全ては愚直な「今」の積み重ね “至高のブリリアンス”を放つ最終決戦へ

全ては、この試合で勝つためにやってきた。2025年4月5日のVリーグ女子プレーオフファイナル、ルートインホテルズ信州ブリリアントアリーズは船橋アリーナのコートに立つ。開幕から選手の誰もが口にしていた、“初代王者”という今季だけの栄冠。リーグ戦1位のブレス浜松に挑む最大最後の一戦に、どんな意気込みで臨むのか。在籍5シーズン目と最古参でもあるキャプテン・横田実穂の言葉に耳を傾ける。
文:原田 寛子/編集:大枝 令
試練も乗り越えて切磋琢磨の日々
最後は仲間をリスペクトして臨む
「優勝をつかみ取れる、ワクワクする舞台」
プレーオフファイナルを前に、キャプテンのセッター(S)横田実穂は声を弾ませた。

3月29日のセミファイナル。信州Ariesはリガーレ仙台をセットカウント3-1で破った。
「高さを生かした攻撃が機能して、勝利につながった」
その言葉通り189cmのオポジット(OP)王美懿(ワン・メイイ)を中心に、ミドルブロッカー(MB)山村涼香やアウトサイドヒッター(OH)舛田紗淑らが躍動した。

「自分たちのバレーができたからこそ、相手に思い通りに打たせないゲームができたし、自分たちが粘り強くできたというプラスアルファにもつながったと思う」
「いい状態でファイナルを迎えるため、ここからの練習では悪いところに目を向けるのではなく、良いところを認め合うこと。お互いリスペクトし合って練習していきたい」

その根源には、目線をそろえながらともに積み重ねてきた日々がある。
今シーズンが開幕した時から、常に言葉にしてきた目標は「初代王者」。選手一人一人がその思いを胸に練習に取り組んできたからこそ、「大事な一戦という時に、チームとしてしっかりまとまれている実感がある」のだという。

もちろんその過程では、試練もあった。
例えば年明け最初のホームゲーム、ブレス浜松との2試合から3連敗。
「うまくいかない時期があったけれど、チームがバラバラになることはなかった。選手それぞれの『勝ちたい』という気持ちだけでなく、役割を考えて『初代王者』という目標に向かってチームとして取り組む――という安心感があった」

キャプテンという立場だけでなく、セッターというポジションでも同様の感覚を得ていた。
昨季までは基本的に、横田がメインでトスを上げてきた。しかし今シーズンは小山晴那、白石ふう香も交えた3人がコートでタクトを振るう。
「自分が出ていない時でもどういうトス回しが良いか、意見を言いやすい関係が築けていた。お互いが支え合っている感覚」

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熱心なファンと長野県に恩返しを
認知度向上や熱の広がりにも期待
岡谷市出身の横田。これまでの取材の中で、何度も地元・長野県への思いを口にしてきた。
「自分がチームに入ってからV1を目指して入れ替え戦を経験するなど、常にトップレベルに挑戦できるところにいた。少しずつ知名度も上がり、今シーズンのホームゲームでは今まで以上に大きな声援が聞こえた」
「皆さんの声援の支えがあったからここまで来られた――ということを結果で返したい」

勝ちにこだわる理由として、応援してくれているファンへの恩返しの意味合いも大きい。
さらに横田は続ける。
「Vリーグのトップに立ったチームという認識が広がれば、認知度も上がる。地元からの応援も、興味を持ってくれる人も増えると思う。そのためにも絶対優勝したい」

頂点に立ちたい理由は、いくらでもある。
冷静なトス回しとは裏腹に、情熱をたぎらせるタイプ。コート上では力強く喜びを爆発させるシーンもありつつ、キャプテンとしてチームメイトを奮い立たせることもある。
準決勝の涙を喜びに変えるため
「今、目の前の瞬間に全てを」
象徴的なシーンがある。セミファイナルの試合後。MB温以勤(ウェン・イチン)が涙を流し、横田が抱きしめる場面があった。
「イチン選手は仙台戦の試合中、調子が上がらないことを悩んでいた。その悔し涙だったと思う。ファイナルという本番が、それを取り返せる舞台だということを伝えた」

ブロック2本と第2セット終盤ではサービスエースも決めていた温。それでもアタック決定率は29.4%(5/17)と伸び悩んだ。
役割を自覚するこその悔し涙でもあるだろう。横田はそれを受け止め、糧にするよう言葉をかけていた。
「勝ち急いだり、過去のプレーを引きずるのではなく、目の前のワンプレーを積み重ねること。今できることに最大限集中して、1点を取っていくことが勝利につながると話している」

この1週間で劇的に何かが上達するわけではない。全ては、日々のトレーニングから地道に積み重ねたものが問われる舞台。ともに戦ってきた29試合の全てを自信の源に変えて、目前に迫った“初代王者”に手をかける。
立ちはだかるのは、リーグ戦で1勝3敗と負け越している浜松。

「初代王者にこだわってこのシーズンを戦ってきた。全員でつかみ取るという気持ちと同時に、1点ずつ積み重ねて楽しくバレーをしたい。最後の一戦。みんなで絶対に勝ちたい」
4月5日、船橋アリーナ。
Aries――牡羊座の輝く場所が、そこにある。
VリーグWOMEN プレーオフ概要ページ
https://www.svleague.jp/ja/v_women/topics/detail/23342
チーム公式サイト
https://www.briaristcamp.com/
Vリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/v_women/team/detail/484