名将に引き寄せられた長島裕明ヘッドコーチ 古巣とのダービーへ

J3のAC長野パルセイロを率いる小林伸二監督の傍らには、いつも名参謀の姿がある。長島裕明ヘッドコーチ(HC)。モンテディオ山形、徳島ヴォルティス、ギラヴァンツ北九州、栃木SCでもタッグを組み、AC長野で5クラブ目になる。苦楽を共にしてきた2人の歩みが、なぜ長野の地で再び交わったのか――。2026年4月26日には、かつて身を置いた松本山雅FCとのダービーも控える。長島ヘッドコーチに思いを聞いた。
文:田中 紘夢
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栃木SC退団で海外行きを模索も
引き寄せられた長野で再会
25年11月のJ3リーグ最終節。その時は栃木SCで監督とHCを務めていた2人の姿は長野Uスタジアムにあった。
アウェイでAC長野に4-0と完勝したが、勝ち点1が届かず惜しくもJ2昇格プレーオフ進出を逃した。その試合限りで2人は栃木SCを退団。長島HCは海外でのキャリアを模索しており、別々の道を歩むはずだった。

しかし4カ月後、2人は磁石のように引き寄せられ、別れの地で再会を遂げる。
小林氏が今季途中にAC長野から監督オファーを受けると、就任の条件として長島氏の招へいを提示。長島氏はそれを汲んだクラブの熱意にも動かされ、海外との交渉を中断してHC就任を決めた。
「『(監督が)伸二さんだから』というのもあったし、正直『どうしても』と頼まれた。こんな自分でも必要としてくれるなら、必要とされるところで働くのが大切だと思い直して決断した」
2人が手を取り合うのは5クラブ目。長島HCは「伸二さんが考えていることは分かっていないといけないし、任せてもらっている責任もあると思う。なるべく伸二さんの負担を減らして力になりたい」と力を込める。

初めてタッグを組んだのは08年の山形で、そこから18年が経った。現在、小林監督は65歳、長島HCは59歳。互いに経験という年輪を刻みつつ、指導者として円熟味が増している。
長島HCはチームの全体練習を終えると、趣味であり健康維持の一環と位置付けているランニングに取り組む。1日の走行距離は、毎朝の早朝ランも含めて約16キロ。息の長い指導者生活を支えるための素地を作り、小林監督の右腕を務めるための幹を太くしてきた。
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若き大野佑哉を支えたノート
「チョーさんに助けられた」
AC長野では小林監督だけでなく、教え子との再会もあった。19年に松本山雅で共闘したDF大野佑哉だ。

当時の大野は阪南大から加入して1年目。大学2年から3年連続で関西学生選抜に名を連ねた自信を胸に、松本山雅でも即戦力としての活躍を目論んでいた。
しかし、現実は甘くなかった。活躍どころか、1年目は公式戦の出場機会すらつかめなかった。
「鼻を折られたような時期を過ごした」と大野。そこで手を差し伸べてくれたのが、反町康治監督(当時)から若手の育成を託されていた長島コーチだった。
「あの時は若手がサッカーノートを書いて、チョーさん(長島コーチ)からコメントをもらっていた。1年目でなかなか相談できる人もいなかったけれど、ノートに書くことで心がスッキリしたり、前向きになれるアドバイスをもらえたり。それにすごく助けられた」
大野は当時をそう振り返る。

長島コーチは1年でクラブを去ったが、大野は2年目から台頭。その後は対戦相手としてピッチで顔を合わせるようになった。
昨季はキャプテンマークを巻いた大野の姿を見て、「佑哉はたくましくなっている。プレーはもちろんだけれど、表情も自信に満ちていた」と長島HC。今季途中から7年ぶりに同じチームで戦うことになった師弟は、かつて共に汗を流した日々に裏打ちされた強い信頼関係で結ばれている。
「アルウィンは気持ちが入る」
地域の思いも背負いダービーへ
4月26日には特別な試合が控えている。サンプロ アルウィンで行われる松本山雅との信州ダービーだ。
長島HCが松本山雅に在籍していた19年は、J1で戦っていた松本山雅に対してAC長野はJ3に参戦。長島HCにとって、信州ダービーの舞台は今回が初めてだ。

「ダービーは現場以上に応援する方々が意識するもので、その気持ちは僕らも大切にしないといけない。長野と松本のライバル意識がとても高いことは感じているし、(サンプロ)アルウィンでの試合は個人的にも気持ちが入る。それは(大野)佑哉も同じだと思うので、2人は特に頑張らないといけない」
松本山雅をホームに迎えた3月のダービーは0-5で大敗。当時はAC長野のHCに就く前だったが、「強くたくましくなった僕らを見せるには良い機会。やるからには勝利して見返して、過去にあったマイナスもプラスに変えないといけない。せっかく縁があってこのクラブに来たので、長野の皆さんに強く愛されるようにベストを尽くしたい」と責任感と向き合う。

今季2度目のダービーは、ベンチから歴戦の指導者2人が目を光らせている。名コンビの手で鍛えられている選手たちも前回と同じ轍は踏むまい。目の色を変えた獅子たちが、雪辱に燃えて敵地に乗り込む。
クラブ公式サイト
https://parceiro.co.jp/













