44試合の旅路で咲かせた10輪の花 来季への礎になるものは -2024-25総括-

道なき道を歩き続けた。2024-25大同生命SVリーグ男子。VC長野トライデンツは全44試合を戦って10勝34敗でレギュラーシーズンを終え、10チーム中9位の成績だった。国内トップリーグにおける過去最多5勝を大きく上回る10勝。どのようにしてその目標に至ったのか、再び顔ぶれが大きく変わる来季に生かせるものはあるのか。歴史を刻んだシーズンを総括する。

文:大枝 史/編集:大枝 令

SVでも通用したサーブ&ブロック
ゲーム戦術もハマれば金星近付く

「サーブについては昨シーズンより良かった」

2025年4月13日。44試合目が終わった会見の場で、川村慎二監督はそう振り返った。

オポジット(OP)ウルリック・ダールとアウトサイドヒッター(OH)工藤有史のストロングサーブで大きく崩すシーンはシーズンを通して何度も見られた。

「今までシーズンで練習してきた、サーブで崩してからのブロックディフェンスがハマれば強い相手にも勝ってきた」

キャプテンの藤原奨太が話す通り、そこが金星への一里塚だった。

”開幕サプライズ”となった第1節STINGS愛知戦GAME2のサーブ効果率は13.7%。後半戦のスタートで大金星を挙げた第13節WD名古屋戦GAME1では11.5%とそれぞれ高い数字を残した。

東レ静岡戦は、ホーム・アウェイともにブロックも光った。

第12節のGAME1ではセット平均3.67本、10勝目を挙げた第21節のGAME2ではセット平均3.20本。ミドルブロッカー(MB)トレント・オデイを中心にしたブロックが機能して勝利を収めた。

工藤も「サーブの効果率が低くてもブレイクを取れている場面は結構あったので、ディフェンスに関しては試合を通してどんどん成長してきたと思う」とシーズンを振り返る。

ブレイクをして得点を積み上げていく過程で、必要になってくるのがサイドアウト。その初手がサーブレシーブで、リベロ(L)備一真は「すごく強いサーブに対してもかなり対応はできているところはあった」と振り返る。

軸となったのは2人。サーブレシーブ成功率52.6%でリーグ2位の備と、46.7%で同5位のOH迫田郭志だ。特に迫田は、リベロが集まるランキング上位5人の中で唯一のOHだった。

安定したレセプションを軸に、粘り強くサイドアウトを繰り返してチャンスを待つ。それらがうまく機能し、10勝を積み上げてきた。

「宿題」も多く残したシーズン
サイドアウト率の向上を目指す

サーブに力を入れて一定の成果は出たものの、まだ先は長い。効果率はチーム全体で6.8%の9位。セット平均でのブロック本数も1.58本となっており、10位に沈む。

リーグ全体でみると、サーブ効果率1位はWD名古屋で11.8%。セット平均でのブロック本数1位は広島THの2.13本と大きく差がある。

指揮官も「強いサーブだけでは通用しない。緩急をつけたり、相手の嫌なところに落としたりも考えながら今後やっていかないといけない」と振り返る。

個人で言ってもチームトップが工藤の9.8%で、ランキングは全体の22位。もちろん世界トップクラスの外国籍選手が上位にひしめく中で奮闘した数字ではあるものの、もう少し上を目指せる余地はあるだろう。

抜きん出たビッグサーバーがいない以上は、ブレイクするチャンスがくるまで我慢強く戦う必要がある。

サイドアウトについても指揮官は同様に「CパスをBパスに、欲を言えばBパスをAパスに、どれだけ返せるかというのを来シーズンはやっていかないといけない」と課題を挙げる。

備も「上のチームに勝つためにはやはりサイドアウト」と口にする。

リーグの終盤戦は相手に対策をされ、アタック決定率に苦しんだ側面も。決め切る力も当然求められるが、まずはパスを返して攻撃の選択肢を多く持つことが肝要となる。

「中に入っている人たちが緊張感を持って、練習のときからシビアに取り組めるかが課題だと思う」

そう備は続ける。

今季、勝った試合のほとんどは僅差を制してきた。

粘り強くサイドアウトを取れていた試合は勝利に結び付いていた――と言うこともできる。それをどれだけ多く続けていけるかが、来季のカギになりそうだ。

メンバーが大幅に入れ替わる来季
川村監督は「大丈夫です」と泰然

「若い選手が多いので、勢いに乗れば強い」

多くの選手たちが同じ言葉を口にした。確かにそれは間違いなくVC長野の魅力の一つだ。

第13節WD名古屋戦GAME1や第14節東京GB戦GAME2での、フルセットの末に収めた勝利に”勢い”があったのは疑いようもない。

しかし、裏を返せば調子の波が激しいとも言える。

藤原は「『常に自分たちのベストサーブを打てるように』という課題を最後まで克服できなかった」と振り返る。

備も「安定感を一番大事にしている」「『調子悪いんだろうな』というのがうまい選手はあまりない」と話す。

いいときの勢いはそのままに、悪い時でも下ブレを抑える安定感を持つことができれば、勝利の数を増やすこともできるはずだ。

さらに「20点以降の取り方」も、シーズン中に多くの選手が口にしていた宿題。これだけの陣容がそろってもなお、煮詰まったセット終盤には引き出しの質と数が問われる。

このままメンバーが大きく替わらず、順当に積み上げたとしてもなお課題は多い。しかし現実として退団は10人。その顔ぶれもショッキングではある。

ただ、個人として得られた経験は来季にも生きる。

「スパイクを打つときの選択肢の幅がすごく広がった」と工藤。指揮官はMB安部翔大に触れ、「すごく真面目に練習も取り組みながら、言われたことに対してしっかりと理解をしている」と成長を評価した。

オフシーズンにも個の力を増し、新たな仲間とともに束にしていく営み。迫田と樋口のほか、備、ウルリック、トレント、S早坂心之介がチームを去る。それでも残った柱を軸に据えながら、また新たなチーム構築が始まるのだろう。

4月20日、千葉県印西市。

順天堂大さくらキャンパスの関東大学1部春リーグ会場で、川村監督と顔を合わせた。来季の進捗を聞くと、「大丈夫です。それなりの準備はしています」。その表情はいつも通り、泰然としていた。

帰りは下りベースなので徒歩に挑戦。京成線の酒々井駅まで25分ほどだった

ファンとも一体となって戦うVC長野。
もっと強く、もっと魅力的に――信州の地に新たな歴史を刻む。


SVリーグ男子 順位表
https://www.svleague.jp/ja/sv_men/round/ranking

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