サトタクNavigates バスケット・ラビリンス(9)「攻守に示す わずかでも確かな進歩」

バスケットボールは豪快で派手なプレーが目を引く一方、コート上の戦術面に目を向けると非常に繊細で難解でもある。信州ブレイブウォリアーズはどんなバスケットを目指していて、現在地はどこなのか――。2018年から3シーズン、勝久マイケルHCの元でプレーした佐藤託矢がナビゲートする。9回目は、攻守とも示す確かな成長などについて論じる。
構成:芋川 史貴、大枝 令
若手らのディフェンス面が成長
オフェンスにも連帯感と冷静さ
レギュラーシーズンは60試合中56試合を消化。ホーム最終戦の青森ワッツ戦と、リーグ最終戦のアルティーリ千葉戦(アウェイ)の4試合を残すのみとなった。
チームの成績は35勝21敗で東地区の3位。4月5-6日の富山グラウジーズ戦(同2位)の結果は1勝1敗で順位は変わらなかったことにより、プレーオフ(PO)のホーム開催はやや厳しい状況となった。

そんな現状ではあるが、チームの成長が見えるのも確かだ。前回のこのコーナーでは、基礎の部分であるディフェンスの強度や50-50ボールの初速の遅さについて指摘した。
しかし3月22-23日のA千葉戦から、特に若手ビッグマンである狩野富成と渡邉飛勇を中心にディフェンスの成長が見受けられる。

これまではゴール付近でのリムプロテクトを得意としてきたが、それだけでなく、ゴールから少し離れたところでのディフェンスでも足が動くようになっており、ヘルプポジションの立ち方や、そこからのカバーなども日に日に改善されている。

直近の富山戦でも守備が光ったシーンがあったので図表で説明する。
富山戦GAME1の第1クォーター(Q)、残り8分18秒の場面。
富山の#30アーロン・ホワイトがトップでボールをもらい、#2ペリン・ビュフォードとの1対1のシチュエーション。このときに、#14狩野と#4小玉大智がしっかりヘルプポジションに立っている(1)。

その後ホワイトがペイントエリアに侵入してくるが、小玉がしっかりとそれを正面で止めてトラベリングを誘った(2)。
狩野もブロックに跳んでいた(3)ため、たとえシュートが打たれたとしてもゴールを守れていた可能性が高いディフェンスをチームで披露した。

また、オフェンスでも随所に良いプレーが見られた。
ピックアップしたいのは、富山戦GAME1の第2Q、残り7分29秒の場面だ。

#50ウェイン・マーシャルが放ったシュートが外れたものの、しっかりとオフェンスリバウンドを確保する(1)。
その後すぐにマーシャルと#11石川海斗のピック・アンド・ロールで数的優位を作る(2)と、渡邉が空いたスペースに飛び込んできてダンクを決めた(3)。
このプレーには連帯感があり、リバウンドの意識と冷静な判断が得点に繋がった。

もちろん全てのポゼッションが完璧に守れているわけではないし、クリエイトできているわけではない。
富山戦GAME2では、チームで警戒していたであろうトーマス・ケネディに開始早々2連続で3ポイントシュートを打たれていたし、ルーズボールやリバウンドで後手を踏むシーンはまだまだ散見される。

それでもケガ人が多い試練とも言える状態で試合を重ねたことで、選手一人一人の危機感やワンプレーに対しての意識はわずかながらに成長していると言っていいだろう。
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POを勝ち抜くために高めたい
プレーの精度とメンタルの強度
とはいえプレーオフを見据えると、一つ一つのポゼッションに対してさらに強くこだわる必要があると思う。
富山戦の2試合はどちらも、後半からルーズボールやディフェンスでリズムをつかみ、GAME1は逆転、GAME2はわずかに及ばず。自分たちのペースにする意味でも、それを第1Qの出だしから遂行する必要がある。

富山とのGAME2では、相手のダビー・ゴメス・ヘッドコーチ(HC)が開始直後にテクニカルファウルを取られる想定外の展開で試合がスタートした。
結果論にはなるが、このファウルの直後にケネディの連続3ポイント。激しいプレッシャーに対してターンオーバーを犯すなど、流れを一気に渡してしまった。

2月22日のベルテックス静岡戦から同一カードの連勝ができていない。負け試合は前半から大きくビハインドを背負ってしまっている現状もあるし、POをアウェイの中で戦う可能性は高い。
それらを加味すると、相手を上回るエナジーをもっと自分たちで出していかなければならないし、どんな状況でも忍耐強く冷静にプレーと判断ができるメンタル面もより成長する必要があると感じた。

選手たちもインタビューで口にしている通り、POはレギュラーシーズンとは違う。「負けたら終わり」の短期決戦であり、雰囲気も強度もケタ違いだ。そこを乗り越えていくためにも、POに向けて残り4試合をどう戦っていくか。注目したい。
4月12-13日はホーム最終戦
選手に届けたいPOへのエネルギー
今週末の4月12-13日はついにホーム最終戦だ。
僕もそうだったが、ホーム最終戦はレギュラーシーズンの区切りとなる試合。「しっかりと勝って締めくくりたい」という思いやプレッシャーがある。

ましてや、POのホーム開催をかけた順位争いはまだまだ続いている。選手たちはより大きな思いとプレッシャーの中で2試合に臨むだろう。
そして結果次第では今シーズンのチームをホームで見られるのも最後――となる可能性がある。ここで勢いをつけてA千葉との最終戦やPOに向けて進んでいきたいだろうし、そのためにはこの2試合を落とすことは許されない。

ぜひブースターの皆さんには会場に駆けつけていただきたいし、応援だけでなく「絶対に負けてはいけない」という厳しく、温かい思いを選手たちに伝えてほしい。
チームの目標はB2優勝、B1昇格。POに万全な状態で挑むためにも、プレータイムの制限がある選手もいるため、ホーム最終戦で見せる姿は完全体ではないかもしれない。

それでも勝久マイケルHCをはじめとするコーチ陣は勝ち筋を見つけるし、選手たちもそれに応えて全力でプレーしてくれるだろう。ホーム最終戦。POの頂点まで駆け上がるための原動力を、目いっぱい選手たちに届けたい。

PROFILE
佐藤 託矢(さとう・たくや) 1983年8月25日生まれ、大阪府出身。東住吉工高(現・東住吉総合高)時代はウインターカップ、インターハイともに4強を経験し、青山学院大ではインカレ準優勝。卒業後は当時JBLの三菱電機からスタートし、千葉ジェッツ、京都ハンナリーズなどを経て2018〜21年に信州でプレーした。引退後はクラブの「信州ふるさと大使」となり、今季からはアカデミースーパーバイザーも兼任。「ど素人バスケ」と出張型パーソナルトレーナーを自主事業とするほか、養護学校などでのボランティア活動も実施している。好きなおつまみは梅水晶。
ホームゲーム情報(4月12-13日、青森ワッツ戦)
https://www.b-warriors.net/lp/game_20250301_20250302/
クラブ公式サイト
https://www.b-warriors.net/