地元上田に喜びの報告 チーム最年長のリベロ田川紘美が見せた涙の理由は

満開の桜が咲き誇る中、初代王者の称号を手にした信州ブリリアントアリーズ。2024年4月12日-14日の3日間で、地元・上田市への優勝報告をした。優勝の喜びと感謝を示し、新シーズンへの決意を新たにした3日間。チーム最年長のリベロ田川紘美は挨拶の最中、苦難のシーズンに思いを馳せながら感極まる場面も。その後チームからは原秀治監督の退任と成田郁久美コーチの監督就任が発表された。

文:原田 寛子/編集:大枝 令

満開の桜のもとに凱旋
地元へのお礼参り

抜けるような青空に桜の花が映える朝。

上田城跡公園には、空と桜を思わせるようなチームウェアに身を包んだ信州ブリリアントアリーズの姿があった。その表情は春の日差しのように柔らかい。

2024年10月13日。上田市を拠点とする信州Ariesは、この場所で力強い決意をもって優勝祈願を行っていた。

そして半年後の2025年4月12日。戦い終えて柔らかな表情を浮かべる選手たちは眞田神社へのお礼参りと、つかみ取った“初代王者”の凱旋報告のために同じ場所を訪れた。

粛々と神社での参拝を終え、場所を広場に移してからは地元やファンへのお礼を行った。そこに駆け付けたのは“真田幸村”公。

「優勝おめでとう!しかも決戦で勝った相手は浜松!家康を倒したのじゃ!」

広場に集まったファンからは笑いと拍手が起こった。

チームからはキャプテン横田実穂が挨拶した。

「優勝報告をできたことがうれしい。応援に来てくれた方も、まだ私たちを知らない方もいると思うが、これを機にさらに成長していくチームになる」

桜の名所としても有名な上田城跡公園には、この日大勢の花見客が訪れていた。公園内を行き交う人からは「女子バレーが優勝したのね」などという声も聞こえていた。

40分ほどのお礼参りと優勝報告イベントを終え、横田は「桜が満開の中で地元の上田市で優勝報告ができたことが嬉しい」と喜びを口にした。

ホームタウン・上田市への“お礼参り”をもって、2024-25シーズンの全日程を終えた信州Aries。ファンや地域への感謝の思いを、あらためて伝える機会となった。

土屋陽一・上田市長が喜びの声
選手からは地域に寄せる思いも

4月14日には上田市役所を訪問。土屋陽一市長への報告に先んじて行われたのは、市長からの表彰だった。

「初代女王という優秀な成績を収め、本市のスポーツ史に輝かしい足跡を残されました」と、市長の言葉とともに表彰状と記念トロフィーが授与された。

「開幕前の訪問で『感動と元気を届ける』と皆さんが誓ったことを思い出す。皆さんの活躍を見ていて、うれしく思っていた」

ホームゲームを訪れたこともある土屋市長。期間中チームの頑張りを応援していたと述べた。庁舎1階に展示されている信州Ariesのパネルにも言及し、「日々『頑張っているな』と思いながら登庁していた」と話した。

その後、信州Ariesの関由美江代表をはじめ、選手や監督、コーチが1人ずつ感謝の思いを伝えた。

「これまでにないほど多くのスパイクを打ったシーズンだった。ちょっと休みたい気持ちもある」というコメントで笑いを誘ったアウトサイドヒッター(OH)舛田紗淑。

その後のインタビューで「バレーボール教室で地域の子どもたちへ、バレーの楽しさを伝えてきた」とオフシーズンの活動について触れた。

「優勝という結果を残せたことは、このような活動をやってきた意味にもつながる。上田市だけでなく、長野県全体に私たちの優勝が伝わり、バレーボールの競技人口が増えて盛り上がればいいと思う」

結果の喜びをかみしめつつも、スポーツでの地域貢献に対する思いを明かした。

絆をつないで次なる挑戦へ
優勝報告とともにリスタート

印象的なシーンがあった。

選手が一言ずつコメントする際のこと。

「レギュラーシーズンは3位という結果だったが、セミファイナル前までを戦うまでに『このチームなら絶対に勝てる』という自信が持てるほどいいチームになった」

チーム最年長のリベロ田川紘美はそう話しながら、涙で言葉を詰まらせていた。

その後の取材に応じ、理由を明かした。

「初代王者の目標を掲げたが、不安要素は山ほどあった。チームがうまくいかず、課題だらけでもがいた時期もあった」

「それでも全員が努力を重ねてチーム力が上がり、セミファイナル、ファイナルと結果を残せたことがうれしかった。プレッシャーも若干あったけれど、このチームだから勝てたと思う」

厳しい試合を戦い抜いてつかんだ“初代王者”の称号が、クラブの歴史に刻まれた今季。選手たちからは「連覇」という言葉も聞こえてくる。

そして市長への表敬訪問の翌日、大きなニュースが発表された。

3シーズン信州Ariesを率いた原秀治監督の退任と、成田郁久美コーチの監督就任。さらに28日には田川と黒鳥南ら5人の退団と引退も発表された。

新指揮官のもと、再び新たなチームで戦う来季。原監督の言葉どおり「優勝者にしか与えられない連覇というチャレンジ」へ、リスタートを切った。


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