2025新春・年男の邂逅(1)樋口大輝(松本山雅)×工藤有史(VC長野)

2025年、新たな年を迎えた。信州スポーツキングダムは引き続き、新たなチャレンジを続けていく。その一環として、巳年生まれの年男を引き合わせての対談を企画。競技は違えど、アスリートとして相通じるものもあれば、地域に活力を与えるという存在意義も同じだ。第1弾は松本山雅FCのサイドバック樋口大輝が、VC長野トライデンツの練習会場を訪問。バレーボール体験をしつつ、若きアウトサイドヒッター工藤有史と対談した。

取材・構成:大枝 令

意外にもバレーに詳しかった樋口
工藤は山雅のホーム戦を経験済み

――本日はよろしくお願いします。お互いのチームの存在や状況は知っていますか?

樋口 耳にしたことはあるし、存在自体は知っていました。でも、どこで試合をやっているのか、リーグはどういうカテゴリなのか…とかは全く知らなかったです。

工藤 僕は(サンプロ アルウィンの)ホームゲームでキックインセレモニーをやらせてもらったことがあるので、結果だけは見ていました。(2024シーズン)最後の試合もチェックしてましたよ。

2024年6月1日、キックインセレモニーに参加する工藤有史(右)©︎松本山雅FC

――今回は樋口選手にバレーボールの体験をしていただきました。感想はいかがですか?

樋口 高校のときに遊びのバレーで、ちょっと運動神経がいい人が打つのを拾う…くらいしかやったことがなかったです。

GKみたいに当てるだけだったり弾くぐらいの感覚でならできると思いますが、あの強さのサーブやスパイクを、セッターが打ちやすい場所に返すというのは熟練された技だと思いました。

正直、ちょっと自信があったんだけど、全然ダメでした(笑)。あれって全力のサーブなんですか?

工藤 いや、今回のサーブは大体7~8割の力で打ちました。「自分で決めに行きたい」と思うとき以外は、試合でも大体7~8割で打っています。だから、実際の試合と同じくらいのスピード感だと思います。

――お互いの競技のイメージはどうですか?

樋口 「ハイキュー」とかもそうだし、バレーは試合を観るのがめっちゃ面白いですよね。詳しい戦術的なことはわからなくても、たくさん点が入ったり、いいプレーがハッキリ分かるのはバレーの特徴だと思います。

逆にサッカーは難しいところがあって、他の人が観ても「いいプレーだ」とか「いい動き出しだった」とか、あんまり分かりにくいんじゃないかと思います。

PROFILE
樋口大輝(ひぐち・だいき)2001年9月10日生まれ、長野県塩尻市出身。松本山雅FC U-18から専修大に進み、4年時に特別指定選手として松本山雅FCでJリーグデビューを果たした。プロ1年目の2024年は左右のサイドバックなどとして35試合に出場。身長173cmながらヘディングの強さもあり、チーム3番目となる6得点をマークした。J2昇格プレーオフ決勝でもゴールを決め、チームの2024シーズン初の得点と最後の得点を挙げた。173cm、70kg。背番号40は故郷・塩尻の「しお」をホームタウンの塩尻市から託された。

そういう点でバレーはめっちゃ面白いなと前からずっと思っていたし、日本代表の試合はけっこう観ていました。SVリーグということは、西田有志選手(大阪ブルテオン)とか髙橋藍選手(サントリーサンバーズ大阪)とかとも対戦するんですよね?

工藤 西田選手のチームとはすでに1回、ホームゲームで対戦しました。髙橋選手がいるサントリーとのホームゲームはこれからです(3月1-2日、4月12-13日)。

PROFILE
工藤有史(くどう・ゆうじ)2001年9月24日生まれ、大阪府出身。バレーボールの名門パナソニックパンサーズ(現大阪ブルテオン)の育成組織・パンサーズジュニアでプレーした。高校時代は清風で春高バレー準優勝とベスト4を経験。明治大3年時にVC長野の特別指定選手となり、V1リーグにデビュー。プロ1年目の今季は大卒1年目で唯一、主力として活躍する。強烈なサーブとアタックなどを武器とする若手有望株のアウトサイドヒッター(OH)。実は隠れたサッカー好きでもある。190cm、82kg。

僕もサッカーを観るのは好きです。詳しいことは全然分かりませんが、点が入らなくても面白いと思うようになってきました。最近は観れていませんが、大学生のときはワールドカップ(W杯)も含めてめっちゃ観ていました。キックインさせてもらった時も、試合を観るのは楽しかったです。

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大きく異なる競技ごとの特性
求められる身体能力の違いは?

――競技は違えども同じアスリートとして、日々大事にされていることはありますか?

樋口 自分は練習前のケアや筋トレ、そういった意識は大学のときよりもプロになってから変わったと思います。筋トレはオフ明けとその次、そこからどんどん落としていく感じですね。シーズン中は年間を通して下半身を週1で入れるみたいなのはありました。

工藤 筋トレはシーズン中は2日やります。火、木で火曜は結構ボリュームがあるものをして、木曜はあまり上げずに…という感じです。

樋口 絶対下半身、エグいですもんね(笑)。ちょっとやってみただけでもすぐ疲れちゃったので。それをあれだけ長くやっているのはすごい。パフォーマンスは保てるものなんですか?

工藤 練習はハードで身体もシンドくなってしまうので、こっちに来てからはトレーニングをちゃんとしないと…と思うようになりました。そういう意識も変わったんじゃないかなと思います。

あと試合中はアドレナリンが出ているから、シンドいと言えばシンドいですけど、練習中ほどはシンドいとは思いませんね。ただ、身体がついてきてなくて跳べていない感覚が出てくることもあるんですよ。そういう時は跳べないなりの打ち方を考えて打ったりはしています。

©︎松本山雅FC

樋口 サッカーも後半60分ぐらいからずっとシンドいですね。ちなみにバレーって、選手交代はどういうルールなんですか?

工藤 バレーは1回交代して下がっても戻れます。チームで(1セットあたり)6回まで交代できますが、大体よく使うのはサーブで代わって、サーブが終わったら戻って…というのが王道のメンバーチェンジです。

――求められる身体能力が違いますよね。サッカーは走行距離が出ますけど、樋口選手はどれぐらい走りますか?

樋口 1試合11km前後かな。10kmを切った試合はなかったですね。1試合終えると3~4kgは体重が減ります。バレーもそういう感じですか?

工藤 うーん。バレーはセット数にもよるけど、2~3kgは減るとは思います。疲れはしますが、サッカーに比べたら…といった感じですね(笑)。ただ、基本的には土日で2試合やるので。

樋口 えっ!?そうなんですか!?サッカーだったら中2日で試合があっても「過密日程だ!」って感じになりますよ(笑)。

©︎松本山雅FC

工藤 運動量もそうですし、使う筋肉も違うと思います。走行距離は測らないですが、ジャンプ回数は測ります。練習だと120~130回ぐらい。試合は3セットだと80回ぐらいですが、5セットまでいくと150回とかいっちゃうので消耗がすごいですね。

セッターはずっとジャンプトスをしているので200回とか出ます。土曜日にフルセットまでいってしまうと次の日の試合開始まで24時間を切っているんで、リカバリーが難しいところではありますね。

樋口 2日間連続で同じチームとやるんですか?

工藤 SVリーグになった今シーズンから開催のやり方が変わって、基本的にはサッカーと同じホーム&アウェイです。ホームで2回やったらアウェイで2回、といった感じです。

樋口 なるほどー。足がつっちゃう選手とかいるんですか?

工藤 います、しょっちゅういます。プロになると少ないですが、高校生とかだとしょっちゅうつってますね。

樋口 サッカーは誰かしら出ますもんね。

©︎松本山雅FC

互いに素朴な疑問をぶつけ合う
バレー選手が思うサッカーの不思議

――2025年はキャンプから走り込んで、つる選手が出なくなるかもしれませんよ(笑)。ちなみにせっかくの機会なので、お互いに聞いてみたいことなどはありますか?

樋口 バレー選手ってみんな背が高いじゃないですか。それって小さい頃からジャンプして大きくなるんですか?それとも挫折して、小学校のときからうまい子とかでも、身長で伸び悩んで辞めてしまう子とかいるんですか?

工藤 それは全然あるパターンです。高校まですごくうまい選手だったのにプロにいないとか、そこまで経験がない選手が一気に伸びてプロにいる…とか、そういうのは全然あります。

樋口 サッカーはまだ、身長が低くても生き残る術があるというか、やり方次第では可能性が広がるじゃないですか。でもバレーは大きくないとダメ…ってわけじゃないだろうけど、難しそうなイメージがあります。その分だけ跳べればいいのかな?

工藤 いや、ブロックとかで跳んでいる人でも、ジャンプして最高到達点に届くまでの時間があるじゃないですか。その間に打たれてしまう…とかもあります。サイズが大きい人だと伸ばすだけで手が出ちゃうので、そうは言っても、やっぱり背は大きい方が有利ですね。

樋口 あー、なるほど。

工藤 でもさっき、アタックやった時はめっちゃ跳んでましたよね。身体能力さすがだなー!ってビックリしました。

――ヘディングの強さが光っていましたからね。ほとんどセットプレーからで、J2昇格プレーオフも含めると7ゴール決めましたし。ちなみに工藤選手から聞いてみたいことはありますか?

工藤 いやー…あの……

樋口 ん?なんすか(笑)。

工藤 いやちょっと、聞きづらいというか…。ナメてるって思われるかもしれなくて申し訳ないんですけど、バレーボール選手からすると、「直接FKって止められるんじゃないか?」と思っちゃうんですよ。

セットされた状態で、ボールの出どころが(カベで)見えないにしても、ブレてるとかもあるじゃないですか。ああいう変化って分からないものなんですか?

©︎松本山雅FC

樋口 あー、なるほど!?その視点はなかった(笑)。

工藤 いやホント、すいません(笑)。

樋口 ボールが見えなかったら厳しいけど、カベがなかったらスピード弾が飛んでくるので、まずカベは必要だと思います。

工藤 バレーをやっている身からすると、「ワンチャン止められるんじゃないか…?」って。

樋口 いやでも確かにバレーボール選手は、ブレて変化したり110〜120km/hくらいで飛んできたりするボールをセッターに返しますもんね。FKは触ってゴールに入れさせなければいいから…。

工藤 ちなみにカベを越えてからゴールに届くまでの距離って何メートルくらいなんですか?

樋口 FKを蹴る位置にもよるけど、だいたいカベからゴールまでは15mぐらいになるのかなあ。

工藤 バレーのコート一面が長辺18mだから、だいたいジャンプサーブを受けるぐらいの距離感なんですかね。

樋口 難しさとしては、ボールが見えていないのが一番大きいかもしれないです。カベのどこからボールが出てくるのか分からなくて、越えてから動き出すみたいな感じにどうしてもなってしまうので。でもバレー選手がGKをやってみたらどうなるのかは興味がある(笑)。

――じゃあ次回は「工藤選手のGK体験」をぜひやりましょう(笑)。では最後に2025年の抱負、お互いにエールなどありましたらお願いします。

樋口 2025年は今年の個人の数字としての結果と、チームとしての今年の結果を超えることを意識してやっていきたいと思います。

7ゴールを越えるのは難しいかもしれませんが、アシストは3ぐらいだったので、ゴールとアシストを足して2桁以上を目指したいと思っています。チームとしては絶対昇格を目標にと思っています。

©︎松本山雅FC

工藤 2025年はまだシーズン中なので、チームとしてはプレーオフに行きたいです。可能性がなくはないと思っているので、最後まで争いに食い込めるように戦うのがチームとしての目標です。

個人的には数字もそうですが、チームに欠かせない存在になりたいですし、最終的には代表に選ばれるのが目標なので、それをかなえられたらうれしいなと思います。

樋口 でも本当にSVリーグというトップカテゴリーで戦っているのはすごいと思うし、J3という今の自分たちの立場からすれば「ほんとにすごいな…」という感覚ですよ。

日本代表になってもらって、テレビで観たい。そうしたら「俺、対談したよ」って言いたいです(笑)。自分もJ1に行って試合に出て観てくれたらと思うので、そういう選手になりたいです。

©︎松本山雅FC

工藤 いやでも、J3って言いますけど、僕が思っていたより全然レベルが高くて面白かったです。去年キックインセレモニーで呼んでもらった時、そう思いました。

来シーズンは絶対に昇格してほしいですし、同じ県内でトップリーグでできれば長野県ももっともっと盛り上がると思うので、一緒に頑張っていけたらと思います。お互い結果を出していいシーズンにしていきましょう!

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