子どもたちの背中を押す“青信号” 3×3を通じたSAKU REGIONの地域貢献とは

2025年8月17日、佐久市総合体育館でSAKU REGION POWERSのホームゲームが開催された。バスケットボール女子3×3の大会。スクールで教えている子どもたちも含め、一年に一度のイベントに多くのファンが駆けつけた。その会場で見せたパフォーマンスと、彼女たちの思いは――。オーナー兼選手の神矢美月への取材を中心に記していく。

文:芋川 史貴/編集:大枝 令

子どもたちの声援を力に変えて
子どもたちにプレーで示す

体育館内に設置された3×3の特設コート。

試合を前に各チームの選手たちがウォーミングアップを開始する。

普段から聞き慣れている音とは異なり、やや低い音が耳に届いてきた。それもそのはず。コートの材質も異なれば、ボールも異なる。ストリート文化発祥ならではのクールさが目の前に広がっていた。

今大会は6ラウンドでシーズンが構成されている3XS(トライクロス)リーグ「WOMAN DIVISION」のRound.4。リーグに所属するSAKU REGION POWERSのホームに全9チームが集まって火花を散らした。

3チーム×3組によるプールラウンドを行い、それぞれのグループでの1位とその3チームを抜いた中で上位の成績を残したチームが、決勝ラウンドに進出してトーナメントを戦う。

試合時間が1試合10分で行われることや、その中でも21得点を先取したチームが勝利するというコンパクトなルールであることから、1日を通して合計12試合もの試合数を繰り広げられるのは3×3の魅力だ。

ホームチームであるSAKU REIGIO POWERSはこの日、プールラウンドを2勝で突破して決勝ラウンドに進出。セミファイナルで惜しくも敗れるも、現地のファンや、子どもたちからは多くの声援が届けられていた。

チームオーナー兼選手の神矢美月はその声援を受け、感謝を口にする。

「ホームならではの強さを私自身も痛感した。子どもたちの声がすぐ届いて、それが力になっていく。選手みんなにも届いて勝つことができたと感じている」

3×3の醍醐味は選手と観客の近さにもある。

手の届く範囲に選手がいてダイレクトに声を届けられるし、選手たちもすぐに反応して手を振ったり、活力をもらうこともできる。

「年に1回のホームゲームで私たちの姿を見てもらって、子どもたちにも私たちのプレーを感じ取ってほしい。そして私たちも子どもたちの声援を力に変えて、プレーで返していきたいというホームならではのものを感じた」

地方から全世界へ発信する思い
「地方でもうまい選手はいる」

SAKU REGIONは2022年に設立。現在は今大会の3XSのリーグと、3×3.EXE PREMIERの2つのリーグに参戦している。

3XSには「SAKU REGION POWERS」、3×3.EXE PREMIERには「SHINSHU SAKU REGION.EXE」というチーム名で参戦し、世界への切符を目指してシーズンに挑んでいる。

このチームを立ち上げた背景を尋ねた。

「『SAKU REGION』はダブルオーナーで、私が佐久に来た時からお世話になった方に『3人制にチャレンジしてみないか』と声をかけていただいた。そこからこの競技にも慣れ始めて、『ここまでやるのならプロチームを作らないか』と話をいただいた」

「佐久市にはプロチームがそもそもないし、女子のプロチームも少ない。『それじゃあこの佐久で3×3のプロチームを作ろう』ということで、始めて3年目になる」

長野市出身の神矢。小学5年生から川中島籠球ミニバスで競技を始め、更北中、文化学園長野高、長野大(上田市)と歴を重ねて今年で20年目になる。

どのような思いがプロ設立の道を後押ししたのだろうか。

「バスケットが強いイメージはやっぱり関東の方面にあって、こういう地方はあまり注目されないことが多い。それでも『地方でもこれだけうまい子が眠っている』ということを、私たちは体現して発信していく」

「スクールもやっているけど、そういう子たちをロールモデルとして、『自分たちが最先端で行動していこう』と立ち上げた」

平日は会社員をしながら、仕事の後に練習やスクール活動に励み、休日はプロとして全国で行われる試合に参加する。

この忙しさすら神矢は楽しんでいた。

「3×3のある意味醍醐味はハードスケジュールなところ。3×3のプロ選手は今で言う『デュアルキャリア』。この忙しさが楽しさでもあると感じている」

完全なプロではないからこそ、その生き様は“身近な事例”として子どもたちに夢を与え、多くの選手の背中を押す。会場に集まった子どもたちの顔を見れば、どれだけの影響力を持っているかは一目瞭然だった。

身近でプロに教えてもらえる環境
地域を循環させる“熱”と“思い”

レギュラーシーズンが5〜12月の3XSは残り2ラウンド、5〜8月の3×3.EXE PREMIERは残り1ラウンドを残すのみとどちらのシーズンも佳境を迎えている。

現在SAKU REGIONはどちらのリーグでも順位を中位につけている。

5人制を長く経験してきた神矢にとって3×3の魅力はどこに感じているのだろうか。

「10分1本で勝負が決まってしまう。選手がそこに懸ける思いを、選手と観客の距離が近いこともあって肌で感じられるのが魅力だと私は思う」

呼吸を忘れてしまうぐらいの展開の速さ。息を飲み込んでしまうほどの攻守のやり合い。限られたスペースで飛び出す数々のハイライト級のプレーたち。

無駄のないゲーム展開だ。しかし、一つ一つのプレーには素早いコミュニケーションが行われ、時にはあうんの呼吸でボールを繋ぎ、ゴールを奪う。

観客席に飛び込みながらもルーズボールを追いかけ、命を懸けているかのようにハードにディフェンスをする。

スポーツの楽しさや魅力の全てが小さなコートに凝縮されていた。

神矢もチームの柱として数々の活躍を披露し、会場を沸かせていた。その姿は惹きつけられるものがあり、ただバスケットをプレーするのではなく、その一挙手一投足に強い思いを感じるプレーだった。

「自分が小学校の時にない環境を作りたいと思った。身近でプロ選手に教えてもらう環境をこの佐久で作って3×3を発信していきたいという思いでやっているので、それが本当に力になっている」

「そしてこの子たちが『いつか花を咲かせるんじゃないか』という思いでやっているので、ある意味趣味の一環かもしれないけど、そういうことにも期待しちゃっている。それがSAKU REGIONが掲げる地域貢献の一つかなと思う」

日々のスクール活動で教えてもらっているコーチが全力でプレーする姿は、子どもたちも感じたものがたくさんあったはずだ。

決して輝いている姿だけを見せているのではない。勝負事には勝ち負けがあり、負ける時の方が多いこともある。だからと言って、それは挑戦しない理由にはならない。

その厳しさも、負けから強くなる成長の姿もSAKU REGIONの選手たちは子どもたちに届けている。

セミファイナルで敗退した後には、子どもたちの方から選手へ駆け寄り、話す姿が見られた。例え負けたとしても、選手たちは子どもたちにとってのヒーローなのだ。

この循環こそが地域貢献であり、活性化の一翼を担う姿でもある。

チームカラーを緑とするSAKU REGION。子どもたちのチャレンジを後押しする“青信号”として、今後も県内の子どもたちやバスケットボールプレーヤーに多くの夢と希望を与えるのだろう。


クラブ公式サイト
https://www.39region.com/
チーム紹介ページ(3x3EXE.PREMIER)
https://3x3exe.com/premier/teams/team-detail/?n=814

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