勝負どころで力負けしてPO初戦ホーム開催逃す 全員の“一体感”が挽回のカギ

黒き要塞の壁はやはり、比類なき堅牢さを誇っていた。2025年4月19-20日に行われた、信州ブレイブウォリアーズのレギュラーシーズン(RS)最終戦。相手は東地区を制したアルティーリ千葉。プレーオフ(PO)のホーム開催が懸かる一戦だったが、GAME1は85-91、GAME2は73-82と敗れた。POの初戦は鹿児島でのアウェイ開催となった。今季のA千葉戦は6戦6敗。その差はどこにあるのだろうか――。

文:芋川 史貴/編集:大枝 令

重要視したペイント内で大量失点
A千葉の波状攻撃を止められず

「選手たちはハードに戦ったと思う。とても悔しい負け。数週間後にここに戻って来れるようにしたい。2日間応援してくださったブースターのみなさんに感謝しています」

GAME2を終えた記者会見。勝久マイケル・ヘッドコーチ(HC)は普段よりもだいぶ短く試合を総括した。

信州の公式YouTubeにアップされた会見動画の尺を確認すると、わずか24秒。その短い動画に映る勝久HCの表情や声色には悔しさがにじんでいた。

点差だけを見れば肉薄した――。そういう評価もできるだろう。

しかし、2日間を通して勝負どころとなるポイントでディフェンスの強度やシュートセレクションで後手を踏んでしまった印象も否めない。

「2日間どうしても千葉さんの素晴らしいボールムーブメントとウェアムーブメントに対して、我々はビジョンを簡単に切ってしまいイージーな得点を取られてしまった」と勝久HCは振り返る。

ペイントエリア内の脅威については勝久HCは練習取材でも勝負のポイントとして触れていたものの、GAME1では44得点、渡邉飛勇が欠場したGAME2では46得点を奪われた。

信州のターンオーバーからイージーな得点というシーンもあったが、A千葉は全員が同時多発的に動き、ズレを見逃さずにバックカットで得点を奪う。

さらにそこからアウトサイドへパスを出し、3ポイントシュートを沈めてもくる。信州のデイフェンスは揺さぶられ、そして崩された。

「とにかくペイントで得点を与えてはいけない相手だということは分かっていながらも、どうしてもディフェンスの習慣の部分でイージーな得点を取られてしまった」と勝久HCは肩を落とした。

GAME2ではリバウンドなどで存在感を見せた小玉大智。

「大事なところでターンオーバーから得点を許してしまったり、自分たちが流れに乗りたいときに、リバウンドを取られてしまったり。POに向けて改善していく必要があると思う」と反省しきりだった。

勝者のメンタリティは未獲得
「チームとして戦う大切さ」も

敗れた主因として、要所での得点力やボールへの反応速度、リバウンドの勝負などが挙げられる。どれもその原動力となるメンタルの部分でも差があった。

例えば、両チームとも2日間を通してレフェリーに目を向けるシーンが多く見受けられた。その時に素早くチームでハドルを組んだり、ベンチから声をかけるシーンが多く見られたのはA千葉だった。

審判の判定で試合が止まっている時だけではない。

残り数秒のラストポゼッションのシーンではベンチにいるメンバーが「1本、1本」とコート内のメンバーに伝えたり、流れが信州側に行きそうなシーンでも、「ここはしっかり守ろう」と声をかけ合ったり。

チームとしての結束力やエナジーが見られた。

もちろん審判とのコミュニケーションを取ることは必要だろう。しかし、そこからハドルを組み直してミッションを共有したり、エナジーを伝染させ合ったり。

これらも「チームで戦う」ためには必要な要素ではないだろうか。

勝久HCもGAME1の後、40分間戦い続けるメンタリティについて苦言を呈していた。

「冷静さやプレッシャーの強い相手にプレーするメンタルの準備。前半のターンオーバーの多さ。フラストレーションを溜めて、審判や自分自身、自分たちに対して感情的になったりしていた」

「『もう勝ちたくてしょうがない』という気持ちだからこそオーバートップになってしまうというのは誇らしい部分ではあるけれど、そのエナジーをやっぱりチームに対して向けてほしい」

もともと勝久HCが根本に持つフィロソフィーは、「コントロールできることをコントロールする」。その範囲外にある判定に一喜一憂してパフォーマンスに影響させることは、望んでいない。

「ハドルを組んで次のプレー、次やるべきこと、そのエナジーを50-50ボールを取ることに集中してほしい。何かがあっただけでプレーが止まってしまって、50-50ボールが取れなくて相手のスコアに繋がることもあった」とチームの姿勢を問いただした。

GAME2では改善された部分があったものの、修正し切ることはできなかった。

その中でも短いプレータイムや、特にベンチワークで気迫を見せていたのは小玉。GAME1よりも高いエナジーでチームを鼓舞していた。

「負けられない試合だったということもあるし、エナジーの部分は最近すごく感じるものがある。試合の入りや一つ一つのプレーであったり、アップであったり。そして自分自身はアップ中でもベンチでもエナジーを出しているつもりだった」

エナジー不足かもしれない――という示唆を与えたのは、ブースターからのメッセージだった。小玉が明かす。

「チームの企画で選手に向けてのメッセージが届いた中に、『最近エナジーがないのでは』というメッセージがあった。『確かに言われてみたら全力じゃなかったのかな』と思った」

「そう見られているということは、エナジーがないことは明らか。特に僕はエナジーについて普段から言っている。自分が変わらないとチームが変わらないと思った」

悔しい2連敗も最後に笑うために
「ここに絶対帰ってこよう」

RS最終戦を2連敗で終えた信州だが、それは決してシーズンの終わりを意味するものではない。むしろここからが本番だ。

4月21日でB2リーグ全てのRSが終了し、POの組み合わせが以下の通りに確定した。


信州は5月3-5日のクォーターファイナル(QF)で鹿児島レブナイズとアウェイで対戦。そのシリーズを突破し、A千葉も上がってくれば、B1昇格を懸けたセミファイナルで再び顔を合わせることになる。

小玉はあえて、この敗戦からくみ取るべき要素を口にする。

「勝つことを前提に戦っているが、逆にここで負けを学べて良かったと思う。このままではやっぱりダメだという危機感もみんな持っていると思うので、負けていい勝負はないですけど、まだ終わりじゃない」

「次がある勝負だったので、それを僕らがどう次に生かすか。負けたことから学べることは多いし、アルティーリとB1を懸けた戦いをしないといけないとなれば危機感がある練習もできると思う」

もちろん勝久HCも同じ思いを持つ。

「今日の試合後には『ここに絶対帰ってこよう』という話を選手たちにした。もちろんまずは鹿児島だが、数週間後(5月10-12日)に彼らに勝ちたいので、まだまだ成長は必要」と力を込める。

リベンジのチャンスは残されている。最終戦の雪辱を果たすことができれば、それは即ちB1への復帰を意味する。そのためには鹿児島とのQFで勝利を収める必要がある。

「とにかく僕らが変わって、必ず戻ってきて2連勝してB1を決められるようにする。そのチャンスを今回神さまからもらったと思って、僕はとにかくチームを良い方向に持っていけるために日々頑張るだけ」

そう話す小玉。両日それぞれ200人以上が来場したブースターに対しても、謝罪と決意を口にした。

「普段は来ないような場所だし、すごく混んでいる電車とかも使ってこられた方も多いと思う。勝てなくて申し訳ないです。だけど、逆に今度はアルティーリに勝ってB1を決めるところを見せられるように、POの初戦から頑張るので、引き続きサポートをよろしくお願いします」

クラブは現在、ホワイトリングでのパブリックビューイングの開催に向けて動いている。

チームとしても2018-19シーズン以来のPO。再びあの感動の瞬間を全員で共有できるように、さらなる高みを目指していく。決して簡単な試合はないだろう。それでも勝ち進みB1への復帰を成し遂げなければならない。


クラブ公式サイト
https://www.b-warriors.net/
りそなグループB.LEAGUE 2024-25ポストシーズン特設サイト
https://www.bleague.jp/postseason/2024-25/

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