“力戦奮闘”を続けたシーズンの最終節 無敗優勝でフィナーレを

港町からシャーレを持ち帰り、堂々のフィナーレへ――。17戦無敗でフットサル・F2制覇とF1昇格を決めたボアルース長野。次に挑むのは、12月8日のホーム・最終節での“無敗優勝”だ。それぞれ胸に期す感謝をプレーに乗せ、広島エフ・ドゥを迎える一戦。その中から今回は、復活を遂げた渡辺大輔と岡本生成の2人にフォーカスする。

文:田中 紘夢/編集:大枝 令

古巣に一矢報いた“小さな巨人”
メンバー外から復活を遂げる

「最近はずっと悔しい思いをしてきた。こういう大一番でチームの力になりたかった」

アウェイで優勝を決めた前節・デウソン神戸戦。3-2と競り勝った試合で、長野の1点目を決めたのは岡本だった。

1点ビハインドで迎えた13分15秒。米村尚也が得意のドリブルで3人を引きつけ、岡本がフリーとなる。丁寧な落としを受けると、足裏でのワントラップから右足一閃。これが相手に当たってコースが変わり、ゴールに突き刺さった。

重苦しい空気を打破する同点弾。
それはチームだけでなく、岡本にとってもそうだった。

ポルセイド浜田、パサジィ大分、神戸を経て、長野で4クラブ目。加入2年目の昨季はキャリアハイとなる10ゴールを挙げるなど、ブレイクを遂げたシーズンだった。今季も前半戦は主力として活躍したが、後半戦にかけて失速。「何がダメなのか考えてやっていたけど、何をやってもうまくいかなかった」と思い返す。

「コンディションが上がらなかったし、自分の中で一歩が出ない感覚もあった。昨季はやるべきことをやった中でボールがこぼれてきたりして、ゴールを重ねられたけど、その感覚も忘れていた。結果が出ていないからシュート、シュートとなって、他の部分がおろそかになっていたのかもしれない」

前々節・マルバ水戸戦は今季初のメンバー外。チームの優勝が現実味を帯びてくる中、その重圧も受けて接戦が続く。岡本はチームと自身の停滞感を打破しようと足掻いていたが、なかなか力が及ばなかった。

それでも、切り替えられる要素はあった。

勝てば自力での優勝が決まる神戸戦。相手が2021-22シーズンに在籍した古巣ということもあり、「今日は俺しかいないと思っていた」。

米村のパスを受けると、トラップして迷わず右足を振る。「正直、あまり流れは覚えていない」と笑みをこぼすように、無我夢中で放った得意のシュート。「相手に当たって入ったゴールだけど、気持ちが乗ったと思う」と本人は振り返る。アシストした米村からしても「思い切ってプレーすることは伝えていた。それをゴールに繋げてくれたのは嬉しい」。

第2ピリオドには、第2PKのチャンスもあった。山蔦一弘監督からキッカーを託されたことも、信頼の証と言えるだろう。かつての同僚であるGK江波戸紘之に阻まれたが、「なんとか勝ててよかった」と安堵の表情。161cmの“小さな巨人”が勝利を呼び込み、古巣の地でシャーレを掲げた。

苦難乗り越えた“縁の下の力持ち”
節目の勝利でフィナーレへ

背番号7の岡本が“復活”を遂げた一方、背番号6はメモリアルな一日を過ごした。

優勝を決めた大一番で、渡辺大輔はFリーグ通算100試合出場を達成した。ボルクバレット北九州、広島エフ・ドゥ、長野と渡り歩いた29歳。節目が記念碑的な試合となった。

「あの日から長かった」

渡辺が回顧したのは、2023年2月12日。しながわシティとの入替戦に敗れ、5シーズンぶりの降格が決まった日だ。自身は北九州時代にF1昇格を決めたが、降格を経験したのは初。「落としてしまった責任はあったので、優勝・昇格したい気持ちは強かった」と明かす。

優勝決定戦が自身の節目にも重なり、「持っているな」と白い歯を見せる。とはいえ「100試合はあくまで通過点」。それはF2優勝についても同じで、「その先のF1でしっかり戦えるかどうかが大事」と気を引き締める。

苦悩のシーズンでもあった。
昨季はキャリアハイとなる12ゴールを挙げ、「できすぎていた」と思い起こす。

今季はチームが掲げる「守備から入る形」を体現するものの、後半戦にかけてパフォーマンスが低下。「守備でも貢献できないことが多くて、そうなると自分の存在価値がなくなってしまう」と危機感を抱いた。

それでも選手やスタッフの助けも得ながら、自身にベクトルを向けてきた。終盤戦はチームとして接戦が続く中でも、自身のパフォーマンスは「徐々によくなってきたと思う」。神戸戦でも“縁の下の力持ち”として勝利に貢献した。

100試合の節目を飾り、次節は無敗優勝に向けた最終節。それも2020-21シーズンから2年間在籍した広島との古巣戦だ。

広島は11月26日、今季限りでのFリーグ退会を発表。当日は渡辺にとって29歳の誕生日でもあり、さまざまな思いが錯綜した。

「報道が出たときはショックだったし、『今日か…』というのはあった。だけど僕自身よりも、ファン・サポーターの方々がいろいろ気にかけてくれた。最後に試合ができてよかったと思えるようにしたいし、勝つことが恩返しになると思う」

広島にとってはFリーグ退会を前にして、王者に一泡吹かせたいところだろう。だが、長野にとっても負けられない戦い。前節に“無敗で優勝”を決めたものの、今節は“無敗優勝”が懸かっている。

「ここを乗り越えないといけない。ホームで勝って気持ちよく締めくくりたい」。そう渡辺が言えば、岡本も「まだ終わっていない。もう一回みんなで喜んで、『良い1年だった』と振り返られるようにしたい」と力を込める。

今季のスローガンは「力戦奮闘 FIGHT ON」。力の限り戦い抜き、ことぶきアリーナ千曲を歓喜の渦に巻き込む。


F2リーグ 広島エフ・ドゥ戦(12月8日)ホームゲーム情報
https://teket.jp/10237/43177
チーム公式サイト
https://boaluz-nagano.com/
Fリーグ チーム紹介ページ
https://www.fleague.jp/club/nagano/

LINE友だち登録で
新着記事をいち早くチェック!

会員登録して
お気に入りチームをもっと見やすく