「感謝の気持ちはオフに伝える」砂森和也 “薩摩の心意気”に恩返しの一戦へ

AC長野パルセイロは2025年4月6日、J3リーグ第8節でホームに鹿児島ユナイテッドFC戦を迎える。J2から降格してきた相手とは2年ぶりの顔合わせとなり、そこで密かに古巣弾を狙う男がいる。2022年まで鹿児島に4年間在籍し、初対戦に臨むDF砂森和也だ。本土最南端の地で触れた人々の温かみに感謝の念を持ちつつも、今はオレンジ色のユニフォームに身を包んで難敵を迎え撃つ。

文:田中 紘夢

加入1年目にチーム活動休止も
“ファミリー”の支えを受けて復帰

砂森がAC長野に加わったのは2023年。鹿児島を契約満了となって移籍してきたが、娘が急性白血病を患い、同年6月16日に看病のためチーム活動を休止することが発表される。2日後に鹿児島との古巣戦を控えていた中で、ショッキングなニュースが舞い込んだ。

復帰するまでに約5カ月を要したが、その間には各クラブから支援を受けた。古巣の鹿児島も例外ではなく、在籍時に通っていた飲食店からも差し入れが届き、「冷蔵庫に入り切らないくらいだった」と明かす。

「鹿児島の人たちは仲間意識がすごい。引っ越してきて近所を子どもと散歩していると、『可愛いね』から始まって、なぜかバーベキューに呼ばれたりした。そこから『サッカーやってるんだ』と知ってもらえて、サポーターになってユニフォームも買ってくれていた」

当時も近所からお裾分けをもらったり、子どもの面倒を見てもらったりと、至れり尽くせりだった。そこから各飲食店や生産者にもコミュニティが広がり、クラブのスポンサーにまで発展した例もあるという。

鹿児島市中央卸売市場の場内にある食堂の「首折れサバ定食」。このほか編集部のオススメはアジフライ定食

「『サッカー選手だから』というのは、よくあること。でもそうじゃなくて、僕は魚が好きなんだけど、『本当に好きだったら市場に見に来なよ』と。そこで学ばせてもらったりした」

「僕としても『サッカー選手だから』という隔てはない。人と人との繋がりを楽しんで、そこから知り合いを紹介して…。鹿児島の人たちは温かい」

南国の“ファミリー”による支えもあり、昨季は公式戦の舞台に復帰。12試合の出場にとどまったが、ベテランとして陰ながらチームを牽引し続けた。

PROFILE
砂森 和也
(すなもり・かずや) 1990年9月2日生まれ、千葉市出身。左利きのサイドバック。ジェフユナイテッド千葉のアカデミーで育ち、U-18からは順天堂大へ。卒業後はJFL(日本フットボールリーグ)の強豪・Honda FCに加入した。2016〜17年はJ2カマタマーレ讃岐でプレーし、アスルクラロ沼津と鹿児島ユナイテッドFCを経て23年にAC長野へ。一昨年5月、娘の急性白血病に伴ってチーム活動を中止。看病に専念した。移籍2年目の24年からピッチに復帰。171cm、70kg。

昨シーズン終了後も家族で鹿児島へ
持ちつ持たれつの関係は続く

シーズン終了後、砂森は古巣のサポーターに感謝を伝えるべく、家族を連れて鹿児島へと向かった。

飲食店の協力を経てチャリティーオークションを開催し、売り上げは鹿児島県内の小児病棟に寄付。砂森なりの恩返しの形だった。

チームが2月に宮崎でミニキャンプを張った際も、束の間のオフを活用して鹿児島を訪問。同僚のMF三田尚希、DF冨田康平とともに、短い時間ながら観光を楽しんだ。

逆に鹿児島の飲食店からチームに対し、地元の銘菓「かすたどん」の差し入れもあったという。持ちつ持たれつの良好な関係は、今も続いている。

鹿児島ユナイテッドFCは昨季のJ2で19位に終わり、1年でJ3に降格。砂森が在籍していた2019年も1年での降格を経験しており、またも定着とはならなかった。

「自分は(2021年に)鹿児島でキャプテンをやらせてもらって、チームといろんなことを話した。まだまだ足りないこともあった中で、もう一回上がるのは簡単じゃなかっただろうし、(J2に)いてほしかった気持ちはある」

今節はそんな古巣をホームに迎え撃つ。砂森にとっては長野に加入して3年目での初対戦。鹿児島のサポーターも心待ちにしているはずだ。

感謝の気持ちはオフに表現して
“古巣キラー”として得点も狙う

とはいえ、本人に気負っている様子はない。

「今までもいろんな古巣とやってきたけど、あまり特別に構えるとかはない。元気に戦っている姿は届くはずだし、長野のために頑張っているところを結果で見せたい」

©︎2008 PARCEIRO

実は“古巣キラー”でもある。昨季の第34節はアスルクラロ沼津戦で終盤にCKから同点弾。2021年のアウェイ・カマタマーレ讃岐戦でもゴールを決めている。

センターバックやサイドバックを本職としており、年間のゴールは多くても2点。しかしキャリア通算6得点のうち、2得点が古巣弾なのだ。特段意識しているわけではない中で、「何でなんだろう…相性とか雰囲気もあるんじゃないかな」と首をかしげる。

昨季も残留を決めた第37節のギラヴァンツ北九州戦で、終了間際に同点弾をアシスト。「後ろだから点を取らないとかはない」と言うように、ここぞというときには鼻を効かせてゴール前に出てくる。それが結果として古巣弾に繋がることを期待したい。

チームは藤本主税新監督のもと、開幕から3勝3敗の10位。1試合未消化ながらトップハーフに位置している。

前節はツエーゲン金沢に1-3と敗れたが、試合後に砂森は「自分たちは今年やっていて、全部が悪いという捉え方にはなっていない。できている瞬間は楽しさを覚えている感じがある」と前を向いていた。

次節からはホーム2連戦。まずは3位の鹿児島を下し、今季初の連勝に向けて弾みをつけたい。古巣戦に向かう砂森は「感謝の気持ちはオフのときに伝えるので、今は敵です。これが見出しですね」と微笑む。

「鹿児島という土地は本当に大好きだし、サポーターも大好き。ただ、試合前はそういうのはなしで、お互いに真剣勝負でいきたい」


J3リーグ第8節 鹿児島戦 試合情報
https://parceiro.co.jp/info/detail/y5YvyunctXHfg6MQ8LdE7GxsWThTNEoxMmtrMEYySzBPd3dHNHJHSGZlLXRlYkUxTS1rUHdJbWZFQzQ
クラブ公式サイト
https://parceiro.co.jp/
長野県フットボールマガジン Nマガ
https://www6.targma.jp/n-maga/

LINE友だち登録で
新着記事をいち早くチェック!

会員登録して
お気に入りチームをもっと見やすく

人気記事

RANKING

週間アクセス数

月間アクセス数