過去最多タイの5勝でターン 後半戦は未到の領域にチャレンジ

未到の領域へと足を踏み入れていく、勝負の後半戦だ。SVリーグ男子のVC長野トライデンツは全44試合のうち22試合を終え、5勝17敗で9位となっている。昨季は2勝、過去最多はシーズン5勝――という戦績を考慮すれば、現状でも「大健闘」と言える数字だろう。前半戦をデータとともに振り返りながら、より厳しさを増すであろう後半戦を展望していく。

文:大枝 史/編集:大枝 令

前半戦で積み上げた最多タイ5勝
チームは「まだまだ」と意欲的

「選手もスタッフも、前半戦の『5勝』は満足していない。厳しいことを言うともっといけた」

VC長野トライデンツの川村慎二監督は前半戦を振り返り、まずそう口にした。22試合を終えて5勝17敗。勝利数は昨年の2勝を既に越え、過去在籍したV1時代の最多勝利数に並んでもなお――だ。

“開幕サプライズ”となった第1節。ジェイテクトSTINGS愛知戦で早くも初白星を挙げ、好スタートを切った。

第5節の広島TH戦ではオポジット(OP)ウルリック・ダールを負傷で欠く中で、OPに本来はアウトサイドヒッター(OH)の樋口裕希を起用して勝利をつかみ取った。

第7節ではヴォレアスに連勝。そこからは格上との対戦が続いて黒星を重ねたものの、第12節の東レ静岡戦でシーズン初のストレート勝ちを収め、5勝目を挙げた。

それでも指揮官の評価が満足とは程遠いのは、「まだやれる」と感じさせる余地が大きいからだろう。実際に終盤や流れの中でのミスが目立つ試合も少なくはなかった。どれだけミスを少なくできるかが後半戦のカギとなる。

樋口も「何勝とかは気にせずに、目の前の試合で勝利をつかむためだけに戦う意識でやっている」と一戦必勝の構え。

リーグが変わり、チームも変わった。過去の戦績と比べるのではなく、見据えるのは先の試合。「どうすればチームがより良くなるのか」という側面にのみ心を配る。

広告

協賛企業様募集中
掲載のお問い合わせはこちら

データが示すVC長野の特徴とは
さらに追求したいサーブ効果率

サーブレシーブ成功率は44.7%でチームランキング1位、アタック決定率は49.5%で同6位。VC長野が積み上げてきた数字から、レセプションからサイドアウトを取る戦略が一定水準で実を結んでいることがわかる。

サーブレシーブが成功すれば、強力無比なOPウルリックを軸に、セッター(S)早坂が真ん中を強気に使うトス回しも生きてくる。格上の対戦相手にも、大きく点差をつけられず食らい付ける展開が多いのは、この戦略が大きく機能しているからだろう。

この数字は、OHにレセプションを得意とする迫田郭志の起用が多いことも表す。迫田のサーブレシーブ成功率は49.0%でリーグ3位。51.7%で同2位のリベロ備一真も含めて高水準の数字を残し、守備に大きく貢献している。

その半面、サーブ効果率は6.3でチームランキング9位にとどまっており、セットあたりのブロック決定本数も1.59で同10位。「なかなかブレイクが取れない」という課題は、この2つの数字からも浮き彫りになる。

サーブで崩すことができなければ、相手に自由な攻撃を許してしまう。

「サーブは唯一、自分たちで100%コントロールできるプレー。シーズンを通してサーブが強化ポイントになっているので、そこはしっかりと練習していきたい」

川村監督はそう力を込める。スカウティングをして狙いどころを定め、攻めのサーブで崩す基本線は変わらない。そして第11節WD名古屋戦GAME2は、同じOHの樋口がブロックで大きな存在感を示した。

「僕が入った時には(ブロックの)指示をしている。実際にその通りになって得点になることは多いので、僕が入っていてブロックが機能することは多いと思う」

筑波大時代はミドルブロッカー(MB)も務めていた万能型。培った経験から練り上げた武器に自信をのぞかせる。実際に自身が出場した第12節東レ静岡戦GAME1も、狙いがハマってブロック11本(1セット平均3.67)と高水準の数値をマーク。快勝につなげた。

情報が出そろって迎える後半戦
「成長」と「精度向上」がカギ

このように、多様なキャラクターを使い分けることの重要性も、改めて浮き彫りになってきた。

OHには大卒1年目のオールラウンダー工藤有史を軸に、レセプションが得意な迫田とブロックディフェンスに強みがある樋口の移籍加入2人が厚みを加える。

それぞれ強いサーブを武器としており、状況に応じて柔軟な起用が可能。第12節東レ静岡戦GAME2ではキャプテンの藤原奨太も途中出場から好パフォーマンスを見せた。

MB陣も同様。トレント・オデイは高さ、山田航旗はクイックを含めた機動力、安部翔大はサーブなどに強みを持つ。Sも早坂は真ん中を通し、糸山大賀はサイドを中心とするトス回しが多い。故障離脱の中島健斗も戻ってくれば、戦い方のバリエーションは広がるはずだ。

そして当然、それは相手に把握されていることでもある。開幕節でSTINGS愛知に勝利を挙げた要因の一つはウルリックや早坂など、データが少ない新加入選手の存在も少なからず作用したと言えるだろう。

後半戦はすでにデータがそろい始め、対応されやすくなる。「お互いさま」ではあるものの、引き出しのバリエーションやクオリティではどうしても後手を踏む。その中でどう白星を引き寄せるか――。

川村監督はそのカギを、「総力戦」と表現する。

個々のストロングポイントが生きる展開に持ち込めれば、格上相手にも通用することは前半戦に何度も証明してみせた。しかしメンバーが固定されてしまうと対策されやすいのも確かだ。

個の武器を伸ばして持ち寄り、チームとして立案した戦術を高精度で遂行していく。そうして食らい付きながら、勝利に至る蜘蛛の糸をつかむ戦いとなるだろう。

後半戦スタートとなる1月18-19日の次節は、再びアウェイでWD名古屋と対戦する。ニミル・アブデルアジズ、水町泰杜らビッグサーバーを擁し、リーグ2位につける難敵だ。

「個が強いうえに6人が組織で殴ってくる相手。厳しい戦いになると思う」と工藤。樋口も「誰か調子悪い選手がいても、他にいい選手が出てくる。 でもなんとか一矢報いれるように頑張る」と話す。

苦闘の中から光明を見い出し、後半戦の橋頭堡を築く一戦としたい。


クラブ公式サイト
https://vcnagano.jp/
SVリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/sv_men/team/detail/461

LINE友だち登録で
新着記事をいち早くチェック!

会員登録して
お気に入りチームをもっと見やすく