【Farewell-interview】かけがえのない時間を過ごした 信州Aries・白石ふう香&磯野梢

初代王者という有終の美を飾った信州ブリリアントアリーズ。そのチームからも新たな世界への一歩を踏み出す選手たちがいる。進退に葛藤しながらも自分の目標を見つけたセッター白石ふう香。長崎県から高卒新人としてプロの世界へ飛び込んだアウトサイドヒッター磯野梢。2人にとってアリーズで過ごした日々は、学びと成長を実感できたかけがえのない時間だった。

文:原田 寛子/編集:大枝 令

白石 バレーと向き合った夢の3年間
「かっこいい大人へ」の階段を上る

――今回、引退を決断したタイミングや理由を教えてください。

リーグが始まる前、去年の9月頃から頭にありました。リーグが始まってからもずっと悩みや葛藤、気持ちの波があったんです。

「もうやめよう」と思う時もあるけれど、練習でできることが増えたり試合で自分のやり方がハマる時があると「やっぱり楽しい」と思う。年末ごろまではずっと悩んでいました。

でも、年明けくらいから「もし手を抜いていたら後悔していた。頑張っているからこそ試合に出られなければ悔しいと思う。悔しさは自分の中で芽生えた結果。じゃあチームのために何ができるだろう」と、気持ちの段階を踏んで区切りがつきました。

それに加えて、バレー以外にも多くのことを学んだと気付きました。辛いことがあっても乗り越える力や、嫌なことがあっても表に出さない力。社業の配属先で学んだこともたくさんありました。

私にとっては社会で働いている人たちに憧れがあったんです。「働くってすごい、自分も一人前の大人になりたい」という気持ちが大きくなり、次のステップへ行こうと考えました。

――振り返ってみて、白石選手にとってここで過ごした3年間はどのような期間でしたか

一言で言うと「夢のような3年間」でした。毎日当たり前のように過ごしていたけれど、普通に過ごしていたら一緒にプレーできないような選手たちと一緒にバレーをしていました。

そんな中で試合に出て「私も通用している」と実感できる瞬間は本当に楽しかったです。

――今の白石選手を作っている中で、どのような影響がありましたか。

大学時代に福祉関係の資格を取得していたので、そのまま地元で仕事をする選択肢もありました。でも、私の中にバレーボールがやりたい、バレーボールが好きという気持ちがあったから、ここに来させてもらえたと思います。

やりたいことをしっかり100%やり切れたことで、次の目標が見つかりました。この時間があったからこそ、次の夢が見つかったと思っているので、本当にアリーズでプレーできてよかったです。

――今後のご予定は決まっていらっしゃいますか。

「かっこいい大人になりたい」という夢があります。引退すると決めて転職活動をする中で「この人のところで働きたい」という方に出会うことができました。

自分の夢をかなえるためにはこれから学ぶことがたくさんあるけれど、そこでならもっと成長できるかもしれないという場所です。長野県からは出ますが、新しい場所で働き始める予定です。

――最後にファンの方へメッセージをお願いします。

私が出場する姿を楽しみに応援してくださったファンの方には、心残りというか申し訳ない気持ちがあります。それでも引退発表をしていただくメッセージは「次のステップでも頑張って」や「元気をもらえました」という言葉でした。

私が伝えたかった事は伝わっていてうれしいし、快く次への応援をして送り出してくださることに感謝しかありません。

ファンの方が声を出して応援してくれたり、足を運んでくれることで「私たちの存在意義がある」と感じることが多くありました。これからも変わらず、チームを応援してバレーを楽しんでいただけたらうれしいです。

ありがとうございました。

PROFILE
白石ふう香 (しらいし・ふうか) 2000年9月1日生まれ、長野県佐久市出身。家族の影響を受けて中学1年生からバレーボールを始め、長野日大高から長野大へ進学。サウスポーのセッターとして、2023年の入団内定後から試合に出場し経験を積んだ。168㎝。最高到達点は270㎝。コートネームはフウ。

磯野 「バレー愛」から移籍を決断
温かい環境での学びが成長の糧に

――今回退団を決めた経緯などを聞かせてください。

高校を卒業して、何もわからないような状態で初めてチームに参加しました。それでも1年が終わってみて、すごく濃い1年だったと思いました。それも優勝という形で終わったんだ、と。

「1年経ったけれど、どうしよう」と思った時、バレーを続けるのか、辞めるのかで迷ったんです。でもバレーは好きという気持ちもあって悩みました。

その時先輩に相談したら「移籍という方法もあるよ」と教えてもらったんです。私の中に移籍という選択肢が浮かんでいなかったので「そういう方法もあるのか」と思いました。

やっぱりバレーが好きだし、まだまだ他の経験もたくさんしたいと思い、今回は退団を決めました。

――先輩に相談できるというのは、チームの皆さんの仲がいいんですね。

話しやすい環境だし、チームの居心地は良かったです。いろんな人に相談したり、教えてもらったり。すごく話しやすいというのはありました。

フウ(白石ふう香)さんにも直接教えてもらったことがたくさんありました。

――1年間アリーズで過ごしてきて、思い出に残っていることはありますか。

私の中では全部が思い出です。でも同期の選手たちとパスタ屋さんとかご飯を食べに行ったりしたのは思い出に残っています。寮に入っていたので食事を作ってくださるスタッフの方がいますが、自炊するタイミングもありました。その中でみんなとご飯を食べに行ったのは楽しかったです。

あとは練習前にウォーミングアップというか「パスゲーム」というのがあるんです。落としたら罰ゲームみたいなものを決めて、ボール2個を使ってパスをしていくんですが、それは楽しかったです。

――チームに入った当初は高卒すぐで、環境や練習の違いなどがあったと思いますがいかがでしたか。

入ったばかりの時は「ついていけるだろうか」という気持ちが大きかったです。でも練習に参加し始めて、他の選手たちをよく見て勉強するようになりました。真似をしてみよう、というか。キツい練習の中でも周りを見ながら「頑張ろう」と思ってやっていました。

――目標にしていた選手はいらっしゃいますか。

スパイクでは同じアウトサイドヒッターのサヨ(舛田紗淑)さん、レシーブ面ではミイ(セッター/リベロ・田川紘美)さんを目標に頑張ってきました。直接アドバイスを受けに行くこともできたので、やっぱり話しやすいチームだなというのは感じました。

――この1年間でご自身が成長できた部分はどんな部分でしょうか。

バレーボールだけでなく勤務するというところもあったので、話し方や姿勢など学ぶことが多かったです。私の中で特に話し方は課題だと思っていました。大きく成長したとは思えないですが、少しはできたかなと感じています。

バレーに関しては、出場する機会は少なく悔しいと思うことも多かったですが「出られないからダメ」とは思っていませんでした。「まだできない事が多いからもっと頑張ろう」とか、試合に出ている選手を見て課題を見つけて、練習でクリアしていこうと。たくさん学ぶことができたと感じています。

――チームメイトの皆さんにメッセージをお願いします。

この1年間、何もわからないし聞く場面が多かったけれど、みんな優しく教えてくださいました。学ぶことが多く、私自身の成長につながったと思っています。これから私は別の道へ進みますが、アリーズはずっと応援しています。お互いに頑張れたらと思います。

――ファンの方へメッセージをお願いします。

ポンと途中出場した場面が何度かありました。その後にファンの方から頂くメッセージはとてもうれしい言葉ばかりでした。それを励みに「次の試合も出られるように頑張ろう」と思ってきました。

私は退団という形になりますが、変わらずアリーズを今後とも応援してもらえたらうれしいです。そして、私のことも心のどこかで応援してもらえたらうれしいなと思っています。

ありがとうございました。

PROFILE
磯野梢 (いその・こずえ)2006年1月24日生まれ、長崎県南島原市出身。姉の影響を受けて小学校1年生からバレーボールを始めた。島原商業高を経て2024年に入団、高卒単身で上田市へ。高さを生かしたスパイクと、ブロックアウトを得意とするアウトサイドヒッター。178㎝。最高到達点は283㎝。


チーム公式サイト
https://www.briaristcamp.com/
Vリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/v_women/team/detail/484


この記事の最初のいいねを
つけてみませんか?
クリックでいいねを送れます

LINE友だち登録で
新着記事をいち早くチェック!

会員登録して
お気に入りチームをもっと見やすく

人気記事

RANKING

週間アクセス数

月間アクセス数