サトタクNavigates バスケット・ラビリンス(10) 「細部の徹底と決定力が優勝へのカギ」

バスケットボールは豪快で派手なプレーが目を引く一方、コート上の戦術面に目を向けると非常に繊細で難解でもある。信州ブレイブウォリアーズはどんなバスケットを目指していて、現在地はどこなのか――。2018年から3シーズン、勝久マイケルHCの元でプレーした佐藤託矢がナビゲートする。10回目は、レギュラーシーズン(RS)60試合の総括と5月3日から始まるプレーオフ(PO)の見どころを聞いた。
構成:芋川 史貴、大枝 令
遂行力とメンタルの課題なお
タレント揃うも難しさを実感
ペリン・ビュフォード、テレンス・ウッドベリー、渡邉飛勇ーー。
今季のロスターには、誰しも一度は耳にしたタレントたちが名を連ねた。
B1復帰、B2優勝に向けて、ブースターの期待も高まっていただろう。

しかし、結果だけを見れば37勝23敗で東地区3位。期待とは裏腹に苦戦を強いられたシーズンでもあったと思う。
今季は13人のうち6人が新加入だったこともあり、また一からのチーム作りとなった。そのため特に前半戦では勝久マイケル・ヘッドコーチ(HC)が要求する戦術理解に苦戦する選手も少なくなかった。
後半戦に入るに連れてアジャストしてチームメイト同士の連係も徐々に改善されてきたものの、マイケルバスケットの代名詞とも言えるディフェンスについては非常に時間を要していた。

負けた試合の共通点としては、ルーズボールやリバウンド、そしてディフェンスのクオリティなどで後手を踏んだ。それをシーズンの終盤戦まで改善できなかった印象だ。
ケガ人が出たことも関係しているかもしれない。
確かにそれは事実だが、過去には少ないロスターで良い試合をしたり、勝利を収めたりする試合もあった。

負けた理由を単に「ケガ人が出た」で片付けるのではなく、「なぜエナジーやクオリティを発揮できなかったのか」という原因を突き止めた方がいい。
タレントがそろって実力も高い。しかし、遂行力やメンタルの部分に原因があると僕は思っている。
それは裏を返せば「伸びしろ」とも捉えられる。
幸いまだシーズンは終わったわけではないし、新加入選手を含めて見る者を魅了するプレーも多かった。
これから始まるPOを勝ち抜くためにも、「マイケルバスケをより体現してほしい」。RSの総括はそれに尽きる。

A千葉戦で見せた成長と伸びしろ
細部にこだわってPOで雪辱を
4月19-20日に行われたRS最終戦・アルティーリ千葉との対戦は残念ながら2連敗となったが、2試合とも気持ちは十分に入っていたと思う。
RSの総括では厳しいことも言ったが、それでも最終節には成長も見られた。

今季の全6試合を点差だけで見ると
12月14日:73-90
12月15日:77-89
3月22日:82-89
3月23日:71-100
4月19日:85-91
4月20日:73-82
シーズン前半の初対戦では第1クォーター(Q)から大きく点差をつけられ敗れたものの、最終戦の20日の試合で、ウッドベリーや渡邉を欠く中で最後まで戦い抜くことができた。チームのメンタル面で成長が見られたし「本当にあと一歩」という印象だった。

差が出たところで言えば、最後の決定力や、プレッシャーに対してのターンオーバー(TO)など細かな部分。
GAME1のTOはA千葉の7に対して信州は12、GAME2はA千葉の6に対して信州が10。改善されてはいるものの、いずれもA千葉よりもTOの数は多かった。
さらに信州のTOからの失点。GAME1は10、GAME2は17と増加した。試合展開以上にもったいないシーンが多かったことが分かる。
そういう部分をなくしていかなければ、あれほど強いチームに勝つことは難しいだろう。
A千葉の選手たちは全員自信を持っていたし、リーダーシップも持ち合わせていた。流れが信州に傾きそうな場面でもシュートを決め切るメンタルは見習いたいところだ。

もちろん、選手が手を抜いていたわけではないし、気合が入っていたのも見ていて感じた。それでも強いチームは土壇場こそ気持ちを強く持って、シュートを決めてくる。信州はそこを改善し、POではどのチームに対しても対抗していかなければならない。
一瞬一秒の判断が命運を左右
鹿児島に勝利して昇格へ弾みを
B2リーグでもいよいよPOが開幕し、クォーターファイナル(QF)の相手はRSで1勝1敗の鹿児島レブナイズとアウェイで対戦する。
2戦先勝、負けたら終わりの勝負。POはRSとは異なる強度と緊張感があり、全くの別物だ。1分1秒たりとも気を抜くことはできず、一瞬の状況判断が勝負の行方を左右する厳しいトーナメントが続く。

そのため、先ほど触れたTOを減らすことを筆頭に、勝負どころでの決定力や、しっかり守り抜くディフェンス力をよりエナジーを持って体現しなければならない。
当然相手もエナジーを出してくるので、まず受け身になってはいけない。
鹿児島は2-2-1のオールコートプレスやマンツーマンなど、様々なディフェンスを使いながら相手のテンポを崩してくる。もちろんこの他にもバリエーションを持っているし、POに向けての秘策もあるかもしれない。

さらに平均スティール数とTOの少なさはともにリーグで2番目。信州はディフェンスのプレッシャーをかわしながらTOの数を抑えつつ、逆により強いプレッシャーを与え続けて、自分たちのペースでバスケットを遂行したい。
試合当日はホワイトリングでパブリックビューイングも開催される。僕も4日のGAME2で解説を担当するので、現地に行くことのできないブースターのみなさんはぜひホワイトリングで一緒に応援しよう。

このメンバーが見られるのも残りわずか。僕も一生懸命、信州の地から応援して選手の後押しができるように当日は盛り上げていきたいと思う。
鹿児島でも、ホワイトリングでも、そしてバスケットライブでもーー。
今こそ「ALL信州」で最高の景色をともに目指していこう。

PROFILE
佐藤 託矢(さとう・たくや) 1983年8月25日生まれ、大阪府出身。東住吉工高(現・東住吉総合高)時代はウインターカップ、インターハイともに4強を経験し、青山学院大ではインカレ準優勝。卒業後は当時JBLの三菱電機からスタートし、千葉ジェッツ、京都ハンナリーズなどを経て2018〜21年に信州でプレーした。引退後はクラブの「信州ふるさと大使」となり、今季からはアカデミースーパーバイザーも兼任。「ど素人バスケ」と出張型パーソナルトレーナーを自主事業とするほか、養護学校などでのボランティア活動も実施している。好きなおつまみは梅水晶。
ホームゲーム情報(4月12-13日、青森ワッツ戦)
https://www.b-warriors.net/lp/game_20250301_20250302/
クラブ公式サイト
https://www.b-warriors.net/