AC長野の堅守支える“闘将”田中康介 「ワースト3」の屈辱も糧に

2026年8月16日に行われたJ3リーグ第2節。AC長野パルセイロはアウェイでFC大阪と対戦し、2-4で敗れた。昨季から公式戦は6試合連続無失点を記録していたチームが、まさかの4失点。うち2失点に関与したDF田中康介は敗因を背負って肩を落としたが、屈辱も糧にしようと前を向いている。堅固な守備を支える“闘将”の熱量の根源は何か。強さの秘訣に迫った。
文:田中 紘夢
KINGDOM パートナー
リズムに乗れず痛恨の2失点
重い足取りで会場を後に
田中康介にとって三本の指に入るほど「ひどい」試合だった。

2-1とリードして迎えた62分。左サイドバックの田中の守備範囲に、自陣右サイドからアーリークロスが飛んできた。空中戦に長けたFC大阪のFW島田拓海に先手を取られ、ヘディングが枠の中へ。2-2の同点に追いつかれる。
78分には“ダブルパンチ”を食らった。ロングボールの処理を誤ってCKを献上。大外にいた田中のもとへボールが飛んできたが、ジャンプしても届かない。フリーで待ち構えたDF水口湧斗に頭で折り返されると、最後はMF木匠貴大に押し込まれて逆転を許した。

CKを与えた場面。左サイドに飛んできたロングボールに対し、田中とFC大阪のMF久保吏久斗が並走する格好となった。相手は小学校時代のチームメイトで、スピードがあるのは熟知している。
それゆえに警戒心が強まり、「力みすぎてしまった」と田中。左足で先に触ったボールがゴールラインを割り、CKのチャンスを与えた。「もっとリラックスして対応できればよかった」と悔いを残す。

チームとしてもリズムをつかみづらい試合だった。守備から入る戦い方が身上ながら、立ち上がりの4分に失点。持ち前のハイプレスに出ても、ロングボールで早々に回避されてしまう――。「個人的にも乗ってこない中で、後半もズルズルといってしまった」と田中は言う。
2失点に関与した田中は83分に途中交代。チームも2-4で敗れ、開幕2連勝を逃した。重い足取りで取材エリアを通る姿が、痛みの大きさを物語っていた。
KINGDOM パートナー
弱みを強みに変える努力
「小さい分工夫しないと…」
空中戦の競り合いで後手に回って2失点に関与。身長170cmという小柄な体格が裏目に出たと言えば、それまでかもしれない。田中自身も「クロス対応は弱みだった」と認めている。

しかし、弱みが強みに変わりつつあるのも事実だ。3月に小林伸二監督が就任して以降は、ポジショニングや体の向きなど細かな部分に目を向けてきた。
五分五分の競り合いを強いられたとしても、「小さい選手もバンと競れば、大きい選手でも崩れる」と指揮官。身長差が必ずしも不利に働かないことは、身長175cmで世界屈指のセンターバックと評されるリサンドロ・マルティネス(アルゼンチン代表)も証明している。

昨季のJ2・J3百年構想リーグにおいても、田中の空中戦での対応は光っていた。ボールと相手を同一視野に入れるポジションを素早く取り、最後は相手に体を寄せてヘディング。クリアの方向も外に弾くことを徹底している。
リードして終盤を迎えれば、相手は概ねクロスの応酬で攻め込んでくる。それでも田中は大外のかゆいところに手――ではなく足を運び、体を伸ばし、ボールを跳ね返す。好守を見せた後には、渾身のガッツポーズとともに雄叫びを上げる。

「自分は背が小さい分、うまく工夫しないといけない」
昨季から6試合無失点が続く間は、体格差を補って余りある強さを見せてきた。FC大阪戦では2失点に関与して辛酸をなめたが、「まだまだ完璧ではないと思い知らされた。ステップアップするための課題を与えてもらった」と前向きに捉える。
一度失敗したからといって、積み上げてきたものが崩れるわけではないのだ。
過去には5戦連続の失点関与も
乗り越えられない壁はない
「今までも苦い思いをした時に、自分なりにもがいて、乗り越えることで成長してきた。今回もまた一つ成長するための試練だと思っている」

2023年まで在籍していたJ3福島ユナイテッドFCでも、「5試合連続で失点に関与」という耐えがたい経験をした。何気ないバックパスからCKを与えてしまう類似例もあった。今回も当時と同等のショックを受け、「初心を思い返すきっかけにもなった」と話す。
クロスやセットプレーの対応を見直し、FW吉澤柊から相手にとって嫌な体の当て方も教わった。手垢のついた言葉で形容するならば、“失敗は成功のもと”。第2節という早い段階で教訓を得られただけに、災い転じて福と成す機会はいくらでもある。

「失敗をネガティブに捉えてはいけないと思う。どうやってポジティブに消化して、次に向かっていくか。引きずってチームに迷惑をかけるのはあり得ないので、『やってやろう』という思いに切り替えている」
チームは15日間で5試合を戦う連戦の真っ只中。8月22日にはロアッソ熊本とのアウェイゲームを迎える。

「遠いアウェイまで来てくれたサポーターに対して、不甲斐ないプレーを見せるのは申し訳ない。良い気持ちで帰ってもらうためにも、まずは戦う姿勢から見せたい」
“闘将”が雄叫びを上げる数に比例して、チームは勝利を積み重ねていく。
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