共通項は「地域のために」ボアルース長野×長野保健医療大がタッグ組む

フットサルF1のボアルース長野が、長野保健医療大学との包括連携協定を締結した。同クラブが教育機関と提携するのは、創設15年目にして初の試み。互いに「地域密着」を掲げるビジョンに共鳴し、今回の締結に至った。2025年4月23日に長野市今井の同大学で締結式が行われ、代表者同士が固い握手を交わした。今後はスポーツを基盤とした人材育成、地域交流等を推進しつつ、クラブの強化にも繋げていく構えだ。
文:田中 紘夢/編集:大枝 令
クラブが実践的な学びの場を提供
大学は医学的知見からサポート
「こういう話がいただけるようになったんだなと。(法人化から)10年目になるが、始めた頃は想像もつかなかった」
ボアルース長野の若林順平・代表取締役社長は、感慨深げにそう語る。
両者の繋がりが生まれたのは2021年。長野保健医療大の卒業生である堀内遼さんが、クラブにトレーナーとして加入したことがきっかけだ。
23年から同大学でシーズン前にフィジカルチェックを実施し、今年は6人の学生も参加。ほかにもホームゲームでボールパーソンや救護係を務めたりと、現場をサポートしてきた。

「長野保健医療大学さんは、我々と同じビジョンを持っている。『地域密着』という旗印のもと、こうやってお力を貸していただけるのは本当にありがたい」
「学生さんにとってもトップアスリートの現場というのは非常に興味深いと思うので、そこに関われる機会を提供できることには意味がある」
クラブの地域密着を推進してきた若林社長は、締結式でそう取材に応じた。そして本協定の“架け橋”となった堀内さん(理学療法学専攻・17年卒)にも、万感の思いがある。

「私たちが在学していたときは、トップアスリートに触れられる機会がなかった。スポーツ業界で働きたいという希望がある中で、近隣のプロクラブとの関係性もなかった」
「今は現場に学生さんを募ると、ある程度の人数が興味を持ってくれる。スポーツ業界への入り口としてはすごくいいと思うし、こうして形になったのはよかった」
学生にとって、トップアスリートの身体機能や身体動作を学べるのは貴重な機会。プロスポーツクラブが教育現場を提供し、大学は医学的知見をもってサポートする。まさにWin-Winの関係だ。
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選手のコンディショニングに一役
28年の国スポも見越して人材育成を
ボアルース長野は昨季のF2リーグで無敗優勝し、2年ぶりの1部昇格を果たした。F1リーグ定着、そして優勝争いが目先の目標となるが、「経営基盤は着々と確立できている」と若林社長。今年はスポンサーから増額の支援も受けたという。
それと同時に、現場の強化にも注力しなければならない。土橋宏由樹ゼネラルマネージャー(GM)が強化を全面的に担う一方、若林社長は「私が経営者として環境を整えなければいけない」と話す。

今回の連携も、その一環として捉えられる。
「昨季は優勝できたけれど、選手たちがベストパフォーマンスを継続できたかと言えば、そうではなかった」と堀内トレーナー。国内最高峰のF1で戦うためには、よりコンディションを高めていく必要もある。
「定期的に数値を測定できれば、選手たちももっと自分の体に興味を持ってくれると思う」。これまでフィジカルチェックを行うのは年1回のみだが、中断期間などでの測定も視野に入れる。

理学療法学専攻の赤羽勝司教授にとって、堀内トレーナーは教え子。「現場で彼を直接お手伝いできるようなところまで、学生が入り込めれば。まずはコミュニケーションを頻繁に取れる環境を作りたい」と先を見据える。
同学部の学生は1学年40人ほどで、合わせて約160人。ボアルースとしては在学中にその人的リソースを借りながら、卒業後の社員登用も考えられる。

2028年には地元での国民スポーツ大会と全国障害者スポーツ大会を控えており、理学療法士の養成も必須。「我々の学生たちも、興味を持って手を挙げてくれている。そこからプロスポーツ業界に進んでいくこともあると思う」。本協定もその一役になりそうだ。
選手に選んでもらえる環境づくり
地域とともに新たな一歩踏み出す
「こういった活動が、選手がクラブを選んでくれる一つの理由になれば」――。
ボアルース長野の若林社長は願いを込める。
昨季は練習生の数が過去最高で、各クラブからの問い合わせも多かったという。「積み上げてきたものが形になって、他クラブの選手からも少しずつ興味を持ってもらえるになってきた」。今季の新戦力の中には、2年越しのオファーに応えた選手もいる。

2019年にU-18、2023年にU-15チームを設立するなど、育成にも力点を置いている。その中で「アカデミーにも医学的知見を取り入れたい」と櫻井勇介統括本部長。育成年代のフィジカル強化を図る意味でも、有意義な協定となりそうだ。
クラブの未来を担うアカデミーも含め、いまは“選んでもらえる環境”を整えている最中。若林社長はさまざまな「軸」を掛け合わせている。

「今年はF1に復帰して、クラブとして予算規模も大きくなってきているけれど、強さという軸は非常に流動的なもの。それ以外の軸もしっかり伸ばしていけば、継続的な支援にも繋がっていくと思う」
法人化から10年目、今回は満を持してのF1挑戦。まずは地域とともに、新たな一歩を踏み出した。
チーム公式サイト
https://boaluz-nagano.com/
Fリーグ チーム紹介ページ
https://www.fleague.jp/club/nagano/