サトタクNavigates バスケット・ラビリンス(4)「稀代のタレント 狩野富成の可能性」
バスケットボールは豪快で派手なプレーが目を引く一方、コート上の戦術面に目を向けると非常に繊細で難解でもある。信州ブレイブウォリアーズはどんなバスケットを目指していて、現在地はどこなのか――。2018年から3シーズン、勝久マイケルHCの元でプレーした佐藤託矢がナビゲートする。第4回は最近プレータイムを伸ばしている稀代のタレント「狩野富成の可能性」について論じる。
構成:芋川 史貴、大枝 令
成長から生まれた新たな課題
攻守ともに十分な伸びしろ
狩野富成の成長が止まらない。
チーム最年少の23歳。公称206cm105kgの恵まれた体格で、豪快なダンクやブロックを披露する。それでいてよく走る。身体の使い方を見てみると器用な選手だということが分かる。
開幕戦の福井ブローウィンズ戦で見たときは、彼自身プレシーズンでは出場していなかったこともあり、正直に言うとディフェンスのルールが徹底できていなかった。「高さがあるからなんとかなっている」という印象だった。
ただ、ここ数試合はウェイン・マーシャルの欠場や渡邉飛勇が代表合宿に参加していたこともあって、プレータイムを獲得。11月10日の富山グラウジーズ戦・第2戦以降の7試合の平均プレイタイムは16分。ブースターの皆さんも成長が目に見えて分かるのではないだろうか。
しかし、僕もセンターとしてプレーをしていた。同じポジションだからこそ見えるものもあり、実際に成長した部分だけではなく、課題もまだまだ山積みだ。そのポテンシャルが素晴らしいからこそ、成長を期待しながら伸びしろを論じていきたい。
まず成長した部分から挙げていくと、ブロックのタイミングが改善された。ただジャンプすればいいと思われがちだが、それに至るまでに多くの駆け引きが行われる。ディフェンスの立ち位置、相手とのタイミング。その先に良いブロックが待っている。
攻撃での味方との合わせもそう。タイミングが良くなってきており、オフェンス面でチームメイトとの連係が向上している。勝久マイケル・ヘッドコーチ(HC)が求める細かい部分の上達が見られる。
一方で課題となるのは、フィジカルやフットワークの部分、身長に頼ったディフェンスをしている部分だ。11月30日と12月1日に行われた神戸ストークス戦でも、相手の横の動きについていけず失点をしたりファウルを吹かれたりするシーンや、簡単に得点を奪えなかったシーンが見られた。
例えば神戸との第2戦、第1クォーター(Q)残り6:17の場面。トップでボールを持ったモリス・ウデゼのアタックに対し、狩野は横の動きが追いつかずにバスケットボールカウント。これはディフェンスの立ち位置の問題やフットワークの問題が見られた。
他にも同じく第2Q残り7:59の場面。左サイドでネイサン・エイドリアンとエリエット・ドンリーの1対1。この場面では狩野が素晴らしいブロックを見せて相手を守った――ように見えるが、まだ伸びしろが見られる。
プレーを細かく解きほぐすと、まずエイドリアン対ドンリーのミスマッチが発生。ここでドンリーは相手をミドル方向(コートの内部)ではなく、外側に誘導しているのが分かる。ミドル側にいかせないようシフトするルールで、本来は相手がターンした瞬間にダブルチームに行くのが理想の形ではある。
結果的にはブロックしたが、まだまだ身長任せな部分とも言える。
オフェンスでは特にフィジカル面が気になった。同じく第2Q、残り6:00の場面。左コーナーの三ツ井利也からフリースローライン辺りでボールを受け取ると、そのままアタックをして神戸の中西良太からファウルをもらった。
狩野は中西に一度アタックして、ワンステップを踏んでシュートしたが、できれば最初のアタックで相手の体勢を崩して簡単に2点を取りたかった。このマッチアップが屈強な外国籍選手だったら、おそらくフィジカルで負けていたかもしれない。
ただ、それは本人も自覚しているだろう。同じく第2Q、残り5:15の場面。三ツ井からゴール下でパスを受けるが、外国籍ビッグマンが2人寄ってきていることが分かると外にボールを戻した。
これも良い判断とも言えるが、僕としてはゴール下で力強いアタックを要求したい。ボールをもらった位置は悪くなく、ワンドリブル・ワンステップで押し込んでいけるシチュエーション。しかし、最初からその選択肢を諦めていたように映る。
このように「フィジカルの強化」と「横の動きへの対応」、そして「個人で打開できるシュート力」や「攻撃の起点となれるスキル」など、身につけていきたいスキルは多い。それらを体得できれば、飛躍的なスケールアップができるだろう。
そもそも、一般的な日本人ビッグマンにここまで求めるのは酷だろう。しかし彼は身長に見合わぬクイックネスと走力があり、身体の使い方もしなやかで器用だ。ポテンシャルを顕在化させれば、将来的な日本代表入りも十分に狙える。日の丸を背負って海外の名だたる選手と戦うためにも、そう育ってほしいと願っている。
PROFILE
佐藤 託矢(さとう・たくや) 1983年8月25日生まれ、大阪府出身。東住吉工高(現・東住吉総合高)時代はウインターカップ、インターハイともに4強を経験し、青山学院大ではインカレ準優勝。卒業後は当時JBLの三菱電機からスタートし、千葉ジェッツ、京都ハンナリーズなどを経て2018〜21年に信州でプレーした。引退後はクラブの「信州ふるさと大使」となり、今季からはアカデミースーパーバイザーも兼任。「ど素人バスケ」と出張型パーソナルトレーナーを自主事業とするほか、養護学校などでのボランティア活動も実施している。好きなおつまみは梅水晶。
ホームゲーム情報(12月7-8日、愛媛オレンジバイキングス戦)
https://www.b-warriors.net/lp/game_20241207_20241208/
クラブ公式サイト
https://www.b-warriors.net/