“Beyond now”体現して連覇を狙う コート内外で進化を示すシーズンへ

昨季Vリーグ優勝を果たしたルートインホテルズ信州ブリリアントアリーズが、連覇に向けて船出する。成田郁久美新監督のもと、体づくりとサーブ強化に注力し、技術面でも進化。コート外でも新たな席種を設けるなど、ファンとともに歩む姿勢を強める。10月18-19日の開幕節・ホーム倉敷アブレイズ戦を控え、チームの現状などに迫った。

文:原田 寛子/編集:大枝 史

連覇を見据えて体力づくり
サーブも改めて強化して臨む

もう一度あの歓喜を味わうために――

連覇を目指す信州Ariesは新シーズンに向け、大きな強化を図ってきた。成田郁久美監督が重点を置いたのは、まず体づくりだ。

「昨年の反省という意味で、体づくりにかなり力を入れた。長いシーズンを戦い抜くことはもちろん、今シーズンはプレーオフが2日連続というスケジュール」

「優勝を見据えたうえで考えると、疲労が溜まった中で一番大事な試合を戦い、勝たなければいけない。そこでスタミナは重要になる」

その成果は早くも表れている。現状では昨年に比べてケガで離脱する選手がかなり減ったという。疲労がケガにつながることを防ぎ、全員ができるだけ良好な状態で試合に臨める体制が整いつつある。

技術面での強化ポイントは明確。サーブだ。「今シーズンは改めてサーブも強化している。強いサーブに加えてコントロールできること。これがディフェンスの視点からも機能していけば面白くなる」と指揮官は力を込める。

キャプテンに就任した高野夏輝も変化を実感している。「オフェンス面の練習が増えた。昨シーズンよりもオフェンスに強みを持った選手が多いという印象もある。細かい部分まで指導してもらう機会も増えた」

さらに高野自身は新たな挑戦に臨む。「国体予選が終わったころから監督に『リベロどう?』という話があり、そこからリーグに向けてリベロへシフトチェンジした」。初めてのポジションながら、「開幕に向けて、今まで以上に守備範囲を広くできるよう練習を重ねている」と意欲を見せる。

副キャプテンの佐藤未羽も、選手一人一人の変化を感じ取る。「ボールに対する意欲や一つ一つの練習への意識などが上がっていると、一緒にコートに立っていると特に感じる」。トレーニングの成果について、高野キャプテンも「プレーの質やキレにも違いが出ている」と自信をのぞかせた。

「Beyond now 今を超えていけ」
スローガンに込めた連覇への決意

技術面での進化と同時に、チームの雰囲気も大きく変わったという。成田監督は「雰囲気はいい」と語る。「こう言うと抽象的だが、すごく大事なこと。強いチームで雰囲気が悪いチームはひとつもない」

「雰囲気の良さ」は、選手間のコミュニケーションから生まれる。指揮官は続ける。

「では何が雰囲気の良さを作るかというと、それぞれの取り組みや上下関係なく意見を言える雰囲気であること。信頼関係をもって意見を言えるチーム状況にある」

佐藤も同様の変化を感じている。

「成田監督は選手とのコミュニケーションが多い方。チーム全体だけでなく個々にも声をかけるし、内容も技術面からメンタル面まで幅広く話してくれる」

「そのおかげで選手間のコミュニケーションも増えたし、より明るい雰囲気になっている」

高野は「元々明るいチームだけれど、成田監督に加えて新加入の田中瑠奈選手や目黒愛梨選手も明るいので、明るさも全体的に底上げされた」と話す。

今シーズンのスローガンは「Beyond Now 今を超えていけ」。高野はその意味を説明する。

「今シーズンは連覇が目標。そのためには現在の自分たちの技術、メンタル面、バレーに対する姿勢など、全ての要素で今を上回らないといけない」

「追われるチームは追うより大変。そういった意味でも、全員で『現状を超えていく』という意味が込められている」

成田監督も「昨シーズンよりも粘り強くなっているし、チーム全体で戦っているという一体感にも注目してもらえたらうれしい」と成長の実感を口にする。

副キャプテンの佐藤は「まず一人で悩まないようにしたいし、選手一人一人のことも今まで以上にちゃんと見ていきたい。抱え込んだり悩んだりしているように見えなくても、監督やコーチに言いにくいことがある可能性もある」と目を配る。

地域と歩む取り組みも多種多彩
新たな席種設定とシェアサイクル

コート外でも、信州Ariesは積極的な変化を見せている。ホームゲームをより快適に、より多くのファンに楽しんでもらうための取り組みだ。

まず注目すべきは、アクセス面での新たな試み。昨シーズン同様の無料シャトルバスに加え、今シーズンは「シェアサイクル」が導入される。

試合期間中の10-11月は会場外に臨時シェアサイクルポート「信州ブリリアントアリーズ応援ポート」を設置し、上田電鉄別所線の大学前駅と下之郷駅からのアクセスが可能となる。

上田市と上田地域シェアサイクル活用推進協議会の3者で「上田地域シェアサイクル×信州ブリリアントアリーズ パートナーシップ協定」を締結。協力を得てホームゲームと観光の活性化を図る。

「試合を見てほしいのはもちろん、自転車で来場することで新たな信州の良さも見てほしい。相乗効果を期待したい」とクラブ担当者は話す。

観戦スタイルも進化。今シーズンは「ファミリーシート」と「カメラ撮影席」という2種類の観戦席を新設する。

ファミリーシートは4人掛けのベンチタイプシートで、アリーナ席に設置される。「小さいお子さんにもアリーナでバレーボールの魅力と迫力を味わってほしい」という思いから生まれた席だ。最大4人まで座れるが、そのうち大人は2人まで。「お子さんが試合を見に来る敷居を低くしたい」という配慮が込められている。

カメラ撮影席はひな壇上に2席分のスペースが確保され、このエリアでのみ一眼レフカメラで撮影ができる。スマートフォンなどでの撮影は従来通り、それ以外の席でも可能という。

担当者は意図を説明する。

「Vリーグ機構とともに、チームは『盗撮禁止』を強く打ち出している。撮影ルールをしっかり守っていただくことで、女性アスリートを守るという考えがある。そのうえで、選手たちの良いプレーを撮影したい方が安心して撮影できる席として新設した」

さらに、来場者全員にスティックバルーンのプレゼント、1階アリーナ指定席購入者には週替わりでデザインが変わる応援ボードのプレゼントも用意。「選手がプロデュースしたグッズ販売も計画中だ。何度でも試合に足を運びたくなるような企画を続けていきたい」と担当者は力を込める。

こうした取り組みでコートの内外を接続し、信州Ariesのファン「ブリアリスト」との相互作用を生む。成田監督は語る。

「私たちのチームは自分たちが頑張っているだけでなく、地域の方やファンの方の応援があって初めて完成するもの」

「自分たちの調子が悪い時には応援が後押しをしてくれる、逆に私たちのプレーで皆さんを元気にしたい。そういった意味で皆さんと一緒に戦うと考えている」

連覇を目指す信州Aries。コート内外で進化を遂げ、新たな姿で帰ってくる。


チーム公式サイト
https://www.briaristcamp.com/
Vリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/v_women/team/detail/484


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