名将たちの教えを胸に AC長野U-18・水本裕貴監督はJでの指揮を夢見る

イビチャ・オシム、森保一、反町康治…。数々の名将から薫陶を受けたサッカー元日本代表DFが、長野県で新たな一歩を踏み出した。今季からAC長野パルセイロU-18の指揮官に就いた水本裕貴監督。指導者として歩み始めて4年目での監督初挑戦。40歳の指導者が描く未来図は――。2019年には当時J1の松本山雅FCでもプレーした水本監督に、指導理念や長野への思いについて聞いた。

文:田中 紘夢


かつての同僚から届いたオファー
「まずは育成年代でチャレンジ」

J1通算416試合に出場。サンフレッチェ広島ではセンターバックとして黄金期を支え、在籍した8年半でクラブを3度もJ1の頂点に押し上げた。反町康治監督が率いた2008年の北京五輪出場を経てA代表も経験。19年間の現役生活は輝かしい実績を誇る。

37歳で現役引退して指導者の道へ。いつかはトップチームの監督に就くことを視野に、横浜FCのスクールコーチや現役最後を過ごしたJ3相模原のコーチなどで経験値を積んできた。

相模原のコーチとして2年目を迎えた昨季。かつてジェフユナイテッド千葉で共にプレーした長野の要田勇一アカデミーダイレクターから声が掛かり、長野U-18監督のオファーが届いた。

要田アカデミーダイレクターとは千葉を離れた後も交流を続けてきた仲で、横浜FCでは育成年代のコーチとして同僚でもあった。

「横浜FCでの指導も見てもらっていた中でオファーをいただいた。将来的にトップチームの監督を目指しているので、まずは育成年代でチャレンジしてみようと思った」

松本山雅の選手として過ごした長野県へ、指導者となって7年ぶりに帰還。「長野の子たちは本当にピュアで真面目。こちらが言ったことを努力してやろうとしてくれている」と、ボールを追う選手たちに温かな眼差しを向ける。

一方、純粋で実直な人間性の裏返しとして、自ら率先して仕掛けたりアイデアを出したりする姿勢には物足りなさも感じている。「そこはまだ引き出してあげられていない」と自戒し、選手の自主性を重んじながら殻を破る手助けとなる指導を模索している。

名将たちの教えを血肉に変えて
選手と共にクラブの歴史を紡ぐ

現役時代に大きな影響を受けた指導者がいた。

高卒で加入した千葉で指導を受けたイビチャ・オシム監督と、広島を率いて黄金期を築いた森保一監督だ。言わずもがな、両者とも日本代表監督を任された名将だ。

「オシムさんは本当に厳しい監督だったけれど、プロとしての土台を作ってくれた。逆にポイチさん(森保監督)は、いつも柔らかい感じで選手と接してくれた」

選手との距離感が対照的だった2人の指導者。「違うマネジメントだったかもしれないけれど、2人とも選手が思い切ってプレーできる環境を整えてくれた」と振り返る。

コーチを務めた相模原を率いていたのは、かつて長野で指揮官を務めた同世代のシュタルフ悠紀リヒャルト監督。“闘将”の背中を支えながら苦楽を共にし、「悠紀さんは本当に勉強熱心だし熱量もある。その姿を間近で見られたのも良い経験だった」と話す。

選手として、コーチとして接してきた多くの指導者たち。受けた教えを自分なりにかみ砕き、「選手に寄り添う」という現在のスタンスにたどり着いた。

長野U-18は今季、プリンスリーグ北信越2部に初昇格。クラブとしての新たな一歩を、プロを目指して切磋琢磨する選手たちと共に歩む。

「選手たちが何を感じ、どう生かすか。すごく楽しみだし、彼らの成長を促していきたい」

かつての恩師がそうであったように、時に厳しく、時に優しく――。そんな思いで選手たちと接している。

“緑”から“オレンジ”へ
「ダービーは負けられない」

長野県とは縁がある。

2019年夏には広島から松本山雅に期限付き移籍。J1残留を目指したチームにシーズン途中から加わり、13試合にフル出場して奮闘した。残留の目標は果たせず、シーズン終了後には移籍期間を終えてクラブを去ったが、懸命に戦った姿勢は緑のサポーターの脳裏に焼き付いているのではないか。

あれから7年の時を経て、今度はオレンジのエンブレムを胸にまとった。

実は長野からの“ラブコール”は今回が2度目。かつて千葉と広島で共闘した村山哲也前スポーツダイレクターからトップチームのコーチとして打診を受けたことがあったが、その時はタイミングが合わずに実現しなかった。

「また長野県との縁ができた」と白い歯を見せる水本監督。信州ダービーの重みは、シュタルフ監督から聞いている。

「この県には2つのサッカー専用スタジアムがあって、素晴らしいサポーターがいる。(長野と松本山雅が)ライバル視していて、ユースの選手たちも負けられない気持ちはあると思う。自分も同じ気持ちで戦いたい」

長野U-18監督としての役割は、1人でも多くの選手をトップチームに送り出すことだと自覚している。「トップとレディースの選手も同じ練習場にいる。プロをより強く意識できる環境」と水本監督。過去に5クラブを昇格に導いた実績を誇る65歳の小林伸二監督の存在も大きく、「経験豊富な監督の練習を間近で見られるのはプラスでしかない」と力を込める。

40歳での監督初挑戦。名将たちの教えから得た理念とスタイルを余すところなくぶつけ、選手たちと自分自身を成長させていくつもりだ。


クラブ公式サイト
https://parceiro.co.jp/

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