6.1のF1開幕戦に備えるボアルース長野 幹を太くして示す“3年分の進化”

満を持して国内最高峰の舞台に返り咲く。昨季のフットサル・F2リーグで無敗優勝を遂げたボアルース長野。16勝2分という圧倒的な成績を残し、3シーズンぶりのF1復帰を決めた。前回のF1在籍時は4シーズン連続の最下位に終わったが、もう同じ轍は踏まない。2025年6月1日のアウェイでの開幕戦に向けて、地に足をつけながら日々を送っている。

文:田中 紘夢/編集:大枝 令

F2で培った守備力がベース
三笠主将「厳しく要求し続ける」

13勝2分1敗、16勝2分0敗――。
F2で過ごした直近2シーズンは、いずれも圧倒的な成績を収めてきた。

この間は山蔦一弘監督が継続して指揮を執り、選手の顔ぶれもほぼ変わらない。スタイルも一貫したものがある。

昨季は18試合を戦い、失点数はリーグ最少の「24」。2位の「43」を大きく引き離している。1試合平均1.3失点というのは、得点が入りやすいフットサルにおいて驚異的な数字と言える。

まずは堅い守備から入り、ボールを奪ってトランジションやセットプレーから得点を決める。昨季は定位置攻撃(組織的に整った守備に対する攻撃)の時間が長かったこともあり、トランジションからのゴールは少なかったが、F1となれば守勢に回る時間も増えてくるはずだ。

「とにかく積み上げてきたものをぶつけること。それに加えて今季は常にリードしている状態ではなく、劣勢に立たされる時間もあると思う。そこからトランジションだったりパワープレー(GKを前線に上げて5人全員での攻撃)だったり、ゴールの形を増やさないといけない」

そう話す山蔦監督は、チームの中核を担うキャプテンに三笠貴史を指名。昨季も選手間投票で重責を任された29歳に、「シーズンが進むにつれてすごくキャプテンらしくなった。今季は僕からセミ(三笠の愛称)に任せたい思いがあった」と信頼を寄せる。

三笠はフウガドールすみだとバルドラール浦安でF1を戦い、Fリーグ選抜(2020年のFIFAフットサルワールドカップに向け、若手選手の育成を目的に創設。2018-19シーズンから2季限定でF1参戦)のキャプテンも経験。3シーズンぶりのF1挑戦に向けて「危機感しかない。自分も含めて全然まだまだ」と本音を漏らす。

「僕らは一番下から始まる立場。紅白戦で良いプレーをして満足しても、そのレベルはリーグで一番下であって、何も価値はない」

「とにかく厳しく要求し続けること。僕だけじゃなくて副キャプテンもいる中で、去年にはないような連携を取っていきたい」

副キャプテンは上林快人、中村亮太、橋野司と、自ら指名した3人。年齢や周囲との関係性も考慮しながら決めたという。昨季の主力たちと手を取りながら、チームに厳しさを植え付ける構えだ。

“立川の秘密兵器”がボアルースへ
2年越しのラブコールに応える

キャプテンの4人に限らず、昨季の主力が揃って残留。そこに新戦力を7人加え、20人体制となった。

新戦力7人のうち、3人は経験の浅い大卒選手。「未来への投資ではないけれど、ポテンシャルを重視した」と山蔦監督は狙いを明かす。チーム内競争を促す意味でも、若手の突き上げは欠かせない。

その上で「即戦力の選手を獲得できた」。筆頭株として挙げられるのは、F1の立川アスレティックFCから加わった岩本大輝だ。“立川の秘密兵器”とも称された24歳で、「我々にはいないタイプ」と評する。

同じ左利きでも田中智基はパス、稲葉柊斗はアジリティを武器としているが、岩本の特長はドリブル。「これまで守備を重視して戦ってきた中で、攻撃の部分でクオリティをもたらしてくれると思う」。

岩本が加入するきっかけとなったのは、2023-24シーズンのリーグ開幕前に行われたオーシャンカップ。ボアルースと立川が3回戦で顔を合わせると、サテライトチームから昇格したばかりの岩本が初スタメンを飾り、得意のドリブルで脅威をもたらした。

結果的には4-0で立川が快勝。岩本は試合後、立川時代にチームメイトだった長野のエース・上林からこう声をかけられる。

「お前、長野の選手と監督からめっちゃ評価されてるぞ。この調子で頑張れ」

その言葉が後押しとなり、岩本はF1初挑戦のシーズンで奮闘。終盤にはボアルースからオファーを受けたが、監督が代わるタイミングということもあり、「もう1年チャレンジしたい」と断りを入れた。

そして、昨季の終盤に再びオファーが届いた。立川でジョーカー的な起用が続いていた岩本は、出場機会を求めて移籍を決断。2年越しのラブコールに応えたわけだ。

「見返したいという思いもあったので、もう一回オファーをいただいたときはほぼ即答だった。長野は戦ったときにチームとしての統一感を感じたし、守備の粘り強さもある。自分は攻撃の選手なので、そこにプラスアルファを加えたい」。

サッカーもそうだが、フットサルにおいても左利きは重宝される存在。今季は岩本、田中、稲葉の3人に加え、松本大学サッカー部から加わった浅田琉星もレフティーだ。

浅田はフットサル未経験ではあるものの、「横20mのパスはスピードがあって一番綺麗。サッカーのスキルとして、バチンと長いボールを蹴れるのは魅力」と指揮官。7人の新戦力を加えたことによって、チームとしてのバリエーションが広がった。

上位進出、代表輩出を見据えて
“落ちない長野”から脱却なるか

チームは4月8日に始動し、5月は同カテゴリーの相手との練習試合を多数組んでいる。アウェイゲームも意識して2度の関東遠征を行い、公式戦さながらの緊張感を体感。自分たちの力量を測るバロメーターにもなるだろう。

F1は5月31日に開幕し、ボアルースの初戦は6月1日。アウェイでリーグ最多優勝を誇る名古屋オーシャンズに挑む。下馬評では名古屋が圧倒的有利と見られているだろうが、新戦力の岩本は「ジャイアントキリングを起こせるようにチーム一丸となって頑張りたい」と意気込む。

目標は謙虚に「残留」の2文字。就任3シーズン目の指揮官からすれば、「その先に(6位以内による)上位リーグ進出だったり、日本代表選手の輩出がある」。

前回のF1在籍時は4シーズン連続の最下位に終わりながら、入れ替え戦での勝利や相手のライセンス未交付などによって、奇跡的に残留してきた。その際は“落ちない長野”という不名誉な二つ名もついて回ったが、それはもう過去の話だ。

「F1で戦うための準備というのは、ここ2シーズンでずっとやってきた。それがうまく形になれば」と山蔦監督。ボアルースらしく群れになって泥くさく、地に足をつけて戦い抜く。


チーム公式サイト
https://boaluz-nagano.com/
Fリーグ チーム紹介ページ
https://www.fleague.jp/club/nagano/

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