臥竜が迎えた雄飛のとき Vリーグ開幕は“食欲の秋”とともに

地道に力を蓄え続けた“臥竜”が、その真価を示そうとしている。Vリーグ男子東地区に参戦する長野ガロンズ。地元・須坂市にとことん密着した活動を続け、ファン層を少しずつ広げてきた。そうした取り組みが縁をつなげ、10月19日のリーグ開幕戦は「食とスポーツ」をテーマとした一大イベントに変貌。地域と「両想い」の関係を築き始めた、クラブの船出を展望する。

文:原田 寛子/編集:大枝 令

地道に育み続けた地域との絆
「食×スポーツ」のイベントに

「食欲の秋」と「スポーツの秋」を両取りする。

10月19日〜20日、須坂市民体育館。Vリーグ開幕戦の長野ガロンズ-北海道イエロースターズに合わせ、食とスポーツのイベント「SUZAKA SPORTS FESTA」が企画された。

ロティサリーチキンの「Kitchen Quruli」やクレープの「&chocolate」など、バリエーション豊かな飲食ブースが会場に並ぶ。須坂市内の洋菓子店をめぐるスタンプラリーも企画した。

隣接する須坂小グラウンドではスピードガンコンテストやサッカー体験などのスポーツ関連イベントのほか、ダンス発表や舞響太鼓の演奏なども。人口50,000人弱の須坂市において、秋の一大イベントとなりそうだ。

なぜ今回、食をフックとしたイベントを開幕戦にぶつけたのか。仕掛け人である須坂市の地域おこし協力隊・北直樹さんは話す。

「5月に開催した『ワイン&肉フェスin須坂』で、ガロンズの選手が『手伝いをしたい』と声を掛けてくれた。そのおかげもあってイベントは大成功だった」

「正直に言うとそれまではチームを詳しく知らなかった。市民に近い存在のプロチームが須坂にあるのに、まだ認知度が低いのはもったいない」

「地域を盛り上げたい気持ちは選手たちも自分も同じ。5月のイベントのお返しにガロンズの選手たちに何かしたい…と考えたのが最初のきっかけだった」

選手たちと交流を持ち、前向きで明るい姿勢に魅力を感じたという北さん。クラブが発するエネルギーは、地域を元気にするのではないか――と気付いた。因果をひも解けば、まずクラブが積極的に地域へ出向いたからこそ縁が生まれた。

それ以外にもガロンズは、バレーボールを題材にした人気アニメ「ハイキュー」の映画観賞会、須坂カッタカタ祭りなどに参加。「須坂を盛り上げたい」という思いは、北さんと共通している。

そして選手たちが頻繁に口にする言葉がある。

「いつも応援してくださる地域の皆さんに恩返しをしたい」

北さんも共鳴し、精力的にイベントを仕掛けた。

「ここから世界に羽ばたく選手が現れるかもしれない。ガロンズは大きな可能性を秘めているチームだし、そんな宝の認知度が低いなんてもったいない。とにかくまずは存在を知ってもらうこと」

「だからこそあえて、『ガロンズ色』を抑えた食とスポーツがメインのイベントを企画した。誰が来ても楽しめなければ意味がないと思った」

「そしてガロンズの開幕戦と合わせることで『地元にはこんな面白いチームがある』と知ってもらいたい。まずは気軽に足を運んでほしい」

今回のイベントは、北さんが掲げる「SUZAKA V.PARK PROJECT」の一環。Vはバレーボールであり勝利であり、扇状地である須坂の地形もイメージしているという。

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格上に挑み続けるVリーグ初年度
体系立った攻守一体のスタイルで

チームは挑戦者として新Vリーグに臨む。

ガロンズが所属する東地区8チームのうち、旧V3は5チーム。それ以外の3チームは格上に当たる旧V2の面々で、開幕戦で迎える北海道イエロースターズは昨シーズンのV2覇者でもある。

チームは「ガロンズシステム」と呼ぶ攻守一体型の手法を熟成しており、今季もその基本路線は踏襲。ブロックディフェンスからスタートしてディグの滞空時間を長くし、セッターの選択肢を増やして得点を狙う。

誰が出ても機能しやすい、継続性のあるシステム。今シーズンはそこに、あえて毛色の異なるエッセンスを加えた。その代表格が、旧V1ヴォレアス北海道を経て3シーズンぶりに復帰した酒井駿だ。

「組織としての完成度は高い。勝ちにこだわるのはもちろんだけれど、それ以上に自分たちのバレーを楽しんでほしい」と話す酒井。自身は強烈なキャプテンシーでチームを牽引する一方、若いチームの成長を促す役割も果たす。

新戦力は内定選手2人を含めて9人。総勢21人の陣容となっており、チーム内競争が活発化している。ほとんどの選手は仕事をしながら週6日の練習。ハードなメニューをこなしており、切磋琢磨しながら新リーグへ挑む。

副キャプテンの2人が話す。

「選手だけでなくコーチも新しく合流した。人が増えて多くの意見を聞くことができるのはプラスに働いていると思う」と小林雅治。高井大輝も「みんな試合に出たい気持ちは同じ。新しいユニフォームのように爪痕を残す戦いをしなければいけない」と力を込める。

作り上げるのは“ガロンズピザ”
粘り強い活動から実りの秋へ

「チャレンジという意味では最高の舞台。1本のプレーへの集中力と重みを普段の練習から持つことで、試合で点を取れるかが変わってくる。若い選手も多く加入して、今までとは違う攻撃が見せられる。臆せず戦ってほしい」

チーム設立時から指揮を執る篠崎寛監督は、新たなリーグへの船出に期待を込める。

ただ、開幕戦の相手・北海道YSは格上だ。池田颯太、伊藤樹、中野竜とVC長野トライデンツでプレーした面々だけでなく、旧V1チームに所属した選手たちも多数所属。このほか須坂市常盤中出身・リベロ前田幸久の凱旋試合でもある。

こうした難敵に立ち向かうシーズンを通して、個々の選手たちも成長曲線を描いていく。キャプテン酒井は言う。

「もちろん勝つために戦うけれど、シーズンを通して選手やチームの成長を見てもらえたらうれしい。選手にとっての成長はそれぞれ価値がある部分。『最初の試合と比べてどう変わったか』も見どころになると思う」

9月30日の新体制発表会見。
色彩豊かなガロンズを、齊藤優太はピザに例えた。

「土台だけではピザはただの生地だけ。『ガロンズシステム』という大きな生地の上に、魅力あふれる個々の選手のトッピングが乗っておいしいピザができあがる。そんなところを見てほしい」

コート外ではこうしたウィットやユーモアがありながら、試合になれば眼光鋭くチーム一丸で戦う。そのギャップも魅力なのだろう。

開幕戦。体育館の内では“ピザ作り”の第一歩が始まる。そして屋外では各種の地元グルメが多彩に。地道に種をまき続けてきたガロンズは、そろそろ「実りの秋」を迎えている。


クラブ公式サイト
https://garons.jp/
SUZAKA SPORTS FESTA 2024(須坂市サイト)
https://www.city.suzaka.nagano.jp/soshiki/1020/4/eventinfo/5858.html
SUZAKA SPORTS FESTA 2024(須坂市地域おこし協議会)
https://suzaka-kyougikai.com/7393/
Vリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/v_men/team/detail/474

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