“不運”も乗り越え連敗ストップ チーム最年少の稲葉琥太郎が奮闘

たかが勝ち点1、されど勝ち点1――。開幕8連敗でF1リーグ最下位に沈むボアルース長野が、悪い流れに歯止めをかけた。ホームのホワイトリングにフウガドールすみだを迎えた第9節。打ち合いの末に4-4で引き分け、開幕からの連敗をストップした。不運な判定に泣き、退場者を出しながらも、若手の奮起もあって息を吹き返した。勝ち点獲得に一役買ったチーム最年少の20歳、稲葉琥太郎の声も交え、死に物狂いでつかんだ勝ち点1の意義を考察する。

文:田中 紘夢

不運な判定で失点と退場
「ストレスも大きかったが…」

40分間の試合の中で、幸運にも不運にも出くわした。

0-1で迎えた19分。フウガドールすみだはゴールクリアランス(サッカーのゴールキックに相当)から試合再開も、GKにバックパスしてファウルを取られる。ゴールクリアランスをしたのち、相手がボールに触れる前にGKへパスを返すのは反則だ。

これによってボアルースはゴールライン上での間接FKを獲得。田中智基のリスタートから上林快人の得点へとつなげた。

運も味方につけたボアルースは、2-1と逆転してハーフタイムへ。このまま初勝利に向かいたいところだったが、第2ピリオドは思わぬ形で運に見放される。

25分。上林がキックインから試合再開も、ボールは目前でパスコースを妨害した相手にカットされる。競技規定上では5m以上離れなければいけないルールだが、無情にもやり直しの笛は鳴らず。そのまま数的不利のカウンターを受けて失点した。

それだけでなく、異議を唱えた高溝黎磨がレッドカードで退場となった。一時的に数的不利を強いられると、1分後にも再び失点。2-3と再び勝ち越された。

不満は募るばかりだが、まだ試合時間は15分ほど残っている。ホームに集った1,038人の観衆を前にして、崩れるわけにはいかない――。キャプテンマークを巻く米村尚也を中心に、チームは立ち上がった。

「この試合に限らず、自分たちの思うような展開にならないことはある。今日で言えば外的要因のストレスも大きかった中で、それでも自分たちに矢印を向けないといけない」

若手が勢いをもたらし形成逆転
「不退転」のスローガンを体現

チームに活力を与えたのは、ポイント起用される若手の面々だ。

27分には右サイドでこぼれ球を拾った稲葉琥太郎が右足一閃。ボールは枠の左に外れたが、ファーに詰めていた三笠貴史の足元へ。三笠が鮮やかなバックヒールで決めた。

「あの時間帯は迷わずシュートを打とうと思っていたので、考えることなく振り抜いた」と稲葉。チーム最年少の思い切りの良さが同点弾を呼び込んだ。

35分には23歳の外林綾吾が前線からプレスをかけ、相手のパスミスを誘発。ガリンシャが得意の左足で確実に仕留めた。

「石川(昇永)や大橋(広弥)も出てきた中で、チームに勢いをもたらしてくれた」と32歳の米村。若手の奮起もあって失いかけた流れを取り戻し、4-3と逆転に成功した。

最後はすみだのパワープレー(GKをフィールドプレーヤーに代えての全員攻撃)に屈して同点に追いつかれたが、「不可抗力もあった中でよく一度は逆転した。精神力の強さを見せてくれた」と山蔦一弘監督は選手たちを称える。

逆境から立ち上がる姿は、「不退転」というスローガンにふさわしかった。

最年少の稲葉が示す覚悟
敵地で首位との真っ向勝負へ

「難しいことは監督とかベテランの選手が考えてくれる。その中で僕は運動量を出したり、球際で負けないようにしないと、チームが苦しくなる。自分の役割に集中しようとしていた」

三笠のゴールをアシストした稲葉は、無我夢中にボールを追い続けた。

同じアラ(サッカーのサイドハーフに相当)を担う宇野伊織の負傷を受け、第7節のバサジィ大分戦からメンバー入り。持ち前の運動量や守備の強度を生かし、テクニシャンの宇野とは異なる色を発揮している。

今季はセカンドチームのヴェルメリオに所属し、特別指定選手としてトップチームにも参加。昨季はトップチームに登録されていたため、“降格”を味わったことになるが、「それでもクラブは見捨てずに成長を見守ってくれた」。その期待に応える覚悟は強い。

指揮官も「ポテンシャルはもともと高い」と評する20歳。高校時代にデレヤオーネ愛知で自重トレーニングに励み、当たり負けない体を作り上げてきた。国内最高峰のF1の舞台でも臆せず戦い、自信を深めつつある。

稲葉に限らず、今季は活きの良い若手が多くいる。不運に見舞われる中でも彼らが奮起し、今季初の勝ち点を得られたのは、チームの成長の証でもある。

次節は8月2日、アウェイで首位の名古屋オーシャンズと戦う。愛知県出身の稲葉は「日本を代表するチームと戦えるのは貴重な経験。真っ向からぶつかって良い結果を持ち帰りたい」と勝利に飢える。何度転んでも立ち上がり、紅き血を燃やすのみだ。


クラブ公式サイト
https://boaluz-nagano.com/
Fリーグ チーム紹介ページ
https://www.fleague.jp/club/nagano/

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