須坂の地に刻んだ“蒼竜の爪痕” ストレート2連勝で笑顔と涙のフィナーレ

最後はホームで、笑顔と涙のシーズン終幕を迎えた。2025年2月22-23日からのアウェイ8連戦で8連敗と、トンネルに迷い込んでいた長野GaRons。しかし、ホームに東京ヴェルディを迎えた3月22-23日のラストゲームは、ともにストレート勝ちで2連勝。新Vリーグに挑んだシーズンを白星で締めくくり、訪れたファンとともに喜びを分かち合った。
文:原田 寛子/編集:大枝 令
シーズンを戦い抜いた集大成
サーブで崩して成長示す2連勝
「明日はこのメンバーで戦う最後の試合。全員で悔いの残らない試合をしたい」
3月22日のGAME1、長野GRは連敗を8でストップ。試合後の取材に対し、アウトサイドヒッター(OH)川角純平は熱のこもった言葉を口にしていた。

その言葉どおり全員が成長した姿を示した。23日、今シーズンラストの試合。ベンチ外のメンバーも含めた全選手がコートに集まり、試合前の円陣を組む。
一段と大きい気合の雄叫びが、会場の拍手と共鳴した。
ゲームは一進一退の攻防。それを制す第一手となったのは、磨いてきたサーブだった。
16-15からOH小林慧悟のサーブで崩して連続ブレイク。最後は24-21からミドルブロッカー(MB)小林雅治のブロックで第1セットを先取した。
第2セットはGAME1に続いて小林雅のサーブが光る。

「昨シーズンまでの得意なコースに打つサーブでは、レシーブが得意な選手がいれば上げられる。相手を崩すサーブを打つことを考えて初心に戻り、フォームや力加減を見直して揺さぶるサーブを打とうと思った」
その言葉通り、狙いを定めたサーブで崩して8-8から3連続ブレイク。交代出場のOH奥原蓮も、ネットインでノータッチエースを取る。チーム全体として緩急をつけたサーブで揺さぶり、セットを連取した。

第3セットも勢いは止まらない。小林慧、セッター(S)志水一哉、オポジット(OP)常田将志のサーブから計4回の大量ブレイク。若手からベテランまで活躍して25-11とした。
2日間ともにストレートで退け、有終の美を飾った。シーズン通算のサーブ効果率は東地区8チーム中、優勝した北海道イエロースターズに続く2位(5.9%)。特にGAME1は特に12.8%という高水準の数値をマークした。

ホームゲームで成長を示す締めくくり。篠崎寛監督は「一生懸命やってきたサーブとブロックが成果として表れた」と納得の表情を浮かべた。
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退団と引退の4選手も全員が躍動
ホームで舞った“ラスト・ダンス”
「高井(大輝)選手の代わりにコートに立って、最後に2連勝できたことで少し恩返しができたと思う。引退は悲しい気持ちがあるが感謝しかない」

今季多くの試合でトスを上げ続けた志水は、高井への感謝を口にする。その言葉どおりシーズン終盤は、メンバーの去就などが明らかになる季節。長野GRからは今季限りでチームを離れる4選手が発表されていた。
今シーズンで引退するのがリベロ(L)松下祐太とS高井大輝。自由契約で退団を決めたのは、OH荻野颯大とOP渡邊寿俊だった。
ラストゲームでは4人全員が試合に出場し、最後のプレーを見せた。

スタッフとして支えた時期もある松下と、同時期をともに戦った高井がプレーを称え合う。
ワンポイントの出場機会を生かし切れていなかった荻野が、力強いジャンプサーブからブレイクする。

シーズン序盤はケガに泣いた渡邊が、ブロックポイントを挙げるなど躍動する。
青のユニフォームを着た最後のプレー。コートで全てを出し切る観客席では涙をぬぐうファンの姿も見られた。

試合後のセレモニーでは各選手が挨拶。今シーズン副キャプテンを務めた高井は、力強く語った。
「これからもっとガロンズは強くなる」
トップリーグを知る酒井がけん引
若いチームの意識を高めて成長
「別のチームかと思うほど成長したと思う」
そう話すのはキャプテンのOH酒井駿。昨季まで在籍したヴォレアス北海道での経験を踏まえ、若いチームに多くを伝えようとしてきた。とりわけ、シーズンを通した「成長」にフォーカスしてきた。

その中で感じたのは、マインドの変化だという。
「勝敗だけに目を向けるのではなく、良いところと悪いところを確認してステップアップすることに重きを置いてきた。技術だけでなく、考え方や試合の中でロジカルに展開する部分が育ったと思う」
「この力がつけば、自然と成長できる組織になる」

さらにトレーニングや体力作りの見直しも行ったり、食事や睡眠についてのアドバイスもしたという。高い目線を持つ組織への礎を築こうとし、それは次世代の若き有望株にも伝わっている。
例えば常田。最終節の2試合について「1日目は気持ちが先行して周りが見えない部分があった。2日目にはその部分を改善して相手のブロックを見るなど、落ち着いてプレーができたと思う」と振り返る。

内定選手として出場を重ねる小林慧も「個人の考え方を共有することが増えた。それが話し合いに繋がり、いい方向に進んでいると思う」。チーム全体に成長の跡がうかがえた。
コート内外の魅力を引き継いで
再び迎える新シーズンに備える
春は旅立ちの季節だが、同時に出会いの季節でもある。セレモニーでは来シーズンともに戦う新加入選手が顔をそろえた。
小林慧と同様に内定選手として出場経験のあるOH安井元太とOP竹内裕貴。さらにMB松浦巧磨とS松田蓮の計5人がそれぞれマイクを握り、自己紹介した。

新メンバーはセレモニー後に行われたファンとの撮影にも参加。先輩たちから受け継ぐのはコート内のパフォーマンスだけではない。ファンの要望に笑顔で応えながら、コート外でも長野GRらしいパワフルな声が上がっていた。

改編されたVリーグに参入し、10勝18敗(勝率0.36)の東地区6位で終えた2024-25シーズン。クラブ初の6連勝を達成したり、逆に8連敗とトンネルに迷い込んだり。苦楽の中で大きく成長を遂げ、それが最終節の大団円へとつながった。
そして選手たちは次のステージへ――。
幕が上がる時に備え、再び力を蓄える。
クラブ公式サイト
https://garons.jp/
Vリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/v_men/team/detail/474