サトタクNavigates バスケット・ラビリンス(2)「ペリン・ビュフォードの明確な変化」

バスケットボールは豪快で派手なプレーが目を引く一方、コート上の戦術面に目を向けると非常に繊細で難解でもある。信州ブレイブウォリアーズで2018年から3シーズン、勝久マイケルHCの元でプレーした佐藤託矢がナビゲート。2回目は、直近5試合を終えて見えた「ペリン・ビュフォードの変化」と「チームの伸びしろ」を論じる。

構成:芋川 史貴、大枝 令

ビュフォードの明らかな「変化」
適切な選択でプレー周囲を生かす

初回は第2節までの計4試合を振り返り、ペリン・ビュフォード、テレンス・ウッドベリー、渡邉飛勇といった新戦力のポテンシャルについて解説した。

特に2年連続B1得点王のビュフォードは新加入の中でも“超目玉”の選手だが、チーム戦術にアジャストする余地が残っていた。具体的には彼がボールを運んだ時に周りの4人が止まってしまっていたことや、アシストの内容について記述した。

しかし、直近の試合ではそこが大幅に改善されている。

例えばピックアンドロールの局面。今まではまずリングにアタックしてダメだった場合、ディッシュパスやロブパスの選択肢が多かった。しかし直近の試合では早い段階で周りの状況を見て、空いている選手へのパスを選ぶシチュエーションがかなり多くなっている。

その結果、周りの選手が自由に3ポイントシュートを打てるようになった。特に福島ファイヤーボンズ戦の第1戦では、3ポイントシュートが15/32の46.9%と今季で一番高い成功率。ビュフォードを起点としつつも頼りすぎず、全員が得点できるシステムが明確になってきた。

では「ビュフォードを起点にした攻め方の変化」を、具体的に2つのシーンから分析してみよう。

1つ目は福島との第2戦、第3クォーター(Q)残り4分40秒からのプレーだ。ビュフォード(#2)がボールを運び、ガードの石川海斗(#11)がスクリーンをかける。

右サイドには栗原ルイス(#12)とウェイン・マーシャル(#50)が2対2、ウィークサイドとなる左は三ツ井利也(#31)だけとなっていた。

このスペースをよく見ていたビュフォードはペイントエリアにドライブし、相手を引き付けて三ツ井にアウトサイドパス。コーナーからの3ポイントシュートにつなげた。

2つ目はその直後、4分10秒からのプレー。先ほどと同様にビュフォードが運び、石川がスクリーンをかける。相手のマークマンがスイッチしてミスマッチが発生。それを生かして持ち込み、今度は自分でミドルレンジのシュートを沈めた。

この状況判断がしっかりできてきたことによって、「パスなのか」「自分で攻めるのか」という見極めの精度も上がっているように思う。これが、開幕4試合の時点からみて最も大きく変化した部分だ。

ピックアンドロールのプレーではビッグマンを使うことも多い。しかしそうすると結局は外国籍選手などのビッグマンがビュフォードにつき、相手のサイズが変わらない。

ビュフォードはミドルジャンパーも得意とし、少しでもスペースがあれば攻めることができる。ガードとのピックアンドロールを仕掛けてミスマッチを作るとより効果的だし、それを好んでいるようにも見える。

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外のシチュエーションも変化
精度を高めて信州の武器に

ビュフォードを起点に状況判断ができているからこそ、第1節福井ブローウィンズ戦や第2節愛媛オレンジバイキングス戦よりもアウトサイドでフリーができ、パスを受け取った選手も思い切りシュートが打てている印象だ。

その中で日本人選手も持ち味を出してきており、好ましい状況となっている。外回りの選手に求められているのはシュートの精度。決め切れないとビュフォード頼みの傾向が強くなるかもしれないが、今は成功率も良好だ。

栗原は特にリズム良く打てている。エリエット・ドンリーやアキ・チェンバースも決めてはいるが、シュートチャンスは多くはないので、チャンスをしっかり生かしていきたい。ビュフォードが作ったパスを高確率で決め切れるようになると、信州にとっては一番の武器となるだろう。

7連勝中でも成長の余地は多々
「真に強いチーム」への道のりは

第5節終了時点で連勝を7に伸ばした。連勝してチームの雰囲気は良くなり、チームのケミストリーや遂行力が少しずつ高まっているのは確かだろう。

ただし、B1のスタンダードで考えた時にはまだ未完成な部分が目立つ。

例えばリバウンドの時にボールを見てしまったり、ボックスアウトをしっかりしていなかったりして相手に取られてしまう場面や、ファンブルやパスミスなどのターンオーバーが散見される。気の緩みから得点されるシーンも見受けられる。

生命線であるディフェンスも同様。例えばピックアンドロールディフェンスは改善の兆しがあるものの、まだ失点が多い。特に福島戦ではインサイドに切り込まれてこそいないが、ズレを作られてミドルジャンパーを沈められるシーンが目立った。

原因の一つは、スクリーンにかかったガードが素早く戻り切れていないこと。ガードポジションの選手はセンタープレーヤーの声掛けで守り方を変える。スクリーンが来るならボールマンに密着し、かわす体勢を整える。

伝達がうまくできなければ適切な守り方ができず、失点に繋がる可能性は上がる。センターが誰にあっても、その現象は発生していた。ほかにもバックカットをされて得点を許すシーンもあるなど、5人のコミュニケーションにはまだ伸びしろが大きい。

今はそれでも勝てているが、B1の強力な相手に対しても遂行できるか。細かく見れば、できていないポイントは実はたくさんある。もちろん勝久マイケルHCがそこに気付かないはずはなく、改善へのアプローチもされているはずだ。

次節はホームゲーム。11月2-3日の第6節で戦う山形ワイヴァンズは、3ポイントシュートの平均アテンプトがB2トップの29.4本。成功率もリーグ4位の35.8%を誇るチームだ。そのため、アウトサイドのコミュニケーションがより重要となるだろう。

今回ピックアップしたビュフォードの変化をはじめ、バスケットボールの試合は多様な観点から解きほぐすことができる。日々成長を積み重ね、真に強いチームに変貌するプロセスを皆さんと共有していきたい。

PROFILE
佐藤 託矢(さとう・たくや) 1983年8月25日生まれ、大阪府出身。東住吉工高(現・東住吉総合高)時代はウインターカップ、インターハイともに4強を経験し、青山学院大ではインカレ準優勝。卒業後は当時JBLの三菱電機からスタートし、千葉ジェッツ、京都ハンナリーズなどを経て2018〜21年に信州でプレーした。引退後はクラブの「信州ふるさと大使」となり、今季からはアカデミースーパーバイザーも兼任。「ど素人バスケ」と出張型パーソナルトレーナーを自主事業とするほか、養護学校などでのボランティア活動も実施している。好きなおつまみは梅水晶。


ホームゲーム情報(11月2-3日、山形ワイヴァンズ戦)
https://www.b-warriors.net/lp/game_20241102_20241103/
クラブ公式サイト
https://www.b-warriors.net/

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