若手コンビ小玉大智×山崎玲緒 愛媛戦で見せた“信頼”の3ポイント
バスケットボールはベンチメンバーを含めた全員に役割があり、普段はプレータイムが少ない選手も60試合と長いシーズンでは必ず活躍する”そのとき”が存在する。2024年12月7-8日にかけて行われた第11節・愛媛オレンジバイキングスとの試合は、ペリン・ビュフォード、渡邉飛勇、生原秀将が欠場。ベンチ登録が10人とチーム全員のステップアップが求められる総力戦となった。そんな中で”そのとき”を迎えた小玉大智と山崎玲緒が活躍。それぞれの覚悟と成長を感じさせた。
文:芋川 史貴/編集:大枝 令
何度も何度もワークアウトで反復
2人の信頼関係が生み出した1本
小玉大智と山崎玲緒。
2人のプレータイムは決して多くはない。山崎に関してはロスター登録枠の関係で、ベンチの後ろから戦況を見つめることも多かった。そんな中、主力選手の欠場は彼らにとっては存在を証明する機会でもあった。
スポーツの世界、勝負の世界では相手チームに勝つ以前に、自チーム内で激しい競争を制す必要がある。試合に出られない選手も常に準備を怠らず”そのとき”に備えておく必要があり、そこでの活躍がその選手の価値を高めていく。
だからこそ、普段プレータイムの少ない選手の活躍や成長は、うれしさや危機感などさまざまな感情をチームに与え、チーム全体に層の厚みを加えていく。
実際、小玉は今節を「チャンス」と捉えて試合に臨んでいた。
結果は
第1戦:16分24秒 10得点(3P3本含む)3リバウンド
第2戦:14分46秒 8得点(3P2本含む)
今季ここまで平均で約6分間だったプレータイムを大きく伸ばして活躍を見せた。
山崎も
第1戦:9分4秒 5得点3アシスト
第2戦:16分18秒 4得点 3アシスト
と多くのプレータイムを獲得。持ち前のスピードを生かしたゲームメイクを行った。
もちろん良い部分もあれば、主にディフェンス面では成長の余地が見られた。第1戦の後、若手メンバーの収穫と課題をそれぞれ2人にたずねた。
すると2人とも期せずして、同じシーンについて振り返った。
それは第1クォーター(Q)残り1分20秒。山崎がスピードを生かしたペイントアタックを仕掛け、後方の小玉へパス。迷わず打った3ポイントが決まり、21-8とリードを広げたプレーだ。
「良かったことは、1本目の3ポイント。決められたのは、やっぱり玲緒さんと日頃から一緒にワークアウトしていたから、このタイミングでパスが来るのも分かっていた」
「玲緒さんもいてくれるという信頼があったから、いいパスからいいシュートが決められた。日頃からの練習後に一緒にやっていることは間違いじゃなかったという実感や手応えがあった」
小玉がそう切り出すと、山崎も同調する。
「自分がアタックして点数を決めたり、それこそいつも大智と一緒にシューティングをやっているので、アタックしたときに大智がここにいるというのは自分的にも分かっていた。それを大智が決めてくれた」
「あのタイミングで大智のいる場所は正直見ていなかったけど、いつもワークアウトをやっていて『そこにいるな』という感覚的な部分が自分の中にあった。それもいつも通り大智が気持ちよく打って決めてくれたので、少しホッとした」
両者の言葉からはお互いの信頼関係だけでなく、それを築くだけの練習量の多さもうかがえる。
今季の信州は、試合明けの最初の練習で軽い調整をした後、プレータイムが少なかった選手でワークアウトを実施。運動量の減少を抑えたりすることも目的の一つで、勝久マイケル・ヘッドコーチ(HC)が付きっきりで指導する中、3対3などに強度高く取り組んでいる。
当然2人も、そこで激しくしのぎを削る。ロスターを争うライバルである一方で、お互いの成長を支え合う良き仲間でもある。
このように、コート上で表現されるプレーの一つ一つには、選手たちが積み上げてきた努力や物語が詰まっている。だからこそ、特に若手の活躍にベンチは喜ぶし、会場も大きな歓声で包まれる。
試合に出場してこそ見えた課題
克服しながら次節の大一番へ
ではここから先の課題はなんだろうか。第1戦は104-80、第2戦は108-58。結果だけで見たら2戦とも大差での勝利だが、第1戦のあと勝久HCは「ディフェンスは決して良くはなく、点差が開いていた中でもあってはいけないミスが何回もあった」と苦言を呈していた。
小玉と山崎も課題について言及する。
「ディフェンスでは僕の課題で、一番やってはいけないやられ方をされてしまった。プレータイムを勝ち取るとか、自分が成長する意味では、シュートを何本決めようがディフェンスが絶対。ディフェンスにもっと重きを置いてやりたい」
小玉は、信州のアイデンティティであるディフェンス面の成長に目を向ける。もとより昨季、ビュフォードなどB1の選手と対峙して課題としてきたファクター。そして山崎は、安定感の向上を口にする。
「40分間やり続けなきゃいけない。それを出ている人やベンチで準備している人全員がやっていけばもっと失点を抑えられて簡単にいった試合。後半のターンオーバーだったり、ターンオーバーにはなってないけど自分の中でのミスだったりがすごく多いので、それを改善していきたい」
もちろん選手である以上、メインで試合に出場したい思いは持っているはずだ。スター級のメンバーがそろう信州でプレータイムを勝ち取るためには何が必要なのだろうか。小玉は次のように分析する。
「まずエナジーはベテラン選手と同じレベルじゃダメだし、若いということはもっとエナジーを出せるはず。だからもっと全力で、リバウンドでもファウルになっても仕方ないぐらいのエナジーを出さないといけない」
「そうじゃない姿はブースターの方も見ていて気持ち良くないだろうし、若い選手ならではの気持ちの出し方をもっとしないと、今後僕らがプレータイムを勝ち取っていく中では、他の選手の経験に劣ってしまう」
第1戦ではまさしく、そうした姿も見せた。第4Q残り5分10秒のオフェンスリバウンドから、「俺のオフェンスだ」という気持ちで自ら3ポイントシュートを放ったシーン。成長を目指す覚悟や一皮むけようとしている覚醒の片鱗をのぞかせた。
コート上でしか経験できないことも多い。主力が不在の時の活躍だけでなく、今後はより一層、自分が主力になるという思いの元で選手たちは日々の練習に取り組んでいくだろう。
これで信州は5連勝。若手の成長がチームに厚みを加え、勝負の次節に向かう。14-15日、アウェイでのアルティーリ千葉戦。元信州の大崎裕太と前田怜緒に加え、東海大三(現東海大諏訪)高出身の鶴田美勇士、黒川虎徹も所属する東地区首位の難敵だ。
前半戦の大一番、どんな戦い方ができるのか。チーム一丸で今季を占う一戦に挑む。
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