中村敦新監督のもと「改革元年」へ “たくましさ”を育んで中位進出を狙う

「改革元年」。AC長野パルセイロ・レディース運営会社の澁谷泰宏代表取締役社長は、WEリーグで最下位に終わった昨季を踏まえ、2026/27シーズンをそう位置付けた。昨年までブータンの男子代表を率いていた中村敦監督を招へいし、女獅子たちはどう生まれ変わるのか。26年7月1日に始動した新チームの模様と、再建へのロードマップを紐解く。

文:田中 紘夢

国内外での経験を評価して招へい
サッカー途上国でも発展に寄与

6月29日に行われた中村敦監督の就任記者会見。澁谷社長は招へいの理由として、中村監督が「さまざまな経験の持ち主である」ことを強調した。

兵庫県出身の52歳。国内では奈良クラブ(当時JFL)、栃木シティFC(同関東1部)とアマチュアクラブを率いた。海外でもブータン代表をはじめ4カ国のチームを指揮し、アカデミーや世代別代表の監督も歴任。豊富な経験を持つ。

強化責任者の西山哲平スポーツダイレクター(SD)は、「発展途上のグループを向上させてきた」ことも評価する。タイ、ブータン、中国、インド――。東南アジアのサッカー途上国において、必ずしも恵まれていない環境でチームを作り上げてきた。

それはAC長野にもある程度は当てはまるかもしれない。親会社がない市民クラブ。J3リーグのトップチームも含めて経営規模は小さく、広い視野で見た場合に成長の余地は大きい。そんな環境にも適応できると見込んで、中村監督を招へいするに至った。

「私が今までやってきたのは、J1のすごくお金のあるチームだとか、そういうところではない。(その経験も)逆にこのクラブにとっては、プラスに働くんじゃないか」。そう本人も前向きに捉えている。

少人数で始動も指揮官は問題なし
「楽しくやろう」と場を和ませる

今オフには10人がチームを離れ、新加入のリリースは始動時点で2人のみだった。7月1日の始動日のトレーニングは、ケガ人を除けば総勢20人。紅白戦もできない状況での船出となったが、中村監督は大きな問題とは捉えていない。

「正直、僕は人数が少ないほうがやりやすい。選手が多ければ多いほど、僕だったりコーチからの目が薄くなってしまうし、逆に少ないほうが集中的に見られる。それによって一人ひとりの個性を早く把握して鍛えられる」

海外でも言葉の壁をはじめ、さまざまな環境の障壁を乗り越えてきた。まだスタッフも揃っていない状況だが、選手と積極的にコミュニケーションを図り、距離を縮めようとする様子が見受けられる。

女子チームの指導は初めてだが、最初のミーティングでは「楽しくやろうよ」「僕のほうがビビってますよ」と言って場を和ませた。

グラウンドに降りた選手たちは、いきなりのフィジカルテストに「キツい」と顔をしかめながらも、それ以外は終始リラックスした表情。指揮官は「みんな明るくて元気がよかった。雰囲気がいいな」と頬を緩ませた。

昨季のキャプテンを務めたMF稲村雪乃は「話しやすい監督だと感じる。いろいろ手探りな部分もあると思うので、自分たちからも発信していけたら」と共闘を誓う。FW川船暁海、MF菊池まりあら主力が流出した中で、個の力不足を組織で補う必要はあるだろう。

走り続けるのは「最低限の義務」
クラブ一体となってたくましさを

改革元年となる今季。西山SDがテーマに掲げたのは「たくましさ」だ。

まずは走力や強度といった戦う土台を作り、その上で戦術を落とし込めるか。中村監督は「とにかく95分間(90分+アディショナルタイム)走り続けること。それが応援してくれるサポーターやスポンサーに対して最低限の義務」と力を込める。

初日に行ったフィジカルテストも、「どれくらい走れるのか」「オフの間にどれだけ準備してきたのか」を見極めるため。練習後も近隣のジムに移動して筋力を確かめた。今季はよりアスリート的な能力が求められそうだ。

サッカーにおいて指揮官が重んじるのは、「トランジション」の局面。ボールを奪ったときや失った後に、いかに素早く切り替えるか。それこそが走力の見せどころだ。まずは守備の基盤を固め、ボールを奪った後のトランジションから良い攻撃に繋げる算段でいる。

昨季はリーグ最下位に終わり、得点と失点もワースト。今季は中位という現実的な目標を見据え、中村監督のもとでたくましさを磨いているが、“現場任せ”になってしまえば強化は捗らないだろう。

始動日時点での選手数はケガ人も含めて24人と少なく、まだスタッフも揃っていない。西山SDは最終的に27人体制を目論んでいるが、スタートから出遅れたのは否めない。

ただ、主力流出の穴を含め、足りないものを嘆いても仕方がない。そもそも不足があるから「改革元年」と位置付けたものの、指揮官の寛容さや選手の明るさに甘えてしまえば、「改革」はただの「改変」で終わりかねない。

開幕戦は8月22日または23日、アウェイでマイナビ仙台と対戦する。2カ月弱のプレシーズンでどれだけチームビルディングを高められるか。クラブ一体となってたくましさを育む必要がある。


クラブ公式サイト
https://parceiro.co.jp/

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