8月は“全セット制覇” トライデンツが育む勝者のメンタリティ

新監督の下で勝利へのこだわりと実戦を想定した準備を積み上げている。SVリーグ男子の信州松本トライデンツは、10月の開幕に向けてトーマス・ラーナー監督による強化が着々と進む。緊張感の中で集中力を発揮し、チーム全体で共通認識を持ってプレーする姿勢が鮮明で、8月の練習試合は1セットも落とすことなく全勝。勝てる集団へと変化しつつある。チームの現在地を探った。
文:大枝 史
KINGDOM パートナー
実戦を想定した集中力
勝ちへのこだわりが生む緊張感
8月24日に行われた明治大学との公開練習試合は全4セットで行われた。

第3セットまで連取して迎えた第4セットは、22-23と1点を追いかける状況。相手にサイドアウトを取られれば24点目が入り、セットポイントを握られる場面だ。
サーブに向かうのは、この日24歳の誕生日を迎えたアウトサイドヒッター(OH)一条太嘉丸。「プレッシャーが半端なかった。ミスしないように、とにかく(サーブの)トスを高く上げようと意識した」と振り返る。

狙いを持って一条が放ったサーブから、相手のクイックがアウトになり23-23。次のサーブでは大きく崩し、ネットを越えてきたボールをOH藤原奨太がダイレクトで叩き込んで24-23とし、先にセットポイントを握った。続くサーブでも相手を崩し、最後は3枚ブロックでシャットアウト。接戦を取り切った。

この一戦を含め、8月の練習試合で落としたセットは一つもなかった。立教大学、VC山梨、天理大学、専修大学、明治大学。相手を変えながら延べ7日間、全てのセットを取り切った。

トーマス・ラーナー監督がチームに合流して1週間後の8月11日に行われた立教大学との練習試合。
コンビ練習があまりできていない状況で、セッター(S)伊藤洸貴はトスを分散してチームメイトと合わせていく選択をした。その選択に対して、指揮官から「どうして相手の弱いところを突き続けないのか」と声が掛けられた。

身長差で優位に立てる相手に対して、勝つための選択を求められた。
伊藤は「確かにそうかな…と思う。楽しめればいいとか、合わせるようにとかではなくて、やるからにはまず勝つこと」と受け止める。

日頃の練習から、指揮官は一貫して実戦を想定したプレーを要求する。各々の課題と向き合いながらも、勝利にこだわる。試合中に見つかった課題は練習でクリアにしていく。
一条が「自分が出ているセットで落としたら嫌だし…」と明治大学との試合後に話したように、勝ちにこだわるからこそプレッシャーが生まれる。その緊張感の中で高い集中力を発揮できる取り組みを続け、勝てる集団をつくり始めている。

KINGDOM パートナー
OH藤原奨太が示す成長
チーム一丸で準備したプレー
練習試合で存在感が際立っていたのが藤原だ。
8月14日に行われた専修大学との練習試合では、相手のスパイクを連続してディグで上げたり、コンパクトなスイングからは想像もつかないような乾いた打球音で強烈なスパイクを決めたり。攻守にわたって力強いプレーを披露した。

昨シーズンはリベロで起用されたことがあったように、ディフェンス力に定評がある藤原は「自分が求められているのはディフェンスなので、(ディグで)上げられたことはすごく良かった」とうなずく。
攻撃面では、昨季の終盤戦で見せた速い展開を継続。「専修大学のように背の高い相手でも、攻撃を速くして(相手を)遅らせたブロックの間や脇は通用した」と手応えを口にする。

速く、鋭いスパイクを何度も決めていた藤原だが、「ボブ(ラーナー監督)は『105%、110%はまだ見ていないよ』と言ってくる。打力が上がってきているとは思っているけれど、もっと頑張りたい」と力を込める。
藤原は8月24日に行われた明治大学との練習試合では、フェイクセット(スパイクを打つように見せかけてトスを上げるプレー)を見せて会場を沸かせた。
そのシーンは、チーム全体が共通認識を持って練習に取り組めている証左にもなる。

8月に合流したミドルブロッカー(MB)デイビッド・スミスとオポジット(OP)フィリップ・ジョンは調整中で、練習試合は日本人のみで選手を入れ替えながら行った。相手の不意を突く藤原の判断にOP岸川蓮樹が応え、しっかりとスパイクに入った。
同じOHの佐藤隆哉は「3年間やってきて、初めてフェイクセットを練習した」と明かす。

属人的ではなく、チーム一丸となって準備してきたプレーだ。
練習から集中力を高め、練習試合でも勝利にこだわる。昨季は5勝39敗と苦しんだチームが、勝ち切ることへ意識を変え始めている。
10月24日に控えるSVリーグ開幕戦に向けて、着々とその準備を進めていく。
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