サトタクNavigates バスケット・ラビリンス(3)「GAME1の入り方と修正力」

バスケットボールは豪快で派手なプレーが目を引く一方、コート上の戦術面に目を向けると非常に繊細で難解でもある。信州ブレイブウォリアーズで2018年から3シーズン、勝久マイケルHCの元でプレーした佐藤託矢がナビゲート。3回目は、浮き彫りになってきた「GAME1の入り方と修正力」を議題とする。

構成:芋川 史貴、大枝 令
写真:星 智徳

エナジー感じさせず第1戦で黒星
徹底的に排除したい心のスキ

11月2日の山形ワイヴァンズ戦・第1戦で連勝が7でストップ。その後の富山グラウジーズ戦、青森ワッツ戦も同様に第1戦を落としている。一方で第2戦は高い修正力を見せ、開幕節以降は連敗していない。

負けた試合に共通して言えることがある。ディフェンスのプレッシャーのなさ、ルーズボールを奪う闘争心がかなり低いことだ。どちらのチームもボールを保持していない50-50のルーズボールへの初速が遅い。これらは頑張れば誰でもできる部分だし、そこがエナジーを一番感じられる要素でもある。

「エナジー」という言葉は皆さんも耳にタコができるぐらい聞いていると思う。「分かっているのになぜできないのか」。そう疑問に思う方もきっと少なくないだろう。その理由の一つとして、心のどこかに隙が生じている可能性は否定できない。

勝久マイケルヘッドコーチ(HC)も山形との第1戦後に「我々はタレントのあるチームで、どこかで『スイッチを入れれば勝てるだろう』という気持ちがあるように見える。だから続けてこういうスロースタートがあるのだと思う。そういった勘違いはあるかもしれない」と発言していた。

僕も現役時代に似たような経験をしてきたから、その心境はすごく分かる。ただ、相手がB1のトップのチームだった場合、そのような気持ちで試合に臨むだろうか。実際に第2戦ではチームの雰囲気や遂行力がガラッと変化することから、気持ち(メンタル)の部分がチームの最大の課題だと感じる。

またディフェンスに重きを置く信州にとって、エナジーを持ってプレーすることは「戦術」ではなく、「土台」となる当たり前のことだ。それにも関わらず、同じ内容の試合を続けてしまっていることは反省点だと感じる。

先発で出る選手がチームルールを遂行できていなかったら、チームメイト同士で指摘し合わなければいけないし、それぞれの選手がリーダーシップを持ってチームを正しい方向に向かせないといけない。その選手間での指摘の少なさ、言いたいことを言い合える関係作りもこれからの課題だろう。

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勝久HCの緻密なスカウティング
GAME2ではきっちり修正をかける

チームは試合に向けて多くの準備を行う。例えば土日の試合であれば、火曜日に前の試合で出た課題を映像を使って確認。次の対戦チームのデータ(スカウティングレポート)がコーチ陣から渡される。そして水曜日からそのデータを基に対策を行い、試合に備える。
 
勝久HCのバスケットは一切の妥協がない。立ち位置が一歩違うだけでも、それは重大な修正ポイントになる。そのように細かい修正点までを洗い出し、比較的長い時間をかけて選手たちに共有する。

スカウティングレポートの量も膨大だった。よく使うフォーメーションはもちろん、シーズン中に1回しか使っていないフォーメーションの情報も書かれている。あまりのボリュームに、僕はそれを「聖書」と読んでいた。僕はあまり覚えるのが得意ではなかったから、よくコーチに怒られていたのはここだけの話だ。

そのバイブルはリスペクトにあふれてもいる。対戦相手の主力選手だけでなく、プレータイムがまったくない選手の特徴までもが詳細に記載されている。それだけ勝久HCは相手にリスペクトを持ちながら徹底的に準備し、試合に臨んでいるのだ。

そして1日目の試合が終わるとすぐに分析を始め、2日目の午前中にそれをビデオミーティングで共有。ウォークスルーで動きを確認してから第2戦にまた挑む。

そのため選手のプレーを見ていると、第1戦ではうまく遂行できていないプレーを、第2戦ではしっかり修正できているシーンもよく見られる。

負けた試合では単調なピックアンドロールがスカウティングされて攻めづらくなっている傾向。しかし第2戦だとしっかりボールシェアできてズレが生めるようになっている。

例えば11月17日に行われた青森との第2戦では次の2つのプレーが目を引いた。1つ目は第2クォーター(Q)残り9分13秒。

ビュフォード(#2)からピックアンドロールが起こり、テレンス・ウッドベリー(#30)→アキ・チェンバース(#15)。渡邉飛勇(#34)に渡り、ビュフォードのハンドオフからのドライブアタック。よくボールが動いたことでディフェンスをずらせて得点に繋がった。

テンポ良くボールを回してディフェンスをズラす

2つ目は同じく第2Q、残り7分36秒のシーンだ。生原秀将(#46)のピックアンドロールからペイントアタックでディフェンスを引き付ける。外でフリーになった栗原ルイス(#12)の3ポイントシュートを演出。いずれのプレーも第1戦では出ていなかったプレーだ。

生原(#46)のペイントアタックから栗原(#12)が3ポイントを放つ

このように第2戦を落としていないのは、コーチ陣の見えない働きやそれを忠実に遂行する選手たちのすごさや成長が見て取れる。これまでに指摘してきた戦術面の部分は少しずつだが成長している。だからこそ、それを第1戦から発揮しなくてはならない。それが15試合を終えた今の課題だ。

次節はホームゲーム。11月25-26日の第9節でバンビシャス奈良と対戦する。26日にはキッズドリームデーも行われ、多くの子どもたちの入場が見込まれる。

選手も人間だ。アップダウンはもちろんある。その中でも応援してくれる多くの人に対してチーム全員で戦う姿勢を見せ、日々成長を積み重ねていってほしい。

PROFILE
佐藤 託矢(さとう・たくや) 1983年8月25日生まれ、大阪府出身。東住吉工高(現・東住吉総合高)時代はウインターカップ、インターハイともに4強を経験し、青山学院大ではインカレ準優勝。卒業後は当時JBLの三菱電機からスタートし、千葉ジェッツ、京都ハンナリーズなどを経て2018〜21年に信州でプレーした。引退後はクラブの「信州ふるさと大使」となり、今季からはアカデミースーパーバイザーも兼任。「ど素人バスケ」と出張型パーソナルトレーナーを自主事業とするほか、養護学校などでのボランティア活動も実施している。好きなおつまみは梅水晶。


ホームゲーム情報(11月25-26日、バンビシャス奈良戦)
https://www.b-warriors.net/lp/game_20241125_20241126/
クラブ公式サイト
https://www.b-warriors.net/

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