896日ぶりF1白星は会心の一戦 “荒波のF1”生き抜くマイルストーンに

長い道のりだった。フットサルのボアルース長野は2025年6月29日、F1第5節のフウガドールすみだ戦で5-1の快勝。23年1月15日以来、実に896日ぶりのF1白星をもぎ取った。カウンターから3点を挙げて1失点に留めるなど、「らしさ」全開の40分間。大きな成功体験を得る、意義深い1勝だった。

文:大枝 令

特大の歓喜が弾けた今季初白星
4連敗の教訓生かして後半も盤石

両の拳を、天高く突き上げた。
目に涙を溜めて、強く抱き合った。

この瞬間を、待ち望んでいた。

「本当に非常にうれしい。前回のホームで負けた後も、『次は勝って』『勝つまで応援するよ』という声をかけてくれていた。なんとかその気持ちに応えたいという思いがあった」

1,000人超の声援に応える勝利。山蔦一弘監督は感慨深げに振り返った。

3年ぶりのF1。

これまでは4戦全敗だったが、その中でも通用する手応えは随所にあった。その半面、経験不足から前後半トータルした40分間のマネジメントに課題を残していた。

その失敗を糧にして、この日は見事にゲームを運んだ。

象徴的なのは1-0で折り返した後半。今季これまでの4試合について、上林快人は「前半入りが良かった分、後半受け身になることが多かった」と振り返る。

だからこそ、攻めの姿勢を忘れない。
指揮官は明かす。

「気持ちとしては本当に0-0のつもりで次のゴールを取りに行く。2点目を取っても3点目を取りに行く姿勢を崩さないところを強調した」

コートを縦横無尽に駆け回り、プレッシングをかける。定位置攻撃にはゴレイロ(GK)橋野司が参加することも。カウンターのピンチには、稲葉柊斗のバックスプリントで難を逃れたり、橋野や三笠貴史らが身体を張って防いだりと奮戦した。

すると24分20秒、まさに狙った形から待望の2点目が生まれる。上林が高い位置でプレスをかけて奪い切り、そのまま持ち込んでシュート。豪快にネットを揺らした。

「すごく課題だった後半にうまく入れたし、そこで点を取れたのが一番大きかった」と上林。前半に田中智基が決めた1点目も自身のアシストから。千両役者さながらの活躍ぶりだった。

32分37秒に決めた3点目も、岩本大輝が粘り強い守備で絡んだのが起点。デュエルでこぼれたボールをダイレクトで野口茅斗が突き刺した。

こうして、プレッシング&カウンターから3点を先行してみせた長野。後半に失速したこれまでの教訓を生かし、逆にリードを広げた。

残り7分半。相手はタイムアウトを挟み、GKユニフォームを着たフィールドプレーヤーを投入。5人攻撃のパワープレーを仕掛けてくる。

のまれてはいけない――。

相手がタイムアウトを取った際、指揮官は選手たちに伝えていた。

「1点取られても2点取られても自分たちが勝っている状況。最後に勝てばいいだけだから、とにかく最後まで目の前のプレーに集中しよう」

果たしてチームは冷静に、4対5の状況でも均整の取れたゾーンディフェンスで対抗する。逆にパワープレー返しでガラ空きのゴールに入れること2回。

残り4分半で5-0とし、勝利を大きく引き寄せた。

ファウルがかさんで暗雲の前半
守備で耐えながら勝機うかがう

パワープレーから1点は失ったものの、終わってみれば5-1の快勝。攻守の歯車が噛み合って会心の白星となった。

今季最少失点。守備でその立役者となったのは、GK橋野だった。

というのも前半、チームは雲行きが怪しかった。厳しい守備の反動からかファウルがかさみ、開始わずか7分24秒で5ファウル。6回目を犯すと、相手に第2PKが与えられてしまう。

「早い段階でファウルが溜まって、第2PKもあると思って心の準備はしていた。別に自分が止めればいいと思っていたので、そんなに焦ってはいなかった」

実際、13分22秒の時点で第2PK。しかしキッカーと駆け引きしながら寄せてコースを削り、枠外にそらせることに成功した。

それ以外にも序盤から好セーブを連発。フィクソ(サッカーのセンターバックに相当)三笠らとともに、ゴールに鍵をかけてみせた。

「僕らはディフェンスのチーム。フィールドプレーヤーが本当に縦横無尽にプレスをかけてくれて守備が成り立っている」

「だから、ファウルになってしまったらチームとしてカバーするのが自分の仕事。結局最後にゴールに立っているのは僕なので、仕事を全うする気持ちでやっていた」

そう振り返る表情からは、充実感がにじんだ。

しかもこの日、橋野はFリーグ通算100試合出場。試合前のセレモニーでは父親から花束を贈呈され、節目の試合に臨んでいた。

パワープレー返しではキャッチしたボールを素早く蹴り出し、そのまま無人のゴールへ。得点のおまけもつき、コートを駆け回って観客と喜びを分かち合った。

「らしく」戦って引き寄せた勝利
F1で勝ち残るための大きな指標に

こうしてつかんだ、896日のぶりのF1白星。

単なる1勝ではなく、荒波のF1をサバイブするための指標となる勝利でもあった。

プレッシングとカウンター、そしてF2で練り上げてきた堅守。ゲーム戦術も含めた全てが噛み合い、選手たちがきっちり遂行して歓喜に至った。前節までの教訓を生かし、後半も含めたゲームマネジメントで勝ち切ったことも大きい。

「この5試合を経て、自分たちが負けるゲームはどういうゲームだったのか。逆に勝ったゲームはどういうふうにできていたのかをしっかり分析して、それを一つずつ選手に伝えて、全てのゲームに勝つための準備をしっかり繰り返していきたい」

山蔦監督はそう話す。

そしてキャプテンの三笠は、勝った後のアリーナの雰囲気に心が震えたという。

「試合が終わって最後にサポーター席を見たときの光景が本当にすごい光景で…これを何回も何回もシーズンで味わいたい」

「ボアルースファミリーみんなでこういう時間をたくさん作っていきたい、勝ちたいと強く思った試合だった」

待望の今季初白星。それはマイルストーンとなっただけでなく、さらなる勝利への飢えをかき立てる1勝でもあった。


フォトギャラリー

6月29日(日)Fリーグ第5節vsフウガドールすみだ 試合情報
https://boaluz-nagano.com/result/
チーム公式サイト
https://boaluz-nagano.com/
Fリーグ チーム紹介ページ
https://www.fleague.jp/club/nagano/

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