“ビュフォード”と書いて“刺激”と読む 2年目の2人が明かす胸中

決して取材者が「言わせた」わけではない。ともに在籍2年目を迎えたエリエット・ドンリーと小玉大智は、新加入のペリン・ビュフォードへのリスペクトを口にした。一挙手一投足に注目が集まるB1得点王と日々を過ごす中で、唯一無二の刺激を受けているという。それを自らの力にも変えながら、2年目の飛躍を虎視眈々と狙っている。

文:大枝 令/編集:芋川 史貴

極上の“質問権”を得たドンリー
「スポンジのように吸収する」

「やはりペリンは特別な選手。学ぶことがいっぱいある」

意識の変化について質問をぶつけると、エリエット・ドンリーはそう切り出した。自身はSF/PFの登録だが、場合によってはハンドラーも務める。天皇杯第2ラウンド・川崎ブレイブサンダース戦でもそうだった。

つまり、ポジションがペリン・ビュフォードと完全に重なる。もちろんチーム内競争の相手であるのが大前提だが、多くを吸収する千載一遇のチャンス。チームメイトでありながらも、「特別な選手」という言葉が自然と出るほどにだ。

「そういう素晴らしい選手と一緒にプレーできる機会はなかなかないから、スポンジみたいに何でも吸収できるよう意識している。練習前でも試合中でも、何が見えているのかを知りたいと思っている」

「選手としては違うけれど、学べるところはたくさんある。コミュニケーションは僕の方から声をかけて『こういうときは何が見えてるの?』とか、そういう質問をしている」

もちろん、聞いて知ってすぐに体得できるスキルではないのは十分に承知済み。それでも、問わなければわからない感覚の世界に触れることができるのは大きい。期せずして「すぐ質問する権利」を得られたのだから、行使しない手はない。

「素晴らしい選手なのでなかなか真似をするのも難しいし、スキルセットもペリンの方が断然上。だけど身長もそんなに変わらないので、できることはやりたいと思っている」

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ディフェンスの改善期す小玉大智
「マッチアップがありがたい」

2023年12月、松江市総合体育館。
島根スサノオマジック戦のコートに立った小玉大智は、マッチアップしたビュフォードに衝撃を受け、心の中で一つの誓いを立てていた。

「あの選手を止められるようになりたい。そうすれば、Bリーグの中でもトップクラスのディフェンスができる選手になれる」

そもそもプロ1年目の昨季、クイックネスのある相手についていけず後手を踏んでいた。だからこそ今季はオフをほぼ返上して5月から始動。自主的に瞬発系の強化に取り組んでいた。「PGにつけず、簡単に抜かれてしまう。いいときはいいけれど不安定な部分も多かったので、それをできるだけなくしたい」

そんな矢先の8月5日、ビュフォードの加入が発表された。目標とすべき高みに君臨していた選手に対し、毎日のように挑みかかることができる。「信州に来てくれたので近くで見られるし、マッチアップもできる。すごくありがたい」。自然と声も弾む。

「ペリンはバスケに関してはすごく熱心だし、練習中もコミュニケーションをしっかり取る選手だと思う。確かに少し独特な雰囲気はあるけれど、僕はすごくリスペクトしている。いいところをまねできるようにしたい」

そう話す小玉。先入観などはいったん脇に置いて、コート内外で理解のベクトルを互いに伸ばしていく。「シーズンが始まって、あくまで自分の目で見て判断したい」。それは勝久マイケル・ヘッドコーチ(HC)がチームに等しく求める要素の一つだ。決して腫れものに触るわけではない。

2人ともそれぞれ勝負のシーズン
ペリンを媒介に爆発的な成長へ

“ペリン・ビュフォード”という名の刺激を、日々の練習から享受する今季の信州。特に若手や中堅にとっては、この上ない環境と言えるだろう。

そもそも、たとえビュフォードの加入がなかったとしても、2年目の2人は今季に懸けていた。

昨季、大阪エヴェッサから加入したドンリー。出場49試合のうち33試合はスターターだったが、「(勝久)マイケルさんのバスケは考えることが多いので、正しい判断やプレーを1年目は結構間違えていたときもあった」と振り返る。だが一通りインストールされた今季は違う。

「5年目なのでリーダーとしてもっとステップアップしたいし、若手ではないので結果も大事。マイケルさんが言う通り、日々成長するなら絶対に優勝できるチームだと思う。与えられた役割の中で頑張りたい」

大卒2年目のブレイクを狙う小玉も同様だ。練習生から契約を勝ち取った昨季について、「1勝の価値がどんどん高まってくる時期はプレータイムが少なかった。コーチの信頼を勝ち取れなかったのがすごく悔しかった」と振り返る。

「エナジー」「ハッスル」といった側面がクローズアップされていた選手。もちろんその要素もチームには必須だが、「これからプロとして生きていく中で、エナジーだけではダメ。できることを増やして強みをもっと押し出して、自分の価値を高めていきたい」と力を込める。

2021-22のジョシュ・ホーキンソン。
22-23の岡田侑大、熊谷航、前田怜緒。

いずれも加入2年目に大きく成長した面々だ。勝久HCが作り出すディティールへのこだわりに呻吟しながらも、1年目を経て大きく様変わりした。

そして今回もまた、2年目の勇士が刃を研ぐ。

指揮官も、その飛躍に期待を寄せる。「やっぱり2年目の『継続性』は本当に大事だと改めて思う。理解が深まったことで考えすぎずにプレーできているし、周りへのアドバイスがどんどんできるようになっている。そういうリーダーシップを見せているのもうれしい」

しかも今回は、ビュフォードまでいる。
渡邉飛勇とアキ・チェンバースの日本代表経験者もそうだし、B2歴代1位の得点数を誇るテレンス・ウッドベリーも。2年目の2人は豪華なロスターの中に埋もれず、爆発的な成長を示せるか――。

勝負のシーズン。10月5日、福井ブローウィンズとのアウェイ戦で幕を開ける。


Bリーグ 選手個人成績 エリエット・ドンリー
https://www.bleague.jp/roster_detail/?PlayerID=32984

Bリーグ 選手個人成績 小玉 大智
https://www.bleague.jp/roster_detail/?PlayerID=51000323

Bリーグ 選手個人成績 ペリン・ビュフォード
https://www.bleague.jp/roster_detail/?PlayerID=33094

Bリーグ チーム紹介ページ
https://www.bleague.jp/roster/?year=2024&club=716&p=&c=&o=random&tab=2

クラブ公式サイト
https://www.b-warriors.net/

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