でリーダーシップは大事で、それは慣れている経験のある選手がやってくれますが、コートに入ったら自分がどのようなプレーをしていくかは自分で決めていかなければいけません。そこをやれるようにしていってほしいです。
若い選手は結果を顧みずにチャレンジできることがいいところではあります。まずはトライしてほしいし、その中でこちらから与えられるアドバイスはたくさんあります。
最後に周知していただきたいのは、選手が「こうプレーをする」と決めた時の最終的な責任は監督の私にあることです。
もちろんその中で一番最善策を選んでやっているはずですが、その中で起こった出来事の責任は私にあります。

――トライデンツの監督として叶えたい夢はありますか?
3年後にメダルを獲ることです。
それはビジネスというか、呼ばれた理由にもありますが、3年間かけてしっかりとチームを作ってメダルを獲ることがチームとしての目的、目標です。
個人的なものとしては、この腕に五輪のタトゥーを刻んでいるのは、最大の目標に挑んでいくと決めたからです。挑戦すればチャンスはありますが、失敗することもあります。実際に私は何度も失敗を経験してきました。
――応援してくれているファンの方にメッセージをお願いします。
チームは新しく、私も新任です。もちろん勝ち負けはありますが、最初は熱量やエナジーを持って取り組む姿勢を見せていきたいです。勝利は後からついてくるものだと思っているので、長い目で見守っていただきたいです。

クラブ公式サイト
https://vcnagano.jp/
SVリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/sv_men/team/detail/461




















