信州と日本のホープ渡邉飛勇 “バスケの大学院”で重ねた日々の成長記録

渡邉飛勇の成長はとどまることを知らない。B1の琉球ゴールデンキングスからB2信州ブレイブウォリアーズに移籍して1年目。プレータイムや得点などスタッツを大幅に伸ばしているだけでなく、サイズに頼らないディフェンスや味方との連携も向上。信州のチームスタイルにも馴染みながらプレーヤーとして進歩を遂げてきた。勝久マイケル・ヘッドコーチ(HC)のバスケを学び始めて数カ月。日本代表のホープでもある成長株の日々を振り返る。

文:芋川 史貴/編集:大枝 令

「豪快であり、繊細であれ」
3ポイントやディフェンスも成長

「飛勇」

名前の通り、渡邉は勇ましく飛ぶ。

並外れた跳躍力。ブロックでリングを守ったり、ペリン・ビュフォード、石川海斗との連携でアリウープを連発したり。日本人センターとして制空権を握る。

第26節終了時点で1試合平均のブロック数は1.5。選手によって出場試合数に差があるため単純比較はできないが、この数字はB2リーグでも4位に食い込んでいる。

ただ、これは従来からの武器がさらに磨かれたにすぎない。信州に加入して特に成長したのは、ディフェンスでの駆け引きではないだろうか。

ドライブを仕掛けてくる選手に対して、どこまで間合いを詰めるか。周囲の状況を確認しながら、ギリギリまで相手との駆け引きし、相手の苦手とするシュート体勢に持ち込む。

その動きは信州の大黒柱ウェイン・マーシャルが乗り移ったようでもある。もちろん完成型ではないにしろ、豪快なブロックの前に、繊細なやりとりが徐々に見られるようになってきた。

「飛ぶ」のは自分自身だけではない。
ボールもだ。

3ポイントシュートも少しずつプレースタイルに組み込まれてきた。外角のシュートはもともと練習していたものの、中盤戦まではアテンプトすらなかった。

しかし2025年2月8日の鹿児島レブナイズ戦では2本のうち1本をメイク。新たな強みとなる可能性をのぞかせている。

もう一つ成長しているのは「継続力」だ。どんなに得意なプレーがあったとしても、すぐに持続できなくなってしまうよりは、長くコートで表現できた方が望ましい。いかにチームルールや個人の仕事を遂行し続けられるか。

その観点でも3月11日の熊本ヴォルターズ戦はキャリアハイとなる32分41秒の出場。14得点11リバウンドを記録した。日に日にチームスタイルへの理解力や個人としても成長を遂げていることが分かる。

「覚えることが本当にいっぱいある。ここはバスケの大学院みたい」――。加入当初は取材に対してそんな話をしていた。あれから7カ月。少しずつ、しかし確実に吸収して成長を遂げてきた。

勝久HCも「若い選手としてミスもあったけど、32分コートに立って貢献できるということは我々にとって非常に大きくて素晴らしいプレーだった」と賛辞を送った。

ブラザー・狩野富成との2ビッグ
会見で垣間見せた先輩の「本気」

信州の日本人ビッグマンとして渡邉とともに名前が挙がる狩野富成。仲の良さが目立つ「ツインタワー」だが、そのキャラクターだけが愛されているわけではない。

3月10日の熊本戦GAME1。2人同時にコートへ立つ時間帯があり、良い流れを作る場面もあった。

それについて記者に問われた渡邉。「2人のラインナップは楽しかった。僕が4番で、トヨ(狩野)が昨日(10日・GAME1)は本当にいい仕事をした。デカいチームも多いから、このラインナップは信州の武器になると思う」と笑顔を見せた。

勝久HCも「本当に若い2人なので経験を積めば積むほど良くなっていくので、良いプレーもたくさんあった。でもディフェンス面はまだまだ」。釘を差しつつも、新たな可能性を見出した。

3月11日の熊本戦GAME2では、狩野の欠場により共演は実現せず。しかし、渡邉の試合後会見に、”記者”として狩野が参加。思いもよらない形で2ビッグが実現した。

GAME2の総括をした渡邉は、狩野の方を見ながら「ビッグマンがいる中で難しい状況だったけど、トヨ(狩野)がいなかったから、みんなで頑張りました」と狩野をイジる。

狩野については「日本人ビッグマンの中で一番大きくて、いろんな武器を持っている。あとはメンタルだね。メンタルを集中させないといけない」と評価した。

狩野もそれに対して反応を見せ、仲の良さが目立った。

報道陣の質問が一区切りすると、最後は206cmオーバーの「記者」が挙手。「狩野新聞です」と名乗り、渡邉に質問をぶつけた。

その雰囲気からおどけた問答になるのだろう――と思っていたら、そうではなかった。

「メンタルという言葉をさっき言っていましたけど、代表でも活動していて、メンタルは強くなっていくものなんですか」

正面から率直に尋ねる質問。それに対して渡邉も応えた

「トヨ、代表に行って自分で見つけてください」

笑顔を見せつつも、短い言葉で先輩として本気のアドバイスを送った。“ブラザー”はただ仲が良いだけではない。真剣なぶつかり合いもしながら、切磋琢磨している。それが如実ににじむ一幕だった。

信州と日本の未来を背負う渡邉
プレーオフでも圧倒的な存在感を

渡邉の成長もあり、プレーオフ出場を決めた信州。自身は日本代表として昨夏のパリオリンピックを戦った経験があるし、2022-23シーズンには琉球でチャンピオンシップ優勝も経験している。

大舞台での経験を持つ。
それをどう還元するか。

「僕は僕の仕事と役割をやらなくちゃいけない。そのプロセスに集中することで結果がついてくる。もっとコンディションをベストな状態にしてプレーオフに向けて整えていきたい」

これまでのシーズンは、コートに立って戦う時間が短かった。しかし今季はプレータイムとスタッツを大幅に伸ばし、シーズンを通して若き大黒柱としてさらなる成長を遂げた。

一発勝負とも言えるプレーオフ。渡邉も勝者のメンタリティーを共有できる選手だろう。

次節は3月22-23日にことぶきアリーナ千曲で、東地区首位のアルティーリ千葉と対戦。強豪相手にメンタル面でもプレー面でもチームを引っ張り、さらに大きく“飛躍”するための終盤戦にしたい。


ホームゲーム情報(3月22-23日、アルティーリ千葉戦)
https://www.b-warriors.net/lp/game_20250322_20250323/
Bリーグ 選手個人成績 渡邉飛勇
https://www.bleague.jp/roster_detail/?PlayerID=5100000049
クラブ公式サイト
https://www.b-warriors.net/

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