小澤修一社長に直撃② 「皆さんのお金、どう使っていますか?」

J3で3年目を迎え、残り3試合で5位。松本山雅FCは今季も苦闘が続いている。4月24日には小澤修一氏が代表取締役に就任。地域リーグ時代から在籍した元選手であり、コミュニケーションを大切にするタイプでもある。ではこの機会に、くすぶっているさまざまな声を拾い上げて率直にぶつけてはどうだろうか――。オブラートをはがして対峙した(リード文を2024年11月5日22:00訂正)。

取材・構成:大枝 令

・トップチームにどのくらい資本を投下していますか?

――2019年のピーク時を境に予算規模は徐々に縮小しており、今期もおそらく12〜13億円前後ではないかと推察します。フロントスタッフのアウェイ移動手段など、諸々の部分で削減しているのは知っていますが、実際の台所事情はどうなのでしょうか?

トップチームに関わる部分の比率を申し上げるとおおむね50%くらいで、その数字自体はおそらくリーグの中では平均値に近いのではないかと思います。

内訳としてはトップチームの選手・コーチングスタッフの人件費、あとはキャンプと遠征費。これらを全部合計すると50%ほどになります。

キャンプは1泊100万円ほど。場所にもよりますが、アウェイの試合に1回行くと概算で200〜300万円くらいが使われます。昨今はホテルが高騰している影響もあって、トップチームにはお金をかけないといけないけれど…という部分もあります。

そもそも正直に言うとJ3で、お金のかけ方はそんなに大きく差がありません。J1で30〜40億円の差があるというと戦力にも差はつくのですが、実際には少しの差で勝点に差が出る状況ではなくなってきてしまっています。

2023年のJ3で80%前後のクラブもありました。「それで結果を出すのであればそれでいい」という考え方も当然、成り立つとは思います。J3の中では大宮は別格としても、12〜13億円ぐらいの今治と山雅が少し抜けている状況だろうと思います。

サッカー界全体のレベルも上がってきていて、いい選手がどんどん出てきています。この状況をうまく活用してチーム編成するチームが増えていて、簡単に勝てるリーグではないと改めて感じています。うちはキャンプや遠征に費用を使う必要があるので、編成にかけられる費用に大きな差を生むのは難しいのが実情です。

――「サッカー以外の領域の力」を「サッカーの強さ」に転換する…という話がありました。具体的にはどのような作業になるのでしょうか?

フットボールの現場を強くしていく作業と、会社組織を大きく強くして関係人口を増やしていく作業はイコールだと考えています。

やっていることは全然違うかもしれませんが、結局サッカー以外の事業で得た資本をサッカーに投下するという話です。新しいビジネスを作って少しでも資本力を強くしていくことが、チームを強くするためには必要不可欠です。

それと同時に、今いただいているご支援を担保していくことも絶対に必要。今はオフィシャルスポンサーを訪問させていただいています。「応援してもらえていることが当たり前ではない」と感謝して伝えなければいけません。

あとはお金の使い方も、精査していかなければいけません。トップチーム周りも全部手を入れています。

属人化させすぎないため、数字は部長級までは全てオープンに。みんなで共有して、みんながチェックできる透明性を持たせて予実管理の精度を上げるよう取り組んでいます。

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・ストロングスタイルから変える必要性、ありました?

――フットボールの中身については下條佳明スポーツダイレクター(SD)に一任していることは前提として、大きな流れの部分を改めて整理させてください。Jリーグ参入以降の松本山雅のサッカーは、2012〜19年と20年〜現在と、大きく2つのタームに分かれていると思います。今季の結末はまだわかりませんが、20年以降は苦境が続いています。

どんなフットボールを目指したいかを逆算して霜田監督に来てもらいました。主体的に自分たちでボールをしっかり動かしていくサッカー。「リアクションではなくアクション」というサッカーを求めていきました。

その背景には昔からずっと大事にしてきた「球際」「勝利への執念」「規律」「ハードワーク」という要素があります。ただそれは現代サッカーにおいて、ベースとしてあるべきものに変わってきているという側面があります。

そこを極端に尖らせたトライをしたけれど、J1に定着できなかった2回のチャレンジがありました。そう捉えたときに、そこをベースに積み上げていく作業も絶対にしなければならないと思いました。

そのためには技術であったり、自分たちで主体的にボールを握ることであったり。そういったフットボールのテクニカルな部分からは逃げられないと思っています。

でもこれは一方で、結果でしか語れないこと。今のスタイルで結果を出していくことが求められているので、結果が得られなかったら批判されるのは当たり前です。

「昔の方が勝てたじゃないか」と言われたらそれまでですが、そこを超えるためのチャレンジをしています。時代が変化しているので、自分たちも変わっていかなければなりません。また、今のスタイルも変化していくでしょう。

個々を見ても、本当に見違えるように成長した選手が大勢います。だからこそ、結果で示したいと強く思っています。

――その言説は皆さんおっしゃられますし、2019年当時の決断については理解をしているつもりです。その一方で現在のJ1を見ますと、黒田剛監督のFC町田ゼルビアや長谷部茂利監督のアビスパ福岡など、大別すると「非保持型」で守備の遂行力を非常に徹底したチームが、J1で上位を争ったりルヴァンカップで優勝したりしています。「大都市圏」「資本力」という違いはあるかもしれませんが、「トレンド」という言葉だけを切り取るのであれば、むしろそうしたスタイルに戻すのもトレンドと言えるのではないでしょうか?

短期でというよりは、長期の結果で見てもらった方がいいかなと思っています。

僕がJリーグを見ていた当時、井原正巳さんが在籍していた時のマリノスは守備が堅くてカウンターのイメージが強かったように感じます。でも当時からマリノスにいた下條SDに聞くと、「自分たちは攻撃的にやりたい」とずっと言っていたということです。

つまり、外からの「見られ方」であったり、周りのフットボールの流れと自分たちが目指しているものであったり。さまざまな要素が交ざって「山雅のサッカーはこうだ」と見られると思います。

いずれにしても結局フットボールの部分は、結果を出すことでしか納得してもらう方法はありません。

サッカーなので、失点を減らして得点を増やすしか勝つ方法はなく、自分たちが主体的にボールを握ることで守備の時間を減らす。そちらの変化を求めたいと思っています。

今は下條SDを中心に取り組んでもらっているフットボールを、自分たちが同意・承認して進めている状況。もちろん達成度や進捗状況などによっては、変化を加える必要も考えています。

フットボールの構築の部分はしっかりお任せして、自分たちでフォローできるところはフォローする形で組織を作っていくのが自分たちの仕事だと思っています。


小澤修一社長に直撃① 「本当にJ2、目指していますか?」
https://shinshu-sports.jp/articles/7596

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