長野市に“善き光”もたらす草の根活動 中学部活動の地域移行を担う

昨年度から「改革推進期間」が始まった中学部活動の地域移行。これまで教員が担ってきた部活動の指導を、地域のクラブや団体に移行する全国的な取り組みだ。県内でもさまざまな取り組みがスタートしており、今回はその中でプロフットサルクラブ・ボアルース長野の事例を紹介。長野市と連携し、先駆的な存在として活動に力を注いでいる。

文:田中 紘夢/編集:大枝 令

廃部危機のチームを救う取り組み
「底が深い」受け皿への第一歩

すでに叫ばれて久しい。
「部活動」の担い手が変わる。

スポーツ庁と文化庁が2022年12月にガイドラインを策定。2023年度から3年間を改革推進期間と位置づけ、段階的な移行を図る。長野市としても「教育活動」から「楽しむ活動」への転換を目指し、各団体に協力を仰いでいる。

そこで真っ先に手を挙げたのが、ボアルース長野だ。「ただフットサルをやっているだけでは、なかなか応援していただくことは難しい。逆に地域を応援していきたい思いも強くあった」。櫻井勇介統括本部長は言う。

改革推進期間が始まった昨年4月から、若穂中学校サッカー部の運営と指導者派遣をスタート。同部は学校の方針もあって廃部せざるを得ない状況だったが、ボアルースが受け皿となって継続に至った。

主に指導するのは、柄沢健コーチと小林大晃コーチ。互いにアカデミーやセカンドチームの現場も担っているが、活動は夜に行われる。一方、地域移行クラブの活動は下校から90分ほど。時間が重ならないことによって、既存の体制でも受け入れが可能だった。人手不足の際にはトップチームのコーチらも稼働。クラブ総出で現場に当たっている。

チーム名は「若穂中学校サッカー部」から「若穂ジュニアユースFC」に生まれ変わった。平日は在校生のみで練習を行うものの、そもそもの部員数が少ない。休日となれば松代中、柳町中とタッグを組み、合同チームとして活動している。

昨年12月からは更北ジュニアユースFC(旧更北中学校サッカー部)も始動。現在は在校生のみでの活動となっているが、今後は近隣の中学校と手を組みながら、より広域的なクラブチームとして幅を広げる予定。学校間を繋ぐ循環バスの運用も含め、持続可能な仕組みを構築している最中だ。

「これまでの部活動も、在校生が競技を始めるための受け皿として機能していたと思う。それをより広い受け皿にして、誰でも入れるようにしていきたい」と櫻井統括本部長。それが企業収益や雇用の増加に繋がれば、プロスポーツクラブの新たなビジネスモデル、強化モデルにもなり得る。

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フットサルクラブとしての強み
熟練者たちが専門的な技術指導

そもそも、なぜフットサルクラブが「サッカークラブ」の運営に携わるのか。櫻井統括本部長はこう理由を示す。

「若い頃からサッカーの中にフットサルを取り入れることで、フットボール自体がもっと発展していくと思う。両方やることによってプレーの幅も広がるし、成長スピードも速くなる。それをより実績として言語化できるようになれば、フットサルの魅力にも繋がる」

2023度から始動したU-15チームも、同様のコンセプトを持つ。フットサルチームとして活動しつつ、サッカーの大会にも出場。フットサルで養われた技術や状況判断は、サッカーにおける局面の打開にも応用できる。

隣県に成功例もある。新潟県の帝京長岡高サッカー部。積雪量が50cmを超えることも珍しくない豪雪地帯において、冬場には体育館でフットサルを取り入れている。それを礎としたパスワークやドリブルを武器に、2019年から2年連続で全国高校サッカー選手権大会ベスト4に進出した。

地域移行クラブの指導を担う2人は、いわばフットサルの熟練者だ。柄沢氏はボアルースで足掛け3シーズンにわたって監督を歴任。小林氏も選手として4シーズンを過ごしてきた。

サッカーとフットサルの指導者資格を併せ持つ柄沢氏は「『止める、蹴る、運ぶ』というベースを養う中で、より楽しめるようにフットサルの要素も取り入れていければ」と話す。

まずはサッカーの基本を押さえ、応用としてフットサルにもチャレンジする。そんなイメージだ。

地域課題を解決しながら
より「応援されるクラブ」に

活動の“発起人”となった櫻井氏は、小布施市出身。ボアルースが発足された2011年から、7シーズンにわたって選手として活躍した。法人化に至るまでは代表も兼務し、文字通りクラブを支えてきた。

「地域のクラブは存続が難しい。せっかく自分たちで立ち上げて、北信越のトップまで昇って、全国大会に出場するチームができても、自分たちがいなくなったらこのクラブはなくなってしまう。まずはこのクラブを存続させることを目標としてきた」

創設者である竹内謙太氏と手を取り合い、守り抜いてきたクラブ。発足当時のメンバーはただ一人となったが、「今は自分たちだけのものではなく、長野市からも『この地域の財産だ』と言っていただいている。もっと身近な方々に応援される存在でありたい」と力を込める。

その一環として、部活動の地域移行がある。行政とタッグを組み、地域に恩返しをしながら、より応援されるクラブになることが本望だ。 チームはF2リーグで首位を独走し、無敗で優勝とF1昇格を決めた。トップチームがトップリーグで奮闘する傍ら、草の根活動も両輪で進行。地域とともに歩みを進めながら、高みを目指していく。


チーム公式サイト
https://boaluz-nagano.com/
Fリーグ チーム紹介ページ
https://www.fleague.jp/club/nagano/

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