高さと技術の両立へ トライデンツ新戦力の伊藤洸貴が挑む新シーズン

「VC長野」から「信州松本」にチーム名が変わる来季に向けて、SVリーグ男子のトライデンツに頼もしい新戦力が加わる。2026年6月19日にはセッターの伊藤洸貴がチームに合流。ブルガリアでのプレー経験もある27歳は、身長190cmの高さを生かしたセットアップが持ち味だ。高さと攻撃力、さらには技術と守備力も追求する期待の新戦力に意気込みを聞いた。
取材:大枝 史
KINGDOM パートナー
山々に囲まれたブルガリア
バレーボールに打ち込んだ日々
――まずは移籍の経緯を教えてください。
海外で1年やっていたのですが、そのあとSVリーグに行くチャンスがなかったので、「一度日本のリーグでプレーをしよう」ということで去年は(Vリーグの)奈良を選びました。
(トライデンツには)去年も自分からアプローチはしていたのですが、なかなかチャンスがなかったです。その中で今回お話をいただいて、受け入れてもらえることになりました。
――当時V1の大分三好ヴァイセアドラーからブルガリアに渡りました。
(活動休止のため)チームがなくなってしまうタイミングで移籍先を探している中で、ブルガリアのチームからお話をいただきました。一度海外のバレーボールを体感してみたい思いもありました。ブルガリアは近年ネーションズリーグでも上位にくるように国として強くなっていたので、そこでできるなら…というところで選びました。

――ブルガリアの生活はいかがでしたか?
僕がいた(VC)モンタナというチームは山に囲まれていて、長野みたいな感じでした。
どこに行くにしても山を越えなければいけなくて、僕は車を持っていなかったので、本当にバレーボールだけをする環境でした。
コートに入ると身長190cmの僕が一番小さかったです。それぐらい規格外の体格の人たちがたくさんいる中でプレーしました。
外国人のスパイクに対しても自分のディフェンスは通用すると思った反面、体格負けすることもありました。
そこを強化しようとトレーニングしていて、バレーボールに打ち込める最高の環境ではありました。
――身体がガッシリしている印象を受けましたが、鍛えてきた成果ですか?
大学からトレーニングはずっとやっていました。大分三好に行ってからは仕事をしながらバレーボールをする環境で全体的に落ちてしまった部分はありましたが、そこから海外に行ってもう一回鍛え直しました。
去年もそれを継続していました。

KINGDOM パートナー
柳田将洋に憧れて
小岩クラブでの原点
――バレーボールを始めたきっかけを教えてください。
姉がバレーボールをやっていて、小学校3年生の時に姉の中学校がバレーボール教室の手伝いをやっていました。元全日本女子の三屋裕子さんが主催のバレーボール教室に参加した時に、三屋さんからいただいた「君、センスあるね」という一言で調子に乗ったというか。それで「バレーボール楽しいな」と思いました。
それまではサッカーをやっていましたが、サッカーは人数も多いのでなかなかボールを触る機会もありません。バレーボールだったら6人しかいないし、ボールを触る回数が増えます。
バレーボールに興味はあったのですが、踏み出すタイミングがなかった中で、三屋さんの一言で「バレーボールやってみよう」となりました。そこから地元のバレーボールチームに入って小学校4年生の時に始めました。
――当時を振り返ってどんな思い出がありますか?
柳田将洋さん(東京GB)や柳田百織さん(富士通)を輩出した小岩クラブというチームでプレーしました。
マサさん(柳田将洋)が高校生の時にはチームに帰ってきて教えてもらうこともあって、一番身近で輝いていた存在でした。憧れの選手はマサさんでした。

――中学に進んでからはいかがでしたか?
中学校は駿台学園に進みました。
藤原(奨太)さんと瑛亮さん(安田瑛亮コーチ)が一緒で、瑛亮さんは同じ小学校で実家も近いです。家族ぐるみで仲良くさせてもらっていて、姉同士も同級生でした。
――中学、高校での思い出はありますか?
怒られていた印象が多いです。
瑛亮さんは考えてバレーボールをする先輩で、変なプレーを少ししただけで「なんでそんなプレーするんだ」と怒られていたことが多かったです。何の意図もないプレーをすると怒られていましたね。

PROFILE
伊藤 洸貴(いとう・ひろき)1999年6月26日生まれ、東京都出身。駿台学園高から中央大学を経て、2022年に大分三好ヴァイセアドラーに入団。24年には海をわたり、ブルガリアのVCモンタナでプレー。SVリーグでプレーすることを目標に、25年は奈良ドリーマーズに入団し全試合に出場した。26年に信州松本トライデンツへ加入。身長190cmの高さからセットするクイックやレシーブ力が武器のセッター。190cm、84kg。
突然のセッターに転向
そこで見つけた楽しさ
――中央大学へ進みましたが、大学生活はいかがでしたか?
中大はより重点的に筋力トレーニングをする大学でした。
技術アップというよりは身体能力の向上を感じた4年間でした。最高到達点が上がったり、ボールに対するパワーやサーブのスピードが上がったり。色々な変化がありました。
その中でアンダーカテゴリーの代表に呼んでもらって、そこで海外の選手を見ることもできて、海外に行きたいという思いが強くなりました。中大に行っていなかったらブルガリアにも行っていなかったかもしれません。
――アンダーカテゴリーに呼ばれたのは何年生でしたか?
大学1年生の時にU-21に呼ばれました。ただ、その時はアウトサイドヒッター(OH)でした。
セッターを始めたのは大学2年の夏です。
――セッターに転向したきっかけを教えてください。
東日本インカレの前に正セッターが2人ともケガをしてしまって、急きょセッターが必要になりました。僕は高校の時にツーセッターで少しやっていたこともあって、監督の中でハマったのかわからないですが「東日本インカレ(はセッターで)いこうか」と言われてやりました。東日本インカレで3位という結構良い成績になって、僕としてもセッターが楽しいと思いました。
アタッカーだと(ボールが)上がってこないこともありますが、セッターは常にボールが触れるし、セッターの楽しさに気付きました。

――高身長は武器になると思いますが、ご自身のストロングポイントはどのように捉えていますか?
僕はミドルブロッカー(MB)を使うのが好きなセッターで、自分のセットアップの位置からMBで速い攻撃を展開することです。
海外に行って自信になったのはディフェンス力です。身長が高い人はレシーブができないというイメージを持たれがちですが、僕はそこが自分の強みだと思っています。
――高さがあればツーアタックやブロックで強みを生かしやすいのではないでしょうか?
海外に行くまでは(ツーアタックを)なかなかやらないセッターで、堅いバレーボールをしていました。
海外に行ってチームメイトから「なんでその身長で打たないの?」と言われて、自分の中で答えがなくて、確かになんで打たないんだろう…という感じでした。
その中で世界のバレーボールを見ていて、イタリアの(シモーネ・)ジャネッリ選手(シル・スーサ・ヴィム・ペルージャ)やブルガリアの(シメオン・)ニコロフ選手(Lokomotiv Novosibirsk)のプレーを見た時に、セッターも攻めていいんだな…と思いました。去年のSVリーグを見ていて、ブリザール選手(大阪B)の圧倒的な攻撃力は一つの武器で、やっている相手は嫌だろうと思って、去年は攻撃の練習はしていました。
――目標にしている選手はいますか?
ジャネッリ選手とブリザール選手は参考にしているというか、見ていて「このプレーやってみたいな」と自分の新たな知識として取り入れるようにしています。

経験を力に変えて
「期待裏切らないシーズンに」
――新たに迎える26-27シーズンはどのようなシーズンにしたいですか?
僕はSVリーグが初めてですが、大分三好の時に戦ってきた選手たちではあります。
まずはスタメンを取ることを第一目標に、海外や日本国内のトップ選手たちが相手ブロッカーにいる中で、そのブロックをどう切り崩していくのか。頭を使いながらバレーボールをしていきたいです。
チームとして目指しているトップ6(レギュラーシーズン6位以内)、その目標が達成できた時にコートに立っている一人でありたいと思っています。

――その目標に向かって、このチームで何を鍛えていきたいですか?
トスの精度向上です。日本の長身セッターは「高さがあってもトスの精度が…」とよく言われています。
小さいセッターがこれから高さをつけるのは難しいと思いますが、大きいセッターがこれから技術を身につけることは可能性があります。
今回はSTINGS愛知でやっていた小林光輝さんがセッターコーチに入ってくれているので、トスを教えてもらって精度を身につけて、関田誠大さん(サントリー)のような精度でトスを上げつつ、外国人のような高さのあるセッターになれればいいと思います。
――藤原選手と安田コーチとの繋がりに加えて、安部翔大選手も大分三好では同期入団です。やりやすさもありますか?
やりやすさはありますが、逆にそこの雰囲気に入り込みたくないというか、馴れ合いではやりたくありません。
しっかり指摘するところは指摘し合いたいですし、安田コーチも自分の中で追い込めていない時にはっきりと言えるようなタイプの人なので、そこで「もう一度頑張ろう」となれます。バレーボールに対しては本当にすごい人です。

――良いシーズンにしたいですね。
チームとして変化の年だと思います。外国籍選手をたくさん取っている中で、その1人に選んでもらえたことがまず嬉しいですし、その期待を裏切らないシーズンにしたいと思います。

クラブ公式サイト
https://vcnagano.jp/
SVリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/sv_men/team/detail/461



















