臙脂をまとう若き戦士の出陣 新生・VC長野が“満腔の気概”示す開幕節へ

VC長野トライデンツはSVリーグ初年度となる昨シーズン、掲げた10勝の目標を達成した。しかし最終節では「課題を多く残した」と振り返った川村慎二監督。新生VC長野はどのようにその課題と向き合い、2025-26シーズンを迎えるのか。2025年10月17-18日に行われた東京GBとのトレーニングマッチを振り返りながら、10月25-26日に行う日鉄堺BZとの開幕節を展望する。

文:大枝 史 /編集:大枝 令

トレーニングマッチで得た手応え
それぞれの役割を果たして善戦

SVリーグ開幕1週間前。10月17-18日の2日間、東京GBとのトレーニングマッチが長野県内で行われた。

結果はセットカウント2-2、1-3。成果と課題が見える、収穫のあるゲームとなった。

「一人一人が役割を再認識している」。川村慎二監督がそう話すように、その姿勢は随所に見られた。

例えば1日目の第1セット、24-21とセットポイントを握ったシーン。リリーフサーバーで登場したオポジット(OP)飯田孝雅。

左腕から放たれた強いサーブは相手を弾いて自陣に返り、ミドルブロッカー(MB)安部翔大がダイレクトでアタックを決めてセットを取り切った。

同じくリリーフサーバーで登場したOP酒井秀輔も第3セットでサービスエース取るなど、持ち味をアピールした。

セッター(S)の中島健斗は今シーズンのチームについて、「外国籍選手が入って、レフト側の攻撃力は昨シーズンよりも上がっている」と話す。

高さのあるアウトサイドヒッター(OH)オスカー・マドセンの加入に伴い、パイプ攻撃も攻撃の軸として使うことができる。OHファルハン・ハリムは強いサーブだけではなく、2段トスからブロックアウトを取る巧みさも披露した。

OPマシュー・ニーブスの最高到達点374cmはリーグ3位の数値。圧倒的な高さから右腕を鞭のようにしならせ、アタックを決め切る強さを持つ。

それぞれ強みを持つ外国籍選手3人が早めにチームに合流したことは大きな意味がある。コミュニケーションを深め、連係をより密にしてきた。

「意思疎通がないとバレーボールはうまくいかない。今年はシーズンオフから毎日欠かさず6対6をやっていたから、それなりに形にはなってきている」

古田博幸コーチが話すように、シーズンオフのトレーニングを今年は変更。ボールトレーニングの開始も例年より早めた。

チームの完成度はリーグが開幕してから修正を繰り返す必要もあるが、連係面での積み上げは決して少なくはない。こうした積み重ねが、一定の手応えに繋がった。

若きチームに闘志を吹き込む
紅顔のコートキャプテンの思い

課題は、1日目に善戦したことで浮き彫りになった。

「本当に勝ちたいんだったら、もっと真剣にならないといけない。『いけるんじゃ?』と慢心したらダメ。弱いんだから、僕らは。全然できていない」

17日のトレーニングマッチ終了後、指揮官は危機感をあらわにした。

その言葉通り、2日目の18日はセットカウント1-3。内容も1日目と比べて良いところは少なかった。

「相手のサーブにリズムを変えられた。それが経験の差で、勝ち方。うちは同じことを2日連続でやるからダメ。裏をかくとか、駆け引きをやっていかないと」

古田コーチはそう話す。それはチームが若いがゆえの課題の一つでもある。

昨シーズンは10勝を挙げたものの、まだ”勝ち方”が明確になっているわけではない。ましてや今季は新しいチームでもある。

「どういう状況でも全力を出し切れるかどうか。どれだけエナジーを出して、『絶対に勝つぞ』という気持ちで行っているか。それが出なかったらこれからも負ける」

指揮官はメンタル面の課題を口にする。

その部分でカギになりそうなのは、コートキャプテンに任命されたオスカーだ。「プロとしてすごく頑張ってやってくれているので、チームとしてかなりプラスになっている」と指揮官も信頼を寄せる。

顔が紅潮するほどコート内で吠え、仲間を鼓舞するオスカー。話を聞くと、同じ課題を挙げた。

「アスリートとして大事な6つのうち、技術、戦術、フィジカルは良い感じにできていて、ヨーロッパリーグと比べてもクオリティは高い。あとは精神的な部分、論理的な思考、そして気持ち。それがここという場面で足りないと思う」

2日目の試合後、MB山田航旗も「個人の気持ちの持って行き方がシーズン1週間前なのにできていなかった」と話しており、1週間での奮起を誓う。

「絶対に勝つ」という強い気持ち。それがコートで表現できた時、新たなVC長野のピースがパチリとハマる。

勝負を分ける要素はサーブ
強靭なメンタルで攻撃的に

強い気持ちはとりわけ、サーブに宿る。1日目の第2セット。20-22とビハインドの局面でオスカーが攻撃的な強いサーブを放ち、サービスエースを取った。

その強靭なメンタルについて尋ねると、「自分にプレッシャーをかけて、同じシチュエーションをイメージして繰り返し練習すること」と答える。

そのハードサーブには明確に強い意志が表れている。

「サーブは唯一、バレーボールの中で自分だけのプレー。だからサーブは自分がどういう人なのかとか、自分はこうあるべきというのが出る」

「それは精神的な状態が一番表れるプレーでもある。自分が『できる』と信じていればサービスエースが取れるし、少しでも迷いや恐れがあれば変なサーブになる」

サーブは自分を表現するプレーだ――と話すオスカー。

昨シーズンの第13節GAME1。WD名古屋とフルセットの激闘を制した1戦を思い返せば、25-24のマッチポイントでサーブに向かったOH工藤有史は「ここで決めたらおいしいな」と笑っていた。

プレッシャーを跳ね除け、強いサーブをどれだけ入れることができるかは勝敗に直結する。古田コーチも「今のバレーボールはサーブがカギ。サーブの良いチームが勝率は高くなる」と重要性を説く。

今シーズン、チームで目標に掲げたサーブ効果率は10%だ。

その数字を昨シーズンのSVリーグに照らし合わせると、WD名古屋(11.8%)、サントリー(10.3%)の2チームしかクリアしていない。VC長野は6.8%で9位だった。

チーム内トップの工藤でも9.8%だったことを考慮すれば、高い水準の目標ではある。しかしその数字に近づけば近づくほど、必然的に勝利も近づく。

10月25-26日、ホームのエア・ウォーターアリーナ松本で2025-26シーズンが開幕する。相手は日鉄堺BZ。昨シーズンの対戦成績は4戦0勝となっており、一度も勝利したことのない難敵を迎え撃つ。

指揮官が求める「絶対に勝つ」という満腔の気概。オスカーが体現する攻めるサーブ。ファンの後押しを受けながら、臙脂色の戦士たちが熱戦の火蓋を切って落とす。


SVリーグ第1節 日本製鉄堺ブレイザーズ戦 試合情報
https://vcnagano.jp/match/2025-2026-sv-div1-1
クラブ公式サイト
https://vcnagano.jp/
SVリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/sv_men/team/detail/461

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