エース上林快人が古巣弾2発 悪夢を振り払う“ABOVE THE LIMIT”の勝ち点1

“ABOVE THE LIMIT”(限界を超えろ)――。スローガンにもつながる「超克」を感じさせる40分間だった。ボアルース長野は2025年7月18日、F1リーグ第8節で立川アスレティックFCに3-3のドロー。アウェイで首位相手に接戦を演じ、堂々と勝ち点1を持ち帰った。出場停止明けの上林快人が古巣戦で2ゴール。エースの活躍とともに、チームの成長を感じさせる一戦となった。

文:田中 紘夢/編集:大枝 令
写真提供:ボアルース長野

残り5秒の“悪夢”を乗り越えて
首位の猛攻をしのいで勝ち点1

立川戦と言えば、忘れられない日がある。

2023年1月27日、前回F1に在籍した2022-23シーズン。残り2試合の状況で迎えたアウェイ立川戦だ。最下位に沈んでいた長野は、残留に向けて最低でも勝ち点1が必要だった。

10分に先制されたものの、その後はパワープレー(GKをフィールドプレーヤーに代えての全員攻撃)を駆使して“時間稼ぎ”。5対4の状況でひたすらボールを保持し、時計の針を進めていく。ロースコアで試合を運びながら同点弾を狙う算段だ。

その思惑どおり、38分に田口友也のゴールで同点。あとは残り2分を守り抜き、同点に持ち込むのみだったが、そううまくはいかなかった。

立川にパワープレーで押し切られ、残り5秒で勝ち越しを許して1-2と敗戦。目前で勝ち点が手のひらからこぼれ落ち、残留が大きく遠のく。最終的には入れ替え戦で敗れてF2降格が決まった。

あれから3シーズン。
F1に返り咲き、“因縁の地”に戻ってきた。

アウェイでの立川戦。会場は当時と同じ立川市泉市民体育館だ。4連勝中の首位を相手に、第2ピリオド早々までに3-1とリードする。

しかし、その後は実力差が現れ始め、一方的に押し込まれる。29分に同点に追いつかれ、残り時間は10分ほど。最後は立川がパワープレーで仕留めにかかってきた。

「若干頭をよぎったけど…」

3シーズン前を思い起こしたのは、エースの上林快人。当時はボアルースから立川に移籍した年で、相手チームのベンチに座っていた。立川の勝利を願いながらも、「これで長野が落ちるのか…」と複雑な思いがあったようだ。

残り1秒まで目が離せない展開となったが、結果的には“悪夢”を振り払った。

立川の猛攻をしのいで3-3のドロー。首位相手にアウェイで勝ち点1を持ち帰った。古巣対決の上林は「とりあえずはよかった」と安堵感を口にした。

当時ヘッドコーチだった山蔦一弘監督も、二の舞にならなかったことを称えた。

「あのときはF1でパワープレーへの耐性がほぼなかったけど、ここ2年はF2でパワープレーを受け続けてきた。スライドだったり声かけのところで非常に落ち着いているし、相手が取りに来たところを返すというマインドまで行けたと思う」

クラブとしての成長を示し、かつての悪夢を振り払った。

7戦6発、得点ランク3位のエース
チームに推進力もたらす上林快人

4分にセットプレーから先制を許したが、第1ピリオドのうちに2-1と逆転。稲葉柊斗のF1初ゴールと、上林快人の古巣弾で勝ち越した。

「前半はやりたいことが全部ハマった。守備で圧力をかけて、自分たちのボールにすることができた」と上林。第2ピリオド早々には最前線でボールを奪い、GKとの1対1を沈める。長野らしく粘り強い守備から攻撃に転じ、3-1と突き放した。

第5節のフウガドールすみだ戦に続いて、2ゴールを決めたエース。古巣戦に「結果で恩返しできればという気持ちはあった。勝てはしなかったけど、自分が2点を取って負けなかったのはよかった」と振り返る。

3-3で迎えた終盤には、ハットトリックのチャンスもあった。左足でパワープレー返しを狙うも、ボールは無人のゴールの左へ。「うまいところにこぼれてきたけど、3点目というのがよぎって焦ってしまった」。

ここまで7試合に出場し、6ゴールはチーム最多。得点ランキングでも3位につけている。

昨季はF2で13ゴールを挙げ、「自信をつけてF1に帰ってきた」。今季の目標は2桁得点だが、すでに射程圏内だ。今後のペース次第では上方修正もあり得る。

最前線でのボールキープと、左右両足からの強烈なシュートが武器。ピヴォとしての能力に加え、山蔦監督は献身性も高く買っている。

「今日は前からボールを奪ってゴールを取ってくれた。ああいうアグレッシブな守備で、チームに推進力をもたらしてくれるのが一番の魅力だと思う」

エースの活躍で首位相手に引き分けた一方、2点のリードを維持し切れなかったのも事実。今季は8試合中5試合で先制しているものの、勝ちきれない試合が続いている。

「自分たちの課題は、前半にできていたことが後半にできなくなってしまうところ。そこにどう向き合うかが大事」と上林。指揮官も「40分で戦うこと」を課題として常に挙げてきた。ケガ人が多い中でも総力を結集し、勝ち切る強さを身につけたいところだ。

アウェイで勝ち点1を積み上げたが、依然として12チーム中最下位に沈んでいる。次節は9位・湘南ベルマーレとのホームゲーム。比較的順位の近い相手に対し、次こそは勝ち点3を奪えるか。


立川アスレティックFC戦 試合詳細
https://www.fleague.jp/score/result.html?gid=96810
F1第9節 湘南ベルマーレ戦 試合情報
https://boaluz-nagano.com/schedule/2025-7-27/
クラブ公式サイト
https://boaluz-nagano.com/
Fリーグ チーム紹介ページ
https://www.fleague.jp/club/nagano/

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