“GW2日間で目標11,000人” 集客にリソースを注ぐAC長野の新たな挑戦

昨年のJ3リーグにおいて、過去7年で最多となる4,158人のホームゲーム入場者数をマークしたAC長野パルセイロ。集客目標数値の4,000人を達成し、今年は5,000人まで目標を引き上げた。ゴールデンウイーク中の2025年5月3-4日には、トップチームとレディースチームが合同で「パルセイロファミリーパーク」と題した大型イベントを開催予定。その狙いや内容を集客/チケット担当の鐙(あぶみ)翔星さんに聞く。
文:田中 紘夢
2日間にわたる大型イベントを企画
30~40代のファミリー層に特化も
「今年はファミリー層を大きなターゲットにしている。まずはゴールデンウィークで一つの山場を作りたい」
鎧さんによると、現在のサポーターの年齢層は50~60代がメイン。いわゆる“コア層”が中心となっている世代だ。
昨年は新規層開拓に向けて、10~20代の若者をターゲットに「パルセイロフェス」を開催。アーティストやパフォーマーを招へいして盛り上がりを見せたが、狙った客層にリーチし切れない側面もあったという。

それを踏まえて今年は、30~40代の家族層にもフォーカス。ゴールデンウイークでJリーグの大型招待企画も行われる中、「パルセイロファミリーパーク」と題して集客を図る。
しかも、2日間におよぶ大型イベントだ。
5月3日にはJ3リーグのトップチーム、翌4日にはWEリーグのレディースチームが、いずれも長野Uスタジアムで試合を行う。“日程の妙”が後押しとなり、同会場での連日開催となった。

両日ともに小学生以下は観戦無料で、4日は女性限定で先着200人を無料招待。昨年好評だったホッケーシャツの配布も計9,000枚を予定し、各日でデザインが異なる。ジュニアサイズも3日限定ではあるものの、1,000枚用意した。

消防車やパトカーなどの乗車体験ができる「はたらくくるま」、飛んだり跳ねたりして遊べる「ふわふわランド」など、子ども向けの人気コンテンツを集結。さらには親子で楽しめるワークショップなど、ファミリー層に特化したイベントを多彩に用意した。

昨年に続いて「小学生夢パスポート」も継続する。小学生以下の子どもは、トップチームのホーム自由席に全試合無料招待となる。
申し込みにはJリーグIDの取得が必要。これによって保護者宛にメールマガジンの配信が可能となり、家族連れの集客も見込める。「子どもたちが行くから親御さんも来る。そういう構造を作れれば」と鎧さんは目論む。
モデルケースとして広島を視察
「集客には魔法がない」と再確認
男女合同での試合イベントは、クラブとして初の試み。「ともにプロモーションを打っていくための第一歩になる」と鎧さんは話す。
レディースチームは2016年、当時の最上層である「なでしこリーグ1部」で、リーグ最多となる3,647人のホームゲーム観客動員数を記録。かつては国内屈指の人気を誇っていたが、昨年の平均は1,052人で、今年も2試合を残して978人となっている。

「最近はレディースチームにマンパワーを注げていない面もあった。ターゲットを絞って無料招待もしていたけれど、それでも伸び悩んだ。今回はイベントや来場者プレゼントを行う中で、どれくらい効果があるか」
モデルケースとして注目したのは、サンフレッチェ広島だ。
AC長野と同じく男女2チームを抱え、男子は国内最高峰のJ1で根強い人気を誇る。女子のサンフレッチェ広島レジーナ(S広島R)も3月8日のホームゲームで「1万人プロジェクト」を実施し、WEリーグ史上最多となる20,156人を集めた。
鎧さんは3月29日、S広島Rとのアウェイゲームを視察。昨年オープンしたばかりのエディオンピースウイング広島を見学し、1万人プロジェクトの舞台裏についても聞いた。

「何か特別なことはなくて、『集客には魔法がない』というのが結論だった。地域に足を運んでPRしたり、メディアに情報を送り込んだり…。自分たちにできることもたくさんもあるし、長野にもまだまだポテンシャルがあると感じた」
5月4日のホームゲーム当日は、選手が考案したコラボグルメやグッズも販売予定。これはS広島Rでも定番となっている。
AC長野でもトップチームの新体制発表会で、加入2年目のGK田尻健から「スタグル(スタジアムグルメ)で選手が企画したものを皆さんに食べてもらいたい」との声があった。
今後はレディースチームに限らず、トップチームでも選手考案の企画を形にしていく算段だ。
集客メーターで進捗を共有
ステークホルダーの力も借りて
集客目標は3日のトップチームが8,000人で、4日のレディースチームが3,000人。決してハードルの低い数字ではないが、選手とスタッフが手を取り合って力を注ぐ。
「正直、同じリーグの広島が1万人プロジェクトをやっている中で、3,000人というのは寂しさもある」
そう胸中を吐露したのは、レディースのチーム最古参・MF三谷沙也加。自身が加入した2018年の平均入場者数は2,350人で、3,000人を超える試合もあった。「観客数が一つの誇りだった」と当時を思い返す。

「今は1,000人を切る試合も多い中で、現実的に3,000人を目指すのは切り替えるチャンス。もう一回観客を増やしていくための目標でもあると思う。いろんな人に知ってもらいたいし、自分も頑張って集めたい」
スタッフも工夫を凝らしている。
今年はトップチームにおいて、ホームゲームごとにXで集客メーターを投稿。年間入場者数100,000人、平均入場者数5,000人という目標に対し、そのつどの進捗をビジュアルで可視化している。
現在の平均入場者数は3,728人だが、例年の傾向としても4月までは動員が伸びづらい。ゴールデンウイークや夏休み、そしてシーズン終盤にいかに数字を伸ばせるかが勝負となる。
「クラブに関わる皆さまに現状をお伝えしながら、協力してもらえる方を増やしていきたい。一人でも多くの人を誘ってスタジアムに来ていただけたら」
目標達成に向けて、ゴールデンウイークは最初の山場。トップチームとレディースチームが一体となり、長野をオレンジに染め上げる。
「パルセイロファミリーパーク」イベント詳細
https://parceiro.co.jp/info/detail/hHLRAS2ZCsapdyPiusPsbW9YRmVXRTA2eTJ0djE0NndaTnVTOGRLQUsyVXhONU9hd0RzY3Bnd0tOZTg
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