チームを知って己を知る エリエット・ドンリーに満ち満ちる自信
何もかもが、昨季よりも成長している。プレーはもちろんのこと、会見場などで語る言葉からも力強さや自信を感じさせる。信州ブレイブウォリアーズに移籍して2年目を迎える、エリエット・ドンリー。信州の環境で戦術理解度を高めながら好パフォーマンスを発揮し続けている。日々成長を体現する28歳。2025年2月1-2日の次節ホーム・ライジングゼファー福岡戦を前に、その魅力と変化の要因に迫る。
文:芋川 史貴/編集:大枝 令
”マイケルバスケ”の理解度が向上
自信をつかんだ飛躍の2年目
穏やかで物静かな昨季の印象から、一変した。
加入1年目。そのイメージが、そのままコート内に表れていた。力強くプレーすることもあれば、勝久マイケル・ヘッドコーチ(HC)の緻密なバスケットボールを理解し切れず、迷っているシーンも多く見られた。
だが今季は違う。
198cm91kgと恵まれた体格を生かした豪快なダンクや、力強いゴール下でのフィニッシュ。3ポイントシュート成功率は昨季の25.9%から31.7%まで上昇した。ポイントガードも担い、持ち前の走力を生かしたファストブレイクやディフェンスでも存在感を発揮する。
オールラウンダーへと進化を遂げた。
「自信がついてきた部分もあるし、マイケルさんのバスケットへの理解が強くなったと思う。その中で自分の強みを使ってどのようにプレーをするのか。そこがよくできるようになってきた」
PROFILE
エリエット ドンリー(Eliet DONLEY)1996年12月11日生まれ、神奈川県出身。アメリカ人の父と日本人の母を持つ。NCAA2部のシャミナード大に編入し、卒業後の2020年は大阪エヴェッサに加入。21年には「小島エリエット海」の名前で日本代表候補にも選ばれた。大阪で3シーズンを過ごして23年、信州に移籍。戦術理解度が高まった2年目の今季は飛躍的に存在感を高め、オールラウンダーとしての能力を開花させようとしている。198cm、91kg。ポジションはSF/PFのほかPG/SGも務める。
信州で2年目を迎える選手は大きく飛躍する傾向にある。
例えば、2021-23年に所属していた熊谷航(秋田ノーザンハピネッツ)、前田怜緒(アルティーリ千葉)、岡田侑大(京都ハンナリーズ)。2020-23年のジョシュ・ホーキンソン(サンロッカーズ渋谷)などもまさしく、勝久HCのもとで成長を遂げた選手と言える。
元々のポテンシャルに加え、戦術理解度を高めることによって、チーム内での連係はスムーズに。その中で個人の力が存分に発揮されていく。
「自信を失っていたわけではないけれど、(昨季は)それを持っている時と、持っていない時の差が激しかった。今はそれも直って、自分のことを信じてやりたい気持ちが強い」
もともと、そのポテンシャルは折り紙付き。そこに、練習や試合での経験値が蓄積されながら理解度も高まり、それに伴って自信が日に日に増しているという。
「シュートが入った、入らなかったなどの結果を考えすぎない。とにかくそれが『良い判断だったか』『良いシュートだったか』を考えてプレーしている」
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英語で意思疎通できるチーム環境で
円滑なコミュニケーションも要因に
自身だけでなく、チームとしての成長も欠かせない。ましてやわずか数cm、数秒のズレも妥協しない勝久HCのバスケットであれば、なおのこと必要だと分かる。
そんな中で、チーム内での円滑なコミュニケーションが信州の強みだ――とドンリーは語る。
「先輩後輩とか関係なく、誰とでもオープンに話せる。みんなから学ぶことが大事だと思うので、そこは信州の強みだと思う」
コミュニケーションという視点で信州の特徴を見ると、英語と日本語のバイリンガルが多いことも挙げられる。指揮官もそうだ。
アメリカの大学を卒業したドンリーもその一人。横須賀の米軍基地に赴任していたアメリカ人の父と日本人の母の間に生まれ、日本にいる間も英語を使う学校に通っていたという。
基本的に英語を使った生活で、日本語は母親との会話で習得。それゆえ「英語で話すほうが日本語で話すよりも全然ラク」とドンリーは笑う。
もちろんインタビューでは日本語での受け答えも不自由はない。それでも指揮官やチームメイトと英語で直接コミュニケーションを取れる環境も、成長の後押しをしているに違いない。
「成長」と「成果」を求める後半戦
存在感を強めるオールラウンダー
1月29日に行われた福井ブローウィンズ戦でも19分27秒の出場。10得点4アシストを記録したほか、ウィングの選手やビッグマンにも守備でプレッシャーを与え続けた。
開花の兆しがあるにせよ、まだまだポテンシャルは青天井。2024年2月からのPGを担う試合ではミスも目立った。それでもドンリーは常に上を向く姿勢を忘れないだろう。自身が成長すればするほど、チームとしても成長曲線がどんどん大きくなっていく。
「勝久HCのもとでバスケを教わりたい」
そんな思いから移籍し、迎えた2年目のシーズン。
「マイケルさんはバスケのことならなんでも知っている。アドバイスを聞きやすいし、習いやすい」と充実感を口にする。寒さの厳しい長野の冬にもようやく慣れてきたようだ。
B2リーグは1月31日現在で既に35試合を消化し、熾烈な後半戦へと突入している。信州は開幕節でいきなり連敗した福井を99-88で下し、4連勝で東地区の2位に浮上。そして2月1-2日はホームで西地区の首位・ライジングゼファー福岡と対戦する。
チャンピオンシップでも対戦する可能性のある福岡を相手にどう戦い、そこでドンリーはどんなプレーでチームに力を吹き込むのか。勝負の後半戦も楽しみが増していく。
ホームゲーム情報(2月1-2日、ライジングゼファー福岡戦)
https://www.b-warriors.net/lp/game_20250201_20250202/
Bリーグ 選手個人成績 エリエット・ドンリー
https://www.bleague.jp/roster_detail/?PlayerID=32984
クラブ公式サイト
https://www.b-warriors.net/