熊本県宇城市出身の米村尚也 “第2の故郷”から模索する支援の形

令和8年熊本地震で最大震度7の揺れに見舞われた熊本県宇城市。同市で生まれ育ち、現在はフットサルF1リーグのボアルース長野でプレーする米村尚也が、地元の復興に向けて立ち上がった。2026年8月9日、長野市の長野運動公園総合体育館でチャリティーフットサルを開催。ボール一つで支援の輪を広げた。募金総額は293,200円にも及び、全額を宇城市に寄付する予定だ。遠く離れた“第2の故郷”から故郷に思いを馳せている。

文:田中 紘夢

変わり果てた地元の姿に絶句
長野から「できること」を模索

7月28日の午後4時27分ごろ、熊本県熊本地方を震源とする最大震度7の地震が発生した。震度7を記録したのは宇城市と氷川町。宇城市出身の米村は長野市内の職場にいたが、家族のグループLINEでのやりとりを見て異変に気づいた。

食器が散乱した熊本県宇城市の実家=米村尚也提供

「みんな大丈夫か」

10年前の平成28年熊本地震でも宇城市は震度6弱を記録したが、米村はシュライカー大阪に所属していたため現地にはいない。今回も当時と同じくSNSで状況を把握。家族の安否を確認している間は「気が気じゃなかった」という。

実家は家具が倒れて食器が散乱し、宇城市内で別居する弟の家族は当日に避難所へ。氷川町に住む末っ子の弟も被害を受けた。それでも大事には至らず、米村は胸をなでおろした。

地震の揺れで屋根瓦も崩れ落ちた=米村尚也提供

小中学校時代に登下校していた道は地割れし、幼少期の思い出が詰まったイオンモール熊本(嘉島町)も爆発事故で崩壊。変わり果てた地元の姿に「なんとも言えない気持ちになった」。現在も余震や復旧作業が続いており、気は休まらない。

米村は所属するボアルース長野での活動が続く中、遠く離れた長野県から「できること」を模索した。

震災直後に迎えた8月2日のアウェイゲームでは、募金活動を実施。相手の名古屋オーシャンズに所属する熊本県出身の松川網汰、本石猛裕とともに会場で呼びかけると、193,135円の支援金が集まった。

クラブの垣根を越えて支援の輪が広がり、「フットサルファミリーの温かさを改めて感じた」と感慨に浸る。

戦友の力を借りてイベント開催
「動くことに意味がある」

フットサルファミリーの温かさは、長野県でも広がった。

8月9日に長野市の長野運動公園総合体育館で開催したチャリティーフットサル。子どもから大人まで総勢50人が参加し、募金総額は293,200円にも及んだ。ボアルースのサポーターだけでなく、地元の農家も米や桃を持ち寄るなどして力を添えた。

告知を始めたのはわずか1週間前。「フットサルできる人数が集まれば…」と淡い期待をしていただけに、「ここまで集まるとは」と驚きを隠せなかった。ボアルースの同僚である中村亮太、岡本生成、橋野司、田中智基の4人の協力も経て成功裏に終えた。

同イベントは、長野市で個人参加型フットサルを運営する「ずくサル」との共催で行われた。ずくサルの代表を務めるのは、22-23シーズンまでボアルースに所属していた田口友也さん。米村とは21-22シーズンにボルクバレット北九州から“同時加入”した間柄でもある。

田口さんは宮城県仙台市出身で、2011年に東日本大震災を経験した。当時はライフラインが止まり、「食料や水を集めるのに必死だった」と思い返す。

それだけに、今回の熊本地震も決して他人事ではない。ましてや戦友である米村は宇城市出身。「大丈夫かな…」と心配を寄せていたところ、本人からチャリティーフットサルの申し出があった。「自分にできることなら協力したい」という思いで実現に至った。

「ヨネ(米村)とは職場も一緒で通じ合える仲だった。自分一人ではここまでは動けなかったので、声をかけてくれてありがたい。どれだけの効果があるかは分からないけれど、自己満足でも動くことには意味があると思う」

同郷の後輩から受けた刺激
「活躍して熊本に思いを」

アスリートには人の心を動かす力がある。

8月2日に行われた長野戦サッカー選手権大会決勝。熊本県山江村出身の樋口叶がゴールを決め、AC長野パルセイロが松本山雅FCに2-0と勝利した。樋口は試合後に「実家にも被害があったので、自分が活躍して少しでも勇気を与えられればと思っていた」と明かした。

米村は樋口よりも8歳上だが、同郷ということもあってプライベートでも仲が良い。競技は違えど、後輩の活躍に心を動かされた。

「性格的に感情を表に出すようなタイプではないだろうけれど、震災直後ということで感じるところもあったと思う。本当に良い刺激をもらえたので、自分も活躍して少しでも熊本に思いを届けられたら」

ボアルースに加入して今季で7シーズン目。「第2の故郷」と慕う長野県から、地元に思いを馳せている。

F1リーグは現在、1カ月間の中断期間にある。再開初戦は9月6日。信州スカイパーク体育館を舞台に、松本市で初開催のホームゲームを行う。クラブは募金活動を予定しており、米村も引き続き支援の輪を広げていくつもりだ。


クラブ公式サイト
https://boaluz-nagano.com/
Fリーグ チーム紹介ページ
https://www.fleague.jp/club/nagano/

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